リスペリドンは第二世代抗精神病薬(非定型抗精神病薬)に分類され、ドパミンD2受容体及びセロトニン5-HT2A受容体に対する強力な親和性を持つセロトニン・ドパミンアンタゴニスト(SDA)です。薬理学的には、セロトニン5-HT2A受容体への親和性がドパミンD2受容体への親和性を有意に上回る特徴を有しています。このユニークな受容体結合バランスにより、統合失調症の治療において従来の定型抗精神病薬とは異なる効果プロファイルを示します。
参考)https://ejmanager.com/mnstemps/10/10-1324568994.pdf
ドパミンD2受容体の適度な遮断により、統合失調症の陽性症状である幻覚や妄想、思考の混乱などを強力に抑制する効果が得られます。中脳辺縁系におけるドパミン活動の過剰を是正することで、これらの精神病症状の軽減が実現されます。臨床試験では、リスペリドンが陽性症状に対して非常に良好な有効性を示すことが確認されています。
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セロトニン5-HT2A受容体拮抗作用は、統合失調症の陰性症状改善に寄与すると考えられており、これは従来のフェノチアジン系やブチロフェノン系薬剤には見られなかった効果として開発段階で期待されていました。陰性症状とは、感情の平板化(喜怒哀楽が乏しくなる)、意欲の低下、引きこもり、社会性の減退などを指します。リスペリドンはこれらの症状に対してもある程度の改善効果が期待できる点が特徴です。
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セロトニン受容体への作用は、副作用プロファイルの改善にも貢献します。特に、ドパミンD2受容体のみを遮断する第一世代抗精神病薬で頻発する錐体外路症状(パーキンソン症候群、アカシジア、ジストニーなど)や高プロラクチン血症といった副作用を軽減する効果が期待されています。ただし実際には、リスペリドンは非定型抗精神病薬の中では比較的錐体外路症状が出やすい傾向があり、高プロラクチン血症のリスクも高い点に注意が必要です。
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分子レベルの研究では、リスペリドンの投与により末梢血単核細胞におけるセロトニン5-HT2A受容体とセロトニントランスポーター(SERT)の発現が減少することが示されていますが、ドパミン受容体やドパミントランスポーター(DAT)の発現には影響を与えないことが報告されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10892557/
リスペリドンは統合失調症の治療において、陽性症状と陰性症状の両方に効果を発揮します。通常、成人に対してはリスペリドンとして1回1mg、1日2回より開始し、徐々に増量します。維持量は通常1日2~6mgを原則として1日2回に分けて経口投与します。
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海外の臨床試験では、リスペリドンの投与量が増加するにつれて錐体外路症状のスコアは上昇しますが、第一世代抗精神病薬のハロペリドールと比較するとスコアは低いことが示されています。また、遅発性ジスキネジアの発現率についても、リスペリドン0.6%に対してハロペリドール2.7%と、リスペリドンの方が少ないというデータが存在します。
参考)リスペリドン
複数の研究において、リスペリドンは統合失調症患者の精神機能改善と症状の安定化に有効であることが確認されています。ただし、リスペリドンと他の非定型抗精神病薬との比較研究では、多くの研究が高い脱落率と短期間のフォローアップという問題を抱えており、効果の優劣を明確に判断することは困難な状況です。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7032680/
リスペリドンは統合失調症だけでなく、双極性障害(躁うつ病)の躁状態に対する改善効果(抗躁作用)も有しています。双極性障害の躁状態では、激しい気分の高ぶりや興奮、衝動性、睡眠欲求の減少、誇大妄想などの症状が出現します。リスペリドンはこれらの症状を鎮め、気分を安定させる効果があります。
参考)リスペリドン(リスパダール®)について
双極性障害の治療においては、気分安定薬(リチウム、バルプロ酸など)が第一選択薬となることが多いですが、リスペリドンなどの抗精神病薬は急性躁病エピソードの管理や気分安定薬の補助療法として用いられます。特に精神病症状を伴う躁状態や、激しい興奮・攻撃性がある場合には、リスペリドンの使用が有効とされています。
他の非定型抗精神病薬と比較すると、リスペリドンは躁症状に対して中程度の効果を示し、オランザピンやエビリファイと同等の効果があるとされています。ただし、薬剤選択においては、患者の症状、副作用プロファイル、併存疾患などを総合的に考慮する必要があります。
リスペリドンは小児期の自閉スペクトラム症(ASD)に伴う易刺激性の治療にも適応を持ちます。易刺激性とは、かんしゃく、攻撃性、自傷行為などの行動上の問題を指します。これらの症状は患者本人や周囲の人々にとって大きな負担となるため、薬物療法によるコントロールが重要です。
参考)https://medical.nihon-generic.co.jp/uploadfiles/medicine/RISPE00_GUIDE.pdf
複数の臨床試験において、リスペリドンが自閉スペクトラム症の子どもや青年における易刺激性を有意に改善することが示されています。Research Units on Pediatric Psychopharmacology(RUPP)によるオートizムネットワークの研究では、リスペリドン単独療法よりも、リスペリドンと保護者への行動療法トレーニングを組み合わせた治療法の方が、易刺激性の減少とコンプライアンスの向上において優位性を示しました。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4117342/
長期的な効果と安全性については、6ヶ月間のオープンラベル延長試験や21ヶ月間のフォローアップ研究が実施されています。これらの研究では、リスペリドンの長期使用により行動面と社会面での持続的な改善が認められましたが、食欲増加、体重増加、夜尿症などの副作用リスクも報告されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3870601/
自閉スペクトラム症の治療においては、用量を体重に基づいて調整することが推奨されており、体重20~45kg未満では最大1.25mg/日、45kg以上では最大1.75mg/日が上限とされています。
統合失調症患者では認知機能障害が高頻度に認められますが、リスペリドンが認知機能に与える影響については研究が進められています。自閉症と易刺激性を持つ子どもを対象とした二重盲検プラセボ対照試験では、リスペリドンが認知プロセスに及ぼす影響が検討されました。この研究では、持続的注意、言語学習、手と目の協調、空間記憶などの認知課題が評価されましたが、101名の被験者のうち63名が認知課題を実施できなかったという制限がありました。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2935828/
ハンチントン病患者を対象とした後ろ向き研究では、リスペリドンを服用していた患者群が、精神機能の有意な改善と運動機能の安定化を示したことが報告されています。これは、リスペリドンが精神症状だけでなく、運動機能や認知機能にも影響を及ぼす可能性を示唆しています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3806309/
ただし、認知機能への効果は症状の種類、重症度、患者の年齢、用量などによって異なる可能性があり、個別の評価が必要です。また、鎮静作用や錐体外路症状などの副作用が認知機能に悪影響を及ぼす可能性もあるため、慎重なモニタリングが求められます。
リスペリドンの主な副作用として、高プロラクチン血症、錐体外路症状、体重増加、代謝系の異常などが知られています。添付文書によると、5%以上で認められる副作用には、食欲不振、不眠症、不安、アカシジア、振戦、構音障害、傾眠、めまい・ふらつき、流涎過多、便秘、悪心、嘔吐、筋固縮、月経障害、易刺激性、倦怠感、口渇が挙げられます。
高プロラクチン血症はリスペリドン使用時に特に注意すべき副作用であり、非定型抗精神病薬の中でも発現頻度が高いとされています。リスペリドンの用量が増えるとプロラクチン濃度も上昇し、ハロペリドールと比較してもむしろ高かったとする報告があります。高プロラクチン血症により、月経異常、乳汁分泌、性機能異常(射精障害など)が生じる可能性があります。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9121093/
錐体外路症状については、リスペリドンは非定型抗精神病薬の中では比較的出やすい傾向がありますが、第一世代抗精神病薬と比較すると発現頻度は低いとされています。代表的な錐体外路症状には、アカシジア(静座不能)、パーキンソニズム、ジストニー、遅発性ジスキネジアなどがあり、用量依存的に増加する傾向があります。
参考)医療用医薬品 : リスペリドン (リスペリドン錠0.5mg「…
体重増加と代謝系の副作用も重要な懸念事項です。リスペリドンは体重増加を引き起こしやすい傾向があり、長期使用においては特に注意が必要です。また、糖尿病、脂質異常症などの代謝系副作用のリスクもあるため、定期的な血液検査によるモニタリングが推奨されます。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4545698/
リスペリドンは複数の薬剤との相互作用を持つため、併用時には注意が必要です。特に重要な相互作用として、アドレナリン(ボスミン)との併用禁忌があります。リスペリドンのα受容体遮断作用により、アドレナリンのβ受容体刺激作用が優位となり、血圧降下を起こす可能性があるためです。ただし、アナフィラキシーの救急治療や歯科領域における浸潤麻酔・伝達麻酔に使用する場合は除外されます。
中枢神経抑制剤(バルビツール酸誘導体など)やアルコールとの併用では、相互に作用を増強する可能性があるため、減量するなど慎重な投与が求められます。降圧薬との併用では降圧作用が増強される可能性があり、ドパミン作動薬との併用では相互に作用を減弱する可能性があります。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00055137.pdf
薬物代謝酵素に関連する相互作用も重要です。CYP2D6を阻害する薬剤(パロキセチンなど)との併用により、リスペリドン及び活性代謝物の血中濃度が上昇する可能性があります。逆に、CYP3A4を誘導する薬剤(カルバマゼピン、フェニトイン、リファンピシン、フェノバルビタール)との併用では血中濃度が低下し、CYP3A4を阻害する薬剤(イトラコナゾールなど)との併用では血中濃度が上昇する可能性があります。
QT延長を起こすことが知られている薬剤との併用にも注意が必要であり、QT延長作用が増強するおそれがあります。また、歯科麻酔剤(リドカイン・アドレナリン配合剤)との併用でも血圧降下を起こす可能性があります。
非定型抗精神病薬には複数の選択肢があり、それぞれ異なる特性を持ちます。リスペリドンをエビリファイ(アリピプラゾール)と比較すると、エビリファイはドパミンD2受容体部分作動薬として働くため、アカシジアが出やすい一方で、体重増加、高プロラクチン血症、眠気などの副作用は比較的少ないとされています。リスペリドンは陽性症状への効果がより速やかに現れる場合や、鎮静作用が必要な場合に選択されることがあります。
クエチアピン(セロクエル)との比較では、クエチアピンは強い鎮静作用と眠気を引き起こしやすく、体重増加や代謝系副作用にも注意が必要ですが、錐体外路症状や高プロラクチン血症はリスペリドンより少ない傾向があります。不眠や強い不安・焦燥感を伴うケースで鎮静効果を期待して選択されることがあります。
オランザピン(ジプレキサ)は陽性症状や躁症状に対する効果が特に強いとされていますが、体重増加や代謝系副作用(糖尿病、脂質異常症)のリスクが比較的高い薬剤です。リスペリドンはオランザピンに比べて代謝系副作用のリスクがやや低いとされ、この点が薬剤選択の分かれ目となることがあります。
リスペリドンと他の非定型抗精神病薬との比較研究
クロザピンやオランザピンとの比較試験データが掲載されており、薬剤選択の参考情報として有用です。
リスペリドン(リスパダール)の効果と副作用の詳細解説
医療従事者向けに作用機序、適応症、副作用プロファイルが詳しく解説されています。
医療用医薬品リスペリドンの添付文書情報
用法用量、禁忌、相互作用、副作用など、公式の薬剤情報が参照できます。

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