コンプライアンス(compliance)とは、企業や個人が法令や社会規範、企業倫理を遵守することを意味します。日本語では「法令遵守」と訳されることが一般的ですが、現在では単なる法律の遵守にとどまらず、社会通念上のルールやマナーを含む広範な概念として理解されています 。
参考)コンプライアンスとは? 意味や定義などを簡単に分かりやすく紹…
企業コンプライアンスには、商法、民法、独占禁止法、金融商品取引法、個人情報保護法、労働法など多数の法律や規則が関わります。さらに監督官庁の「命令」や「指導」も加わり、政治家や公務員との関わり方、証券取引、従業員の職務環境などでは高い倫理感も求められています 。
参考)https://www.hrpro.co.jp/glossary_detail.php?id=28
近年のコンプライアンスの定義は、「法律を守るだけでなく、企業倫理や社会規範、社会道徳、就業規則などの規則・ルールを守り、公正・公平に業務を行う」ことも含まれるようになりました 。これは単に法の隙間を突く行為や倫理的でない対応が、法に触れなくともコンプライアンス違反として社会から非難されるためです 。
参考)コンプライアンスとは?意味や違反事例を簡単にわかりやすく解説…
2024年6月には、ホンダが過去に生産していた4輪車の認証試験において不正を行っていたことが発覚しました。コンパクトカーの「FIT」やミニバンの「Odyssey」など、対象車種はのべ325万台に上る大規模な品質不正事例となりました 。ホンダ社長は、再試験を回避したいという思いからくる「都合のいい技術的解釈」が原因と説明しています。
参考)【2024年最新】企業で発生したコンプライアンス違反事例!防…
2020年に発覚した第一生命保険の元社員による詐取事例では、山口県周南市で勤務していた元社員の女性が在職中に顧客24名から合計19億円を詐取していました 。「特別枠に空きがあるので預けないか」などと架空の金融取引を持ちかけ、18年に渡って詐取を続けていたという深刻な事例です。
これらの事例が示すように、コンプライアンス違反は企業にとって大きな損失をもたらす可能性があり、法律や規則を遵守することは企業が成長し続けるために不可欠な要素となっています 。
参考)企業にとって必須なコンプライアンス遵守がもたらす、従業員のメ…
効果的なコンプライアンス体制を構築するためには、6つの重要な要素を念頭におく必要があります。これらは「コンプライアンス体制」「行動基準」「リスク評価と対策」「教育」「文書管理」「モニタリングおよび監査」です 。
参考)コンプライアンス体制を整えるには?基本的な考え方と戦略
組織としてコンプライアンスに取り組んでいくためには、コンプライアンス委員会やコンプライアンス室などの専門部署を設け、行動規範や倫理方針、内部規程など社員が共通して認識すべき基準を定めることが重要です 。
リスクは事業や職場によって異なるため、それぞれについてリスク評価を行い、具体的な対策方法を考慮する必要があります。役員および社員に対してコンプライアンスに関する共通認識を持ってもらい、それに従うことの重要性を教育することも欠かせません 。
コンプライアンス研修を行うことで、基本的なルールを身に付けることができ、コンプライアンス意識を高めることが可能です。特に新入社員や中途社員には、企業ごとの基本的なマナーを早い段階で理解させ、身に付けてもらう必要があります 。
参考)コンプライアンス研修とは?その目的や実施のメリットについて解…
社員が「これくらい問題ないだろう」と軽く考えて問題になるケースも少なくありません。コンプライアンス研修により、守るべきルールや常識を全社員で共有し、認識を合わせることで、社員一人ひとりのコンプライアンス意識が高まり、違反を未然に防ぐことにつながります 。
2022年6月から従業員300名を超える企業に対して、内部通報制度の導入が義務化されています 。内部通報制度とは、企業内部の不正行為を発見し、早期に解決するために設けられた制度で、従業員や役員などが上司を通さずに専用窓口へ不正行為を通報できる仕組みです 。
参考)https://www.freee.co.jp/kb/kb-ipo/whistleblowing/
三井化学グループでは、コンプライアンス違反の予防および早期検知を目的として、コンプライアンス違反が発生、またはまさに発生しようとしている情報を入手した場合に、直接担当部門や社外の法律事務所に通報できる制度を設けています。通報者が制度に基づき通報したことを理由に不利益な取り扱いを受けないことを社内規程で明確に規定しています 。
参考)内部通報制度
近年の研究によると、コンプライアンス遵守は従業員のメンタルヘルスに良い影響を与えることがわかっています。従業員がコンプライアンスに従うことで、自分が正しいことをしているという自信を持つことができ、遵守することで罰則を受けるリスクを避けて仕事に集中できるため、ストレスを軽減することができます 。
コンプライアンス遵守は、従業員にとって自己実現感や自尊心を高めることができます。従業員は自分自身を尊重し、自信を持つことができ、企業が法律や規則の遵守を重視していることを知ることで、企業に対する忠誠心が高まり、モチベーションが向上すると考えられます 。
実際の企業での取り組み事例では、コンプライアンス遵守の意識を高めるための研修を実施した結果、従業員のメンタルヘルスに良い影響を与えたという報告があります。また、従業員向けにメンタルヘルスのためのカウンセリングサービスを提供することで、従業員のメンタルヘルスに良い影響を与えた企業事例もあります 。
コンプライアンス遵守は従業員のストレス軽減、モチベーション向上、コミュニケーションの改善、リスク軽減といった効果をもたらし、企業の生産性向上にもつながります。企業は、コンプライアンス遵守を徹底することで従業員のメンタルヘルスを守ることができ、結果的に企業自身の競争力を高めることができると言えます 。