オステオカルシンの効果と全身への影響

骨芽細胞が分泌するオステオカルシンは、骨形成マーカーとしての役割だけでなく、インスリン分泌促進、認知機能改善、筋力向上など多彩な全身作用を持つホルモンとして注目されています。このオステオカルシンの多面的な効果は、糖尿病や骨粗鬆症の治療戦略にどのような影響を与えるのでしょうか?

オステオカルシンの効果

オステオカルシンの主要な効果
🦴
骨形成マーカーとしての役割

骨芽細胞から分泌され、骨代謝回転の状態を反映する重要な指標として臨床活用されています

🩺
糖代謝改善作用

インスリン分泌促進と感受性向上により血糖値を低下させ、メタボリックシンドロームの予防に寄与します

🧠
全身の臓器への作用

脳、筋肉、精巣など多くの臓器に働きかけ、認知機能や筋力、生殖機能の向上に関与します

オステオカルシンと骨形成マーカーの関係

 

オステオカルシンは49個のアミノ酸から構成される分子量約5,500のカルシウム結合性タンパク質で、骨芽細胞によって合成されます。骨の非コラーゲン性タンパク質の約25%を占め、ビタミンK依存性に3つのグルタミン酸残基がγ-カルボキシル化されることから、Bone Gla Protein(BGP)とも呼ばれています。このカルボキシル化によってカルシウムに対する親和性が高まり、ヒドロキシアパタイトと強固に結合して骨基質を構成します。
参考)https://www.okayama-u.ac.jp/user/kensa/kensa/naibunpiO/oste.htm

血中オステオカルシン濃度は骨代謝回転、特に骨形成と密接な関係があり、骨粗鬆症のリスク評価や治療効果の判定において重要な骨形成マーカーとして利用されています。骨形成マーカーには他にも骨型アルカリフォスファターゼ(BAP)やI型プロコラーゲン-N-プロペプチド(P1NP)がありますが、オステオカルシンは骨芽細胞特異的に産生されるため、骨芽細胞の活動性を直接反映する指標となります。
参考)骨代謝マーカーについて - 亀田メディカルセンター|骨粗鬆症…

骨代謝マーカーの測定により、骨吸収と骨形成のバランスを評価し、骨粗鬆症の病態把握や薬物治療の効果判定を行うことができます。特に閉経後女性では、卵巣摘出後にオステオカルシンなどの骨形成マーカーが高値を持続する一方で、骨吸収マーカーは低下し、骨密度の変化とよく一致することが知られています。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika1913/82/12/82_12_1988/_pdf

オステオカルシンによるインスリン分泌促進効果

オステオカルシンは骨から血液中に放出され、膵臓のβ細胞に直接作用してインスリンの合成と分泌を促進します。遺伝的にオステオカルシンを産生できないマウスでは、内臓脂肪が増加し、血糖値が高くなることから、オステオカルシンが糖質および脂質代謝に重要な役割を果たすことが明らかになっています。
参考)最近注目されている「骨ホルモン」。若返りホルモンと呼ばれる「…

九州大学の研究では、オステオカルシンがGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)というインクレチンの分泌を促進し、それを介してインスリン分泌を増強する新しい経路が発見されました。GLP-1は食事の際に小腸から分泌され、食後の血糖上昇を抑える働きがあります。マウスにオステオカルシンを経口投与すると、空腹時血糖値が低下し、耐糖能が改善されるとともに、膵臓のランゲルハンス島β細胞が増殖してインスリン分泌量が増加することが確認されています。
参考)https://www.kyushu-u.ac.jp/f/1213/2013_02_21_3.pdf

特筆すべきは、オステオカルシンの経口投与でも効果が現れる点です。静脈内や腹腔内注射では過剰量になると効果が減じますが、経口投与では過剰量になりにくく、長期的な糖代謝改善が期待できます。高脂肪高ショ糖食で飼育したメタボリックシンドロームモデルマウスでも同様の糖代謝改善効果が認められており、肥満やメタボリックシンドロームの予防・治療の新しい戦略として研究が進められています。
参考)骨が作るタンパク質が血糖値を下げる オステオカルシンが代謝を…

オステオカルシンと認知機能・脳への作用

オステオカルシンは血液脳関門を通過して脳内に移行し、神経細胞に直接作用することが明らかになっています。オステオカルシンは受容体GPRC6AおよびGPR158を介して神経細胞の増殖と分化を促進し、酸化ストレス誘導性のアポトーシスを抑制する神経保護作用を持つことが確認されています。
参考)KAKEN href="https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K09510/" target="_blank">https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K09510/amp;mdash; 研究課題をさがす

マウスを用いた実験では、オステオカルシンが認知機能の維持、抗うつ作用を示し、胎児の脳の発達と学習・記憶能力を支持することが報告されています。さらに、脳内でセロトニンドパミンノルアドレナリンなどの神経伝達物質の産生を促進することから、うつ病などの精神疾患の治療における運動療法の効果の根拠として注目されています。
参考)運動によって骨から遊離するホルモン、オステオカルシンoste…

年齢とともに骨密度が低下すると、オステオカルシンの分泌量も減少し、これが加齢による記憶力の衰えの一因と考えられています。運動によって骨密度を維持することで、骨から分泌されるオステオカルシンを通じて加齢に伴う認知機能の低下を緩和できる可能性があります。このようにオステオカルシンは「若返りホルモン」として、脳機能の保護と向上に多面的な役割を果たしています。
参考)糖尿病と骨の健康 骨が分泌する「若返りホルモン」は運動で増や…

オステオカルシンと運動による筋肉増強効果

オステオカルシンは運動時に骨から血液中に分泌され、筋肉の質と機能を向上させる重要な役割を担っています。運動によって骨に力学的負荷がかかると、骨芽細胞が増加するだけでなく、通常より早いタイミングでオステオカルシンを分泌する骨芽細胞が出現することが明らかになっています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10795164/

オステオカルシンは筋肉のタンパク質合成を促進し、筋力を増強します。高齢マウスを用いた研究では、オステオカルシンが筋肉量を維持するために必要かつ十分であることが示されており、オステオカルシン欠損マウスでは加齢に伴う筋肉量の減少が顕著でした。一方、9ヶ月齢の野生型マウスに28日間オステオカルシンを投与すると、筋肉量と筋力が維持されることが確認されています。
参考)https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fendo.2023.1287972/pdf?isPublishedV2=False

運動トレーニングによるオステオカルシンとイリシン(筋肉から分泌されるマイオカイン)の分泌増加は、代謝と骨の健康を改善する重要なメカニズムです。特に高強度レジスタンストレーニングと持久力トレーニングの両方がオステオカルシンレベルを上昇させますが、高強度レジスタンストレーニングの方がわずかに優れている可能性が示唆されています。IL-6(インターロイキン-6)とオステオカルシンを介した筋骨連関が、運動による運動能力向上に重要であると考えられており、効果的な運動療法の開発につながることが期待されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11151138/

オステオカルシンとビタミンKおよび生活習慣病予防

オステオカルシンの生合成にはビタミンKが不可欠です。骨芽細胞内で合成されたオステオカルシンは、ビタミンK依存性のγ-カルボキシル化酵素によって3つのグルタミン酸残基がγ-カルボキシグルタミン酸(Gla)に変換されます。このカルボキシル化によってオステオカルシンはカルシウムイオンと結合する能力を獲得し、骨基質に取り込まれて骨石灰化に寄与します。
参考)ビタミンK

低カルボキシル化オステオカルシン(ucOC)は、カルボキシル化が不十分な形態で、血液中に放出されやすく内分泌活性型として機能します。ucOCは特にインスリン分泌促進やエネルギー代謝改善などのホルモン作用を発揮すると考えられています。ビタミンK摂取状況によってucOC/OC比が変動し、骨密度にも影響を及ぼすことから、ビタミンK栄養状態の評価にも利用されています。
参考)301 Moved Permanently

オステオカルシンによる糖代謝改善作用は、生活習慣病予防において重要な意義を持ちます。オステオカルシンは内臓脂肪の蓄積を抑制し、血糖値を低下させることで、糖尿病や肥満などのメタボリックシンドロームのリスクを軽減します。さらに、オステオカルシンは膵臓β細胞を増殖させてインスリン分泌能力を高めるため、長期的な糖代謝の改善が期待できます。
参考)https://www.kyushu-u.ac.jp/f/1073/2014_10_06.pdf

運動と適切なビタミンK摂取により骨密度を維持し、オステオカルシンの分泌を促進することが、骨粗鬆症だけでなく糖尿病や認知症などの生活習慣病予防にもつながる可能性があります。このようにオステオカルシンは、骨と全身の健康を結びつける重要なホルモンとして、包括的な健康維持戦略の中心的な役割を果たしています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6335246/

参考文献:
Intermittent injections of osteocalcin reverse autophagic dysfunction and endoplasmic reticulum stress resulting from diet-induced obesity in the vascular tissue via the NFκB-p65-dependent mechanism(オステオカルシンの肥満改善効果に関する論文)
骨が全身の代謝を改善 オステオカルシンによるインスリン分泌の新しい経路を発見(九州大学によるオステオカルシンとGLP-1の関係に関する研究報告)
骨基質タンパク質オステオカルシンによる脳機能保護作用の解明(オステオカルシンの神経保護作用に関する科研費研究課題)
Osteocalcin is necessary and sufficient to maintain muscle mass in older mice(高齢マウスにおけるオステオカルシンと筋肉量の関係を明らかにした論文)

 

 


NMN サプリメント 23400mg (1粒260mg) 日本製 高純度100% 90カプセル GMP認定工場 ザクロエキス 耐酸性 LaboTech-pH