胆管詰まる原因と診断法

胆管が詰まる原因として胆石や悪性腫瘍が挙げられ、血液検査や画像診断により確実な診断が可能です。早期発見と適切な治療により予後は改善されますが、なぜ胆管詰まりが起こるのでしょうか?

胆管詰まる原因

胆管詰まりの主要原因
胆石による閉塞

総胆管結石が胆管内に詰まることで胆汁の流れが妨げられる

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悪性腫瘍による狭窄

胆管がんや膵がんなどが胆管を圧迫・狭窄させる

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医療器具による影響

ステント閉塞や手術後の合併症により胆管が詰まる

胆管詰まり最多の原因は胆石

胆管が詰まる原因として最も頻度が高いのは総胆管結石による閉塞です 。日本と台湾で実施された大規模な共同研究では、急性胆管炎の原因の約60%が胆石であることが明らかになっています 。胆嚢内で形成された胆石が胆嚢から流出し、胆嚢管を通って総胆管内に移動した際に胆管内に引っかかることで閉塞が生じます 。
参考)急性胆管炎の原因は何がありますか?

 

胆石による胆管閉塞は、胆嚢収縮と胆汁流動に伴い発生するため、特に食事摂取後に症状が出現しやすい特徴があります。胆石の成分によってはX線検査で確認が困難な場合もあり、超音波検査やMRI検査による詳細な評価が必要となります 。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/tando/33/1/33_60/_pdf/-char/ja

 

胆管詰まりを引き起こす悪性腫瘍の種類

悪性腫瘍による胆管閉塞は胆石に次いで多く、全体の10~30%程度を占めます 。原発性の胆管がんだけでなく、胆管周囲に位置する臓器のがんも胆管詰まりの原因となります 。
参考)急性胆管炎(たんかんえん)

 

具体的には胆嚢がん、膵がん、十二指腸がんなどが挙げられ、これらの腫瘍が胆管を外部から圧迫することで物理的な閉塞を引き起こします。また、十二指腸乳頭部においては良性腫瘍でも胆管出口の狭窄を生じる可能性があります 。悪性腫瘍による胆管閉塞は進行性であり、診断時にはしばしば進行した病期にあることが多く、予後に大きく影響する要因となります。

胆管詰まりの医原性要因とステント関連合併症

医療処置に関連した胆管詰まりも重要な原因の一つです。胆管ステント留置後の閉塞が第3位の原因となっており、約11%を占めています 。胆管ステントは狭くなった胆管に挿入される医療器具で、プラスチック製ステントと金属製ステントがありますが、金属製の方が閉塞しにくいものの、多くは数か月で閉塞してしまいます 。
ステント閉塞の原因として、腫瘍の増殖(tumor ingrowth/overgrowth)、胆泥や結石の形成、ステントの変形などが挙げられます 。特にrapid obstructionと呼ばれる留置後1~2週間での早期再閉塞が問題となることがあり、再留置や外瘻術による対処が必要となります 。
参考)https://www.jsir.or.jp/docs/member/hinto/23_1/23_1_91_105.pdf

 

胆管詰まりを起こす炎症性疾患の特徴

良性の炎症性疾患も胆管詰まりの重要な原因となります。原発性硬化性胆管炎(PSC)は胆管の慢性炎症により胆管壁が肥厚・線維化し、徐々に胆管腔が狭窄する疾患です 。症状は潜行性に進行し、初期には疲労感やかゆみから始まり、進行とともに黄疸や腹痛が出現します 。
参考)原発性硬化性胆管炎 - 04. 肝臓と胆嚢の病気 - MSD…

 

IgG4関連硬化性胆管炎も胆管狭窄を引き起こす炎症性疾患の一つで、自己免疫機序により胆管壁の炎症と線維化が生じます 。これらの炎症性疾患は画像診断により胆管の不規則な狭窄パターンが確認され、血液検査では胆道系酵素の上昇が認められます 。適切な免疫抑制療法により症状の改善が期待できる場合もあります。
参考)胆道がん(胆管がん・胆のうがん)の検査

 

胆管詰まりの診断に必要な血液検査項目

胆管詰まりの診断において血液検査は基本的かつ重要な検査手段です。胆汁の流れが障害されると、血液中の直接ビリルビンが増加し、黄疸を呈します 。胆道系酵素であるALP(アルカリフォスファターゼ)、γ-GTP(ガンマ-グルタミルトランスペプチダーゼ)、LAP(ロイシンアミノペプチダーゼ)の著明な上昇が特徴的です 。
炎症を伴う場合には白血球数やCRP(C反応性蛋白)の上昇が見られ、胆管炎の程度を評価する指標となります 。肝細胞への影響が及んだ場合にはAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)やALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)も上昇します 。腫瘍マーカーとしてCA19-9やCEAの測定も行われ、悪性腫瘍の鑑別診断に有用です 。
参考)胆道がん(胆管がん[肝内胆管がんを含む]・胆のうがん・十二指…

 

胆管詰まりの画像診断法の選択基準

胆管詰まりの診断における画像検査では、各検査法の特徴を理解した適切な選択が重要です。腹部超音波検査は最も簡便で非侵襲的な検査法であり、拡張した胆管や胆石の検出が可能です 。ただし、肥満や腸管ガスの影響により描出困難な場合があります。
CT検査は胆管拡張の評価と閉塞原因の特定に優れており、周囲臓器の評価も同時に行えます 。MRI検査、特にMRCP(磁気共鳴胆管膵管造影)は胆道系全体の立体的な描出が可能で、胆石の検出能力も高く、放射線被曝がない利点があります 。超音波内視鏡検査は腹部超音波の限界を克服し、微細な病変の検出に有効ですが、侵襲的な検査となります 。
参考)腹部のファーストチョイス

 

胆管詰まりの合併症と緊急性の判断

胆管詰まりが引き起こす合併症の中で最も重篤なのは急性胆管炎です。胆管内圧の上昇により細菌や毒素が血管内に逆流し、敗血症や多臓器不全に進行する可能性があります 。典型的な症状として発熱、腹痛、黄疸(Charcot三徴)が知られており、重症例では血圧低下や意識障害を呈します。
死亡率は約3~10%とされていますが、1980年以前は50%以上の高い死亡率を示していました 。早期診断と適切な治療により予後は大幅に改善されており、抗菌薬投与と内視鏡的胆管ドレナージによる迅速な減圧が治療の基本となります 。胆管の解剖学的特性として内径が約5mm程度と細く、閉塞時の内圧上昇が急激に生じやすいため、緊急対応が必要な病態として認識する必要があります。

胆管詰まりの予防戦略と生活習慣改善

胆管詰まりの予防には、主要原因である胆石症の予防が重要です。食生活の改善として、脂肪分の過剰摂取を避け、食物繊維を多く含む食品を積極的に摂取することが推奨されます 。規則正しい食事リズムを維持し、一度に大量の食事を摂取する暴飲暴食を避けることも重要です 。
参考)胆石症・胆のう炎

 

適正体重の維持は脂質異常症生活習慣病の予防につながり、結果的に胆石形成のリスクを低減します 。適度な運動は胆汁の流れを改善し、胆石形成を予防する効果があります 。水分摂取量の増加も胆汁を希釈し、結石形成を抑制する効果があるため、1日2リットル程度の水分摂取が推奨されます 。過度なダイエットは逆に胆石形成のリスクを高めるため、栄養バランスを考慮した緩やかな減量が望ましいとされています 。
参考)胆石症