セフォペラジン注射用の作用機序と適応症の効果・副作用

セフォペラジン注射用の基本的な作用メカニズムから、適応症、用法用量、副作用について詳しく解説。臨床で安全に使用するための知識を総合的にお伝えしませんか?

セフォペラジン注射用の基本知識

セフォペラジン注射用の特徴
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第3世代セファロスポリン

幅広い抗菌スペクトルと高いβ-ラクタマーゼ安定性を有する

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作用機序

細菌の細胞壁合成を阻害し殺菌的に作用する

胆汁中高濃度移行

胆道感染症治療に優れた効果を発揮する

セフォペラジン注射用の基本的作用機序と分類

セフォペラジン(一般名:セフォペラゾンナトリウム)は、第3世代セファロスポリン系抗生物質に分類される注射用抗菌薬です。1981年に日本で発売されて以来、多くの感染症治療に使用されてきました。
本剤の作用機序は、細菌の細胞壁ペプチドグリカンの生合成を阻害することにより、殺菌的に作用します。特にペニシリン結合蛋白3、1Bs、1A、2に高い親和性を示し、β-ラクタマーゼに対して高い安定性を持つことが特徴です。
参考)http://www.antibiotic-books.jp/drugs/30?s=3

 

セフォペラジンはureid型MTT基を有する構造的特徴により、グラム陽性菌・陰性菌から嫌気性菌まで広い抗菌スペクトルを有しています。また、β-ラクタマーゼに高い安定性を示し、耐性誘導を起こしにくい性質があります。
セフォペラジン注射用は、その優れた体内動態により、特に胆汁中移行をはじめとする良好な組織移行性を有し、胆道感染症をはじめとする各種感染症に優れた臨床成績を示すことが報告されています。

セフォペラジン注射用の適応菌種と適応症

セフォペラジンの適応菌種は以下の通りです。

  • セフォペラゾンに感性のレンサ球菌属
  • 肺炎球菌
  • 大腸菌
  • シトロバクター属
  • クレブシエラ属
  • エンテロバクター属
  • セラチア属
  • プロテウス属
  • モルガネラ・モルガニー
  • プロビデンシア・レットゲリ
  • インフルエンザ菌
  • 緑膿菌
  • バクテロイデス属
  • プレボテラ属

    参考)https://di.m3.com/medicines/9978

     

適応症については、幅広い感染症に使用されています。
重篤な全身感染症

皮膚・軟部組織感染症

  • 深在性皮膚感染症
  • リンパ管・リンパ節炎
  • 外傷・熱傷及び手術創等の二次感染
  • 乳腺炎

呼吸器感染症

  • 急性気管支炎
  • 肺炎
  • 肺膿瘍
  • 膿胸
  • 慢性呼吸器病変の二次感染

泌尿器感染症

腹部感染症

  • 腹膜炎
  • 胆嚢炎
  • 胆管炎
  • 肝膿瘍

婦人科感染症

  • バルトリン腺炎
  • 子宮内感染
  • 子宮付属器炎
  • 子宮旁結合織炎

セフォペラジン注射用の薬物動態と排泄経路

セフォペラジンの薬物動態について詳細に解説します。血中半減期は比較的長く、投与方法によって以下のような違いがあります。

  • 1時間点滴:β1/2 = 2.67時間
  • 静注:β1/2 = 1.97時間
  • 筋注:β1/2 = 2.20時間(tmax:投与後1時間)

排泄経路は二重性を示し、腎排泄と胆汁排泄の両方を経由します。

  • 腎排泄:約27~40%
  • 肝臓・胆汁排泄:約35~60%

生体内ではほとんど代謝されず、尿中及び胆汁中に未変化体として排泄されるため、肝機能障害患者でも比較的安全に使用できる特徴があります。
組織移行性については、以下のような優れた移行性を示します。

  • 優秀な移行(≧25μg/ml):腎・尿路、肝・胆汁、喀痰・気管支分泌液、骨髄、骨盤腔、腹腔、副鼻腔、歯槽、胸腔
  • 良好な移行(25>~≧6μg/ml):臍帯血、骨、扁桃腺、羊水、髄液、筋・皮下組織
  • 限定的移行(6>~≧1μg/ml):母乳

特に胆汁中移行が良好で、胆道感染症の治療において高い有効性を発揮することが知られています。

 

透析患者への投与については、減量の必要がないとされていますが、Ccr<10mL/minでは半減期が腎機能正常者の1.59時間に対し2.15時間に延長することが報告されています。

セフォペラジン注射用の用法用量と投与方法

セフォペラジンの標準的な用法用量は以下の通りです。
成人の標準用量

  • 通常成人:1日1~2g(力価)を2回に分けて静脈内注射又は筋肉内注射
  • 難治性又は重症感染症:1日量6g(力価)まで増量し、2~4回に分割投与

小児の用量

  • 通常小児:1日25~100mg(力価)/kgを2~4回に分けて静脈内注射
  • 重症感染症:1日量150mg(力価)/kgまで増量し、2~4回に分割投与

静脈内注射の方法
静脈内注射に際しては、日局注射用水、日局生理食塩液又は日局ブドウ糖注射液に溶解し、緩徐に投与します。点滴による静脈内注射では補液に溶解して使用します。
⚠️ 重要な注意点
点滴静注にあたっては、注射用水を使用してはいけません。溶液が等張にならないためです。
筋肉内注射の方法
筋肉内注射に際しては、本剤0.5~1g(力価)を日局リドカイン注射液(0.5w/v%)3mLに溶解して使用します。
投与間隔については、1日2回投与が基本ですが、重症例では症状に応じて3~4回に分割投与することも可能です。半減期が比較的長いため、通常の感染症では1日2回投与で十分な効果が期待できます。

 

セフォペラジン注射用の副作用と安全性情報

セフォペラゾンの副作用について、臨床試験での詳細なデータが報告されています。検討症例19,996例中、副作用及び臨床検査値の変動は826例(4.13%)に認められました。
主な副作用・毒性

  • ショック・アナフィラキシー
  • 急性腎不全
  • Stevens-Johnson症候群(SJS)
  • 中毒性表皮壊死症(TEN)
  • 肝障害
  • 偽膜性大腸炎
  • 間質性肺炎
  • 溶血性貧血
  • 血球減少
  • 肝機能障害
  • 消化器症状
  • ビタミンK・B群欠乏症状
  • 頭痛
  • 浮腫

特に注意すべき副作用
🔴 出血性合併症
セフォペラジンは N-methylthiotetrazole 側鎖を有するため、出血性合併症に特に注意が必要です。この側鎖により、ビタミンK様作用が阻害され、凝固能異常を起こす可能性があります。
🔴 神経系副作用
脳脊髄液中薬物濃度が高くなると、痙攣等を含む神経系の副作用が起こる可能性があります。髄膜炎治療時などでは特に注意深い観察が必要です。
禁忌事項

  • 本剤の成分によるショックの既往歴のある患者
  • リドカイン又はアニリド系局所麻酔剤に対し過敏症の既往歴のある患者(筋肉内注射の場合)

相互作用
セフォペラゾンは主として肝胆道系から排泄されるため、腎機能に依存する薬剤との相互作用は比較的少ないとされています。しかし、抗凝固薬との併用時には出血傾向に注意が必要です。

 

副作用の大部分は発熱、発疹、下痢、AST(GOT)・ALT(GPT)の上昇等の軽微なものでしたが、重篤な副作用の可能性もあるため、投与中は患者の状態を注意深く観察することが重要です。