心疾患の種類と主な特徴から治療法まで

心臓病には虚血性心疾患・心臓弁膜症・不整脈・心筋症・先天性心疾患・心不全など多様な種類があります。各疾患の症状や原因、治療法の違いを正しく理解することで早期発見や適切な対処が可能になるのでしょうか?

心疾患の種類と分類

心疾患の主要な6つの分類
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虚血性心疾患

狭心症・心筋梗塞など冠動脈の問題による疾患

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不整脈

心拍リズムの異常により起こる各種疾患

心臓弁膜症

心臓の弁の開閉機能異常による疾患群

心疾患は心臓の構造や機能に起因する病気の総称で、日本国内の患者数は約305.5万人に達しています 。心疾患は大きく6つのカテゴリーに分類されます。第一虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)、第二に不整脈、第三に心臓弁膜症、第四に心筋症、第五に先天性心疾患、第六に心不全です 。これらの疾患は発症機序や症状、治療法がそれぞれ異なるため、正確な診断と適切な治療選択が重要です 。
参考)心疾患とは?代表的な4つの種類と治療方法

 

患者数の割合を見ると、最も多いのは不整脈及び伝導障害(31.5%)、次に狭心症(28.0%)、心不全(18.0%)の順となっており、これらで全体の約8割を占めています 。動脈硬化の進行により引き起こされる虚血性心疾患は、生活習慣病と密接に関連し、突然死のリスクも高い重要な疾患群です 。
参考)心疾患とは?種類一覧や種類別患者数の割合

 

心疾患における虚血性心疾患の特徴と分類

虚血性心疾患は心疾患の中でも特に患者数が多く、心臓に血液を供給する冠動脈の問題によって発症します 。動脈硬化により冠動脈が狭くなったり詰まったりすることで、心筋への酸素や栄養の供給が不足し、胸痛や心機能低下を引き起こします 。
参考)心臓病にはさまざまな種類があります

 

狭心症は冠動脈の狭窄により一時的に心筋が酸素不足になる状態で、通常数分から15分程度で症状が治まります 。一方、心筋梗塞は冠動脈が完全に詰まることで心筋が壊死する疾患で、30分以上の激しい胸痛が持続し、緊急治療が必要です 。
参考)心臓病(心臓の病気)の種類と症状

 

虚血性心疾患の症状には、胸の締め付け感、動悸、息切れがありますが、特に心筋梗塞では激しい胸痛と圧迫感が特徴的です 。治療法としては薬物療法、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)、冠動脈バイパス手術などがあり、病変の程度や範囲によって選択されます。

心疾患における不整脈の種類と病態

不整脈は心臓の電気的な刺激伝導系の異常により、心拍が不規則になったり、異常に速くなったり遅くなったりする状態を指します 。不整脈は大きく期外収縮、頻脈性不整脈、徐脈性不整脈の3つに分類されます 。
期外収縮は正常な心拍リズムに割り込むような形で起こる不整脈で、健康な人にもストレスや過労により一時的に現れることがあります 。頻脈性不整脈では心拍数が150回/分以上となり、激しい動悸や胸の不快感を伴います。代表的なものに心房細動、上室頻拍、心室頻拍があります 。
参考)心臓病の知識

 

徐脈性不整脈は心拍数が50回/分以下に低下する状態で、房室ブロックや洞不全症候群などが含まれます 。症状として息苦しさ、めまい、失神などが起こり、重篤な場合にはペースメーカーの植え込みが必要になります 。治療には抗不整脈薬、カテーテルアブレーション、デバイス治療などがあります。

心疾患における弁膜症の病態と治療

心臓弁膜症は心臓の4つの弁(僧帽弁、大動脈弁、三尖弁、肺動脈弁)のいずれかの機能に異常をきたす疾患群です 。弁膜症には狭窄症と閉鎖不全症の2つのタイプがあり、前者は弁が狭くなって血流が妨げられる状態、後者は弁が完全に閉じずに血液が逆流する状態です 。
参考)心臓弁膜症

 

僧帽弁閉鎖不全症は最も頻度の高い弁膜症の一つで、左心室から大動脈への血流の一部が左心房に逆流します 。原因にはリウマチ熱、動脈硬化による石灰化、虚血性心疾患などがあります 。急性発症では急激な呼吸困難が現れ、慢性では長期間無症状で経過することが多いです 。
参考)心臓弁膜症とは?心臓血管外科医が解説

 

大動脈弁狭窄症では左心室から大動脈への血流が妨げられ、胸痛、失神、心不全症状が特徴的な三徴候として知られています 。重篤な症状が出現した場合の予後は極めて不良で、外科的弁置換術や経カテーテル大動脈弁植込み術(TAVI)による治療が必要になります。弁膜症の治療には薬物療法による症状コントロールと、根治的な弁修復術や弁置換術があります。
参考)弁膜症・心筋症の原因や症状と治療

 

心疾患における心筋症と先天性心疾患の特色

心筋症は心筋そのものの病変により心機能が低下する疾患群で、拡張型心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症に分類されます 。拡張型心筋症では左心室が拡張し、収縮力が著しく低下します。肥大型心筋症は心筋の異常な肥大により左心室流出路の狭窄を来すことがあり、若年者の突然死の原因となることもあります。
参考)心臓病科の主な病気

 

先天性心疾患は生まれつき心臓の構造に異常がある疾患群で、心房中隔欠損症や心室中隔欠損症が代表的です 。心房中隔欠損症は左右心房間の壁に欠損孔がある疾患で、先天性心疾患の6~10%を占め、女性に多く見られます 。
参考)心房中隔欠損症とは?心臓血管外科医が解説

 

心室中隔欠損症では左右心室間に欠損孔があり、左心室から右心室への血液の短絡が生じます 。小さな欠損孔は自然閉鎖することもありますが、大きな欠損孔では肺高血圧や心不全を来すため、外科的閉鎖術が必要になります 。これらの疾患の多くは早期診断と適切な治療により良好な予後が期待できますが、重篤な場合には心移植が検討されることもあります。
参考)心房中隔欠損症と心室中隔欠損症 - 23. 小児の健康上の問…

 

心疾患における心不全の総合的理解と管理

心不全は心臓のポンプ機能が低下し、体に必要な血液を十分に送り出せなくなった状態の総称です 。心不全は疾患名というよりも、様々な心疾患の終末像として現れる病態で、高血圧、虚血性心疾患、心臓弁膜症、心筋症などが原因となります 。
参考)心不全

 

心不全の症状は血液を送り出す力の低下と、体内への血液貯留という2つの機序により現れます 。前者では疲労感、倦怠感、手足の冷え、血圧低下などが見られ、後者では息切れ、呼吸困難、むくみ、腹部膨満感などが出現します 。
参考)心不全の症状にはどのようなものがあるか

 

心不全に特徴的な症状として、夜間の呼吸困難発作があります 。これは臥位により心臓への静脈還流が増加し、心負荷が増大するためです。また、両足から始まるむくみは心不全の典型的な徴候で、腎血流の低下により体内に水分が貯留することが原因です 。
心不全の治療は原因疾患の治療と心不全そのものの治療に分かれます。ACE阻害薬、ARB、β遮断薬、利尿薬などによる薬物療法が基本となり、重篤な場合には心臓再同期療法(CRT)や左室補助装置(LVAD)、心移植などの高度治療が検討されます。生活習慣の改善として塩分制限、適度な運動、禁煙なども重要な要素となります。