セフジニル(商品名:セフゾン)は、第三世代セファロスポリン系抗生物質として分類される経口投与用の抗菌薬です。1991年に藤沢薬品工業(現・アステラス製薬)によって日本で承認・発売され、広範囲スペクトラムを有する半合成β-ラクタム系抗生物質として医療現場で重要な役割を担っています。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%83%95%E3%82%B8%E3%83%8B%E3%83%AB
セフジニルの特徴として以下の点が挙げられます。
この抗生物質は、グラム陽性菌およびグラム陰性菌に対して幅広い抗菌活性を示し、特に呼吸器感染症、皮膚感染症、泌尿器感染症の治療において第一選択薬として位置づけられています。
セフジニルの作用機序は、他のセファロスポリン系抗生物質と同様に、細菌の細胞壁合成阻害による殺菌作用です。具体的なメカニズムは以下の通りです:
参考)https://sokuyaku.jp/column/cefdinir-cefzon.html
ペニシリン結合タンパク質(PBP)への結合
セフジニルは細菌のペニシリン結合タンパク質に共有結合し、ペプチドグリカン合成の最終段階である架橋反応を阻害します。この結果、細菌の細胞壁構造が不完全となり、浸透圧によって細胞が破裂・死滅します。
β-ラクタマーゼに対する安定性
第三世代セフェム系の特徴として、多くのβ-ラクタマーゼに対して比較的安定性を示します。これにより、従来のペニシリン系やセファロスポリン系では効果が期待できない耐性菌に対しても抗菌活性を発揮します。
時間依存性の殺菌作用
セフジニルは時間依存性の殺菌作用を示すため、MIC(最小発育阻止濃度)以上の血中濃度を長時間維持することが治療効果の最大化に重要です。このため、1日3回の分割投与が基本となっています。
セフジニルは広範囲の細菌に対して抗菌活性を示します。主要な感受性菌種は以下の通りです:
グラム陽性菌
グラム陰性菌
適応症
注意すべき点として、大部分の第三世代セファロスポリンと同様に、セフジニルは緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)に対しては効果的ではありません。
標準的な用法用量
成人における標準的な投与量は、セフジニルとして1回100mg(力価)を1日3回経口投与です。年齢および症状の重篤度に応じて適宜増減が可能ですが、通常は以下の範囲で調整されます:
参考)https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00062390
薬物動態の特徴
セフジニルの薬物動態パラメータは以下の通りです:
パラメータ | 値 |
---|---|
最高血中濃度到達時間(Tmax) | 約3.3時間 ⏰ |
血中半減期(t1/2) | 約1.6時間 |
生物学的利用率 | 約25% |
タンパク結合率 | 約60% |
腎機能低下患者での注意点
セフジニルは主に腎臓から排泄されるため、腎機能低下患者では投与量の調整が必要です:
クレアチニンクリアランス | 推奨用量調整 |
---|---|
51-70 mL/min | 通常量の75% |
31-50 mL/min | 通常量の50% |
≤30 mL/min | 通常量の25%または投与間隔延長 ⚠️ |
透析患者では透析によってセフジニルの約61%が除去されるため、透析後の補充投与が推奨されます。
重要な薬物相互作用
セフジニルには以下の重要な相互作用があります:
鉄剤との相互作用 ⚠️
最も注意すべき相互作用は鉄剤との併用です。腸管内でセフジニルと鉄イオンが錯体を形成し、セフジニルの吸収が約10分の1まで低下します。併用を避けるか、やむを得ない場合はセフジニル投与後3時間以上の間隔をあけて鉄剤を投与する必要があります。
制酸剤との相互作用
アルミニウムまたはマグネシウム含有制酸剤により、セフジニルの吸収が低下する可能性があります。セフジニル投与後2時間以上間隔をあけて制酸剤を使用してください。
ワルファリンとの相互作用
腸内細菌によるビタミンK産生抑制により、ワルファリンの抗凝固作用が増強される可能性があります。
副作用プロファイル
セフジニルの副作用発現頻度は比較的低く、主な副作用は以下の通りです:
分類 | 頻度0.1〜5%未満 | 頻度0.1%未満 |
---|---|---|
消化器系 | 下痢(最頻) | 腹痛、嘔吐、悪心 💊 |
過敏症 | 発疹 | 蕁麻疹、紅斑 |
血液系 | 好酸球増多 | 顆粒球減少 |
腎臓 | BUN上昇 | - |
重篤な副作用
稀ながら以下の重篤な副作用の報告があります。
セフジニルを安全に使用するためには、これらの相互作用と副作用を十分理解し、適切な患者モニタリングを行うことが重要です。特に高齢者や腎機能低下患者では、より慎重な経過観察が必要となります。