肉芽腫の治し方と効果的治療法

肉芽腫の治療法について、外科的切除からレーザー治療、ステロイド療法まで医療従事者向けに詳しく解説します。各タイプの肉芽腫に最適な治療アプローチを知りたくありませんか?

肉芽腫の治し方

肉芽腫治療の主要アプローチ
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正確な診断が治療の基盤

組織学的検査と臨床症状から肉芽腫のタイプを特定し、適切な治療方針を決定します

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外科的アプローチと保存療法

切除手術、レーザー治療、ステロイド療法など病変の特性に応じた段階的治療を実施します

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再発予防と長期管理

適切なフォローアップと生活習慣の改善により、肉芽腫の再発リスクを最小限に抑えます

肉芽腫の診断と検査方法

 

肉芽腫の治療を開始する前に、正確な診断が不可欠です。診断プロセスでは、まず視診により病変部の外観、大きさ、色調、出血傾向を観察します。化膿性肉芽腫では直径0.5~2センチの赤く隆起した病変として現れ、血管が豊富で出血しやすい特徴があります。環状肉芽腫では、初期に小さな赤い発疹が出現し、時間とともに輪状に広がるパターンを示します。
参考)肉芽腫とは? メカニズムや症状・種類・出現場所・診断方法など…

病理組織学的検査は確定診断に必須の検査です。皮膚生検により採取した組織を顕微鏡で観察し、類上皮細胞、多核巨細胞、リンパ球浸潤などの特徴的な肉芽腫性変化を確認します。環状肉芽腫では表皮下にGrenz zoneが認められ、真皮全層に密な細胞浸潤が観察されます。さらに、全身性疾患の可能性を考慮し、血液検査でANCA(抗好中球細胞質抗体)や炎症マーカーの測定を行います。
参考)顔面肉芽腫の1例 (皮膚科の臨床 62巻9号)

画像検査も診断に重要な役割を果たします。CT検査やMRI検査により、病変の深さや周囲組織への浸潤範囲を評価できます。多発血管炎性肉芽腫症などの全身性疾患では、肺や腎臓などの他臓器の評価も必要となります。診断が困難な症例では、培養検査や免疫組織化学染色などの特殊検査を追加することで、感染性肉芽腫やサルコイドーシスとの鑑別が可能になります。
参考)多発血管炎性肉芽腫症(granulomatosis with…

肉芽腫の外科的切除と手術療法

外科的切除は化膿性肉芽腫の治療において最も確実な方法とされています。局所麻酔下で腫瘍を完全に切除することで、病理組織学的検査による確定診断が可能となり、再発リスクを最小限に抑えられます。手術では腫瘍を取り囲むように正常組織を含めた切除を行い、十分な切除マージンを確保することが重要です。
参考)化膿性肉芽腫|こばとも皮膚科|栄駅(名古屋市栄区)徒歩2分

切除後は皮膚を糸で縫合しますが、病変の大きさや部位によっては、皮膚に余裕がなく縫い寄せられないこともあります。このような場合には、段階的な切除や皮弁形成術を考慮する必要があります。術後は2~3週間ガーゼなどで保護し、1~3週間後に抜糸を行います。
参考)血管拡張性肉芽腫(化膿性肉芽腫)

外科的切除には複数の利点があります。完全な病変除去により低い再発率が期待でき、切除組織の病理診断が可能です。一方で、瘢痕形成のリスク、局所麻酔の必要性、処置後の出血、ひきつれ感などの留意点もあります。美容上重要な部位や大きな化膿性肉芽腫の場合は、これらのリスクと治療効果を慎重に検討する必要があります。術後は定期的なフォローアップを行い、再発の早期発見に努めることが推奨されます。
参考)化膿性肉芽腫

肉芽腫のレーザー治療と凍結療法

レーザー治療は特定の波長のレーザー光を照射し、血管を凝固させることで腫瘍を縮小させる非侵襲的治療法です。化膿性肉芽腫の治療では、パルス色素レーザー(PDL)や炭酸ガスレーザーが使用されます。レーザー治療の利点は、出血が少ないこと、瘢痕形成のリスクが低いこと、小さな病変に特に効果的であることです。局所麻酔を行ってから治療することもありますが、病変によっては麻酔なしで実施できる場合もあります。​
Vビームレーザー治療とロングパルスヤグレーザー治療は、血管拡張性肉芽腫に対して有効な選択肢です。治療時間は1秒から1分程度と短く、患者への負担が少ないことが特徴です。術後は2~3週間ほど軟膏を塗布し、ガーゼなどで保護します。ただし、複数回の治療が必要になる場合があり、病変の大きさや深さによっては完全な除去が困難なこともあります。​
凍結療法は液体窒素を使用して肉芽腫を凍結し、腫瘍が崩れて自然に剥がれるのを待つ治療法です。この方法は簡便で外来処置として実施できますが、治療後に一時的な皮膚の赤みやむくみ、内出血斑が出現することがあります。レーザー治療や凍結療法は、症状や部位によって選択され、特に整容的な観点から優れた結果が期待できる場合に推奨されます。治療法の選択は専門医の指導の下で行い、患者の症状や希望を考慮することが重要です。​

肉芽腫のステロイド療法と薬物治療

ステロイド療法は環状肉芽腫の治療において第一選択となる保存的治療法です。外用ステロイド薬による局所療法から開始し、病変の大きさや範囲、症状の程度に応じて段階的に治療強度を上げていきます。初期段階では症状が軽度であれば経過観察のみで自然治癒を期待できることもありますが、症状が気になる場合や拡大傾向がみられる時には積極的な治療介入が必要です。
参考)環状肉芽腫(にくげしゅ)|こばとも皮膚科|栄駅(名古屋市栄区…

顔面肉芽腫などの難治性症例では、ジアフェニルスルホン(DDS)内服とタクロリムス軟膏外用の併用療法が有効です。ジアフェニルスルホン内服により、3カ月で病変の縮小傾向が認められた報告があります。また、少量のステロイド内服が奏効した症例や、シクロスポリンなどの免疫抑制薬が治療に有効であった症例も報告されています。
参考)::(巻号)の雑誌案内

全身性疾患である多発血管炎性肉芽腫症や好酸球性多発血管炎性肉芽腫症では、副腎皮質ステロイド薬が治療の主体となります。症状に応じてステロイド薬の量を加減し、寛解を目指します。ステロイド薬で効果がない場合や症状が重い場合は、免疫抑制薬、免疫グロブリン、好酸球の活性化を抑える薬剤などを追加します。ステロイド系軟膏の長期使用では皮膚が薄くなるなどの副作用があるため、医師の指示なく長期使用しないよう注意が必要です。適切な治療により寛解が得られ治療を中止できる患者もいますが、症状が軽快しても治療を緩めると再発することがあるため、医師の管理下でしっかりと治療を続ける必要があります。
参考)https://mb-clinic.jp/topics/2025/05/12/%E3%83%94%E3%82%A2%E3%82%B9%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%81%AB%E8%82%89%E8%8A%BD%E3%81%8C%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%81%A6%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%82%89%EF%BC%9F%E3%81%A9%E3%82%8C%E3%81%8F/

肉芽腫の予防と再発防止策

肉芽腫の予防には清潔なケアと適切な環境管理が重要です。ピアスホールなどの皮膚損傷部位に発生する肉芽腫では、患部を清潔に保つことが基本となります。手を石鹸でよく洗い、生理食塩水や消毒液をコットンに含ませて肉芽周辺を優しく拭き取り、1日2回(朝・晩)を目安に消毒を行います。アルコールや刺激の強い消毒液は肉芽を悪化させる可能性があるため使用を避け、刺激の少ない生理食塩水が最適です。​
一度肉芽ができた経験がある方は、再発を防ぐための注意が必要です。アレルギー反応の少ない医療用チタンやサージカルステンレスなどの素材を選び、シンプルで引っ掛かりにくいデザイン、ホールに適したサイズ、軽いピアスを選択することが推奨されます。ピアスのつけ方にも注意し、ホールに対して無理な角度でつけると摩擦や圧迫により肉芽ができやすくなります。​
生活習慣の改善も肉芽腫の予防に重要な役割を果たします。十分な睡眠と栄養バランスの良い食事で免疫力を高め、過度のストレスは免疫力を低下させるため適切に管理します。寝具やタオルなど、患部が触れるものを清潔に保ち、プールや海水浴では塩素や塩分による刺激に注意が必要です。風邪をひいている時や睡眠不足が続いている時は、特に免疫力が低下しており肉芽ができやすいため、体調管理と健康的な生活習慣の維持が予防の鍵となります。​
臍肉芽腫の予防では、臍帯結紮時に低位クランプを行い、臍帯断端のケアでは局所の消毒よりもdry cord careが有用です。近位での臍帯クランプは臍帯の局所感染発生率を低下させ、臍肉芽腫の発症予防に効果的であると報告されています。定期的なフォローアップにより再発の早期発見に努めることも、長期的な予防管理において重要です。
参考)https://hama-med.repo.nii.ac.jp/record/4155/files/hjop_3_1_3.pdf

 

 


サルコイドーシス診療の手引き2023