血管疾患は侵される血管の部位や疾患のメカニズムによって大きく分類される 。心血管疾患には狭心症、心筋梗塞、心房細動、弁膜症、心不全などが含まれ、これらは心臓とその周辺の血管に生じる疾患である 。動脈硬化性疾患では、アテローム性動脈硬化、細動脈硬化、メンケベルグ型動脈硬化の3つのタイプに分けられ、最も一般的なアテローム性動脈硬化は太い動脈と中型の動脈に影響を及ぼす 。
参考)https://medicalnote.jp/diseases/body_parts/body/blood_vessel
脳血管疾患は脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などが代表的で、脳梗塞はさらにアテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞、心原性塞栓症の3つのタイプに細分化される 。末梢血管疾患には閉塞性動脈硬化症、急性動脈閉塞症、バージャー病、下肢静脈瘤などが含まれ、主に四肢の血管に影響を与える 。
参考)血管の病気 - しまむらファミリークリニック
血管炎疾患は侵される血管の太さによって大血管炎、中血管炎、小血管炎の3つに分類される 。大血管炎には高安動脈炎と巨細胞性動脈炎があり、大動脈とその主要分枝に肉芽腫性血管炎を起こす 。高安動脈炎は50歳以下の発症が多く、巨細胞性動脈炎は50歳以上でリウマチ性多発筋痛症との関連がある 。
参考)Table: 血管炎疾患の分類-MSDマニュアル プロフェッ…
中血管炎には結節性多発動脈炎と川崎病が含まれ、主内臓動脈とその分枝に炎症性動脈瘤や狭窄を引き起こす 。小血管炎はANCA関連血管炎と免疫複合体性血管炎に分けられ、ANCA関連血管炎には顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症が含まれる 。免疫複合体性血管炎にはIgA血管炎やクリオグロブリン血管炎などがある 。
参考)血管炎の治療:ANCA関連血管炎、リツキサン®、ヌーカラ®、…
血管疾患の症状は侵される血管の部位と疾患の種類によって異なる。心血管疾患では胸痛、息切れ、動悸、疲労感が主な症状となり、心筋梗塞では激しい胸痛、呼吸困難、冷汗、吐き気などの症状が15分以上続く 。心不全では息切れ、むくみ、疲労感が代表的な症状で、日本では虚血性心疾患、高血圧症、弁膜症の順で原因疾患となっている 。
参考)https://www.pref.aichi.jp/soshiki/kenkotaisaku/junkanki-heart.html
脳血管疾患では急性の神経症状が特徴的で、麻痺、言語障害、意識障害などが現れる 。診断には頭部CT、MRI、MRA検査が用いられ、発症30分程度でもMRIで病巣を検出することが可能である 。末梢動脈疾患では間欠性跛行、下肢の冷感、潰瘍、壊疽などの症状が見られ、診断には血管造影検査やCTアンギオグラフィーが重要である 。
参考)対象疾患・治療法
血管疾患の治療は病態に応じた包括的アプローチが必要である。動脈硬化性疾患では生活習慣の改善、薬物療法、血管内治療、外科的治療の組み合わせが効果的とされる 。薬物療法では抗血小板薬、スタチン系薬剤、ACE阻害薬などが使用され、運動療法も症状改善に重要な役割を果たす 。
参考)動脈硬化によって起こる病気 href="https://kekkan-kenko.com/movie/movie02/" target="_blank">https://kekkan-kenko.com/movie/movie02/amp;#8211; 血管の健康とよい…
血管内治療では血管形成術やステント留置術が行われ、外科的治療ではバイパス手術が選択される 。重症例では再生医療として自家間葉系幹細胞移植による血管再生治療も開発されており、患者の骨髄から採取した間葉系幹細胞を培養して患部に注射する方法が臨床応用されている 。血管炎疾患では免疫抑制療法が主体となり、ステロイド薬や免疫抑制薬が使用される 。
参考)末梢動脈疾患に対する治療
血管疾患の診断技術は近年大幅に進歩しており、非侵襲的な画像診断法の発達により早期診断が可能となっている。血管超音波検査は簡便でベッドサイドでも施行でき、頸動脈や頭蓋内血管、下肢静脈の評価に有用である 。造影CTアンギオグラフィーでは3次元構築により血管の走行や狭窄・閉塞部位の詳細な評価が可能で、動脈瘤の併存や壁在血栓の評価も行える 。
参考)下肢閉塞性動脈硬化症(ASO)の診断
治療面では個別化医療の概念が導入され、患者の病態や併存疾患に応じた治療法の選択が重要視されている。末梢動脈疾患では抗血小板薬の選択肢が拡大し、アスピリン単剤やクロピドグレル単剤に加え、低用量リバーロキサバンとアスピリンの併用療法も検討されている 。血管炎疾患では生物学的製剤の導入により治療成績の向上が期待され、特にANCA関連血管炎では寛解導入・維持療法の選択肢が広がっている 。将来的には遺伝子治療や組織工学的アプローチによる根治的治療法の開発が期待される 。
参考)末梢動脈疾患 - 04. 心血管疾患 - MSDマニュアル …