プロラクチノーマは下垂体のプロラクチン産生細胞(ラクトトロフ)から発生する良性腫瘍で、高プロラクチン血症の最も重要な病的原因です 。この腫瘍は脳の下垂体にできることで、プロラクチンが過剰に産生され、血中濃度が著しく上昇します 。
参考)月経が止まった・母乳が出る?高プロラクチン血症の原因・検査・…
プロラクチノーマは腫瘍の大きさによって症状が異なり、特に大きな腫瘍(マクロアデノーマ)では周囲の視神経を圧迫して視野障害(特に両耳側が見えにくい)や頭痛を引き起こすこともあります 。腫瘍が視交叉を圧迫すると、典型的な両耳側半盲という視野欠損が生じる場合があります 。
参考)高プロラクチン血症(Hyperprolactinemia) …
診断にはプロラクチンの測定および画像検査が必要で、血中プロラクチン値が100ng/mL以上の高値を示すことが多く、MRI検査で下垂体腫瘍の存在と大きさを確認します 。治療の第一選択はドパミン作動薬による薬物療法で、カベルゴリンやブロモクリプチンが使用されます 。
参考)下垂体性PRL分泌亢進症(指定難病74) href="https://www.nanbyou.or.jp/entry/4045" target="_blank">https://www.nanbyou.or.jp/entry/4045amp;#8211; 難…
薬剤性高プロラクチン血症は、抗ドパミン作用を有する薬剤によってプロラクチン分泌が促進される状態です 。最も頻度が高い原因として、抗精神病薬、抗うつ薬、降圧薬、胃腸薬、制吐薬などが挙げられます 。
参考)https://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/118.html
特に高リスクとされる薬剤には、リスペリドン(リスパダール)、パリペリドン(インヴェガ)、ハロペリドール(セレネース)などの抗精神病薬があります 。これらの薬剤は視床下部でドパミンの作用を阻害することで、プロラクチン分泌抑制因子(PIF)の働きを妨げ、プロラクチンの過剰分泌を引き起こします 。
参考)https://www.fpa.or.jp/library/kusuriQA/26.pdf
また、消化器系薬剤として広く使用されているスルピリド(ドグマチール)も比較的高プロラクチン血症をきたしやすい薬剤として知られています 。薬剤性の場合、原因薬剤の中止や変更により症状の改善が期待できますが、医師との十分な相談が必要です 。
参考)薬剤性高プロラクチン血症について
甲状腺機能低下症も高プロラクチン血症の重要な原因の一つです 。甲状腺ホルモンの分泌が不足すると、脳の下垂体はこれを補うために甲状腺刺激ホルモン(TSH)を多く分泌しますが、このとき甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)がプロラクチンの分泌も同時に促進するため、血中のプロラクチン濃度が上昇します 。
参考)高プロラクチン血症とは?原因や症状、治療方法まで解説
甲状腺機能が低下していると、月経不順や排卵障害が起こりやすくなり、不妊につながることがありますが、その背景に高プロラクチン血症が潜んでいるケースがあります 。この場合、甲状腺ホルモンの補充治療により、プロラクチン値も正常化することが期待できます 。
血液検査によって甲状腺ホルモン(FT4、TSH)とプロラクチンの値を同時に調べることで、両者の関係を明確にすることが可能です 。甲状腺機能低下症に伴う高プロラクチン血症の場合、基礎疾患の治療が最も重要な治療方針となります 。
参考)高プロラクチン血症の治療や予防方法には何がありますか?
強い精神的・身体的ストレスも一時的にプロラクチン値を上昇させる原因となります 。ストレスはプロラクチン分泌を刺激し、コルチゾールなどのストレスホルモンの分泌に伴ってプロラクチン値が一時的に上昇することが知られています 。
参考)高プロラクチン血症にストレスは関係しますか?
睡眠不足、激しい運動、胸部の手術や帯状疱疹などの物理的刺激も、神経反射を通じてプロラクチンの分泌を促進する場合があります 。特に胸壁疾患では、肋骨の骨折や帯状疱疹後の神経障害など、胸の周囲に強い刺激が加わると、反射的にプロラクチン分泌が増加することがあります 。
ただし、通常の範囲を超えてプロラクチンが持続的に高い状態が続く場合には、下垂体腺腫や他の病的原因が関与している可能性があるため、ストレスだけが原因とは限りません 。長期的な身体的ストレスで慢性的な高プロラクチン血症が起こったという報告は限られており、持続的な高値には他の要因の検討が必要です 。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/103/4/103_841/_pdf
慢性腎不全は高プロラクチン血症の特殊な原因として重要です 。腎機能が低下すると、プロラクチンの代謝と排泄が障害され、血中に蓄積されやすくなるため、透析を受けている患者さんを中心に高プロラクチン血症の発症頻度が高いとされています 。
参考)高プロラクチン血症の原因や考えられる病気には何がありますか?…
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)も高プロラクチン血症と密接な関係があります 。PCOSの約10~30%が高プロラクチン血症を併発する傾向にあり、プロラクチンの分泌亢進により排卵障害が悪化し、黄体機能不全や排卵誘発剤の効果減弱などの問題が生じます 。
参考)多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
肝硬変などの慢性肝疾患も影響する場合があり、肝臓でのホルモン代謝機能の低下により、プロラクチンの血中濃度が上昇することがあります 。これらの慢性疾患では、基礎疾患の管理と並行してプロラクチン値の監視が重要となります 。
参考)https://square.umin.ac.jp/kasuitai/doctor/guidance/prolactin_surplus.pdf