血管内治療における保険適用は、癌の種類と治療方法によって大きく異なります 。肝細胞癌に対するTACE(経カテーテル的動脈化学塞栓術)やRFA(ラジオ波焼灼療法)は保険適用となっており、患者負担は1~3割程度となります 。一方、肝癌以外の臓器(肺癌や腎癌など)に対するRFAは保険が適用されないケースが多く、全額自己負担となる場合があります 。
参考)保本卓のIVR治療
多血性腫瘍に対する動脈塞栓術は現在保険適用となっており、様々な癌種に効果が期待できるため、この治療法を選択する患者さんが増加しています 。ただし、治療部位や病気の状態に応じて保険適用の可否が決まるため、事前に医療機関での確認が必要です 。
参考)【初めて受診される方へ】医療法人 龍志会IGTクリニック
肝細胞癌に対するTACE治療では、診療報酬点数として選択的動脈化学塞栓術で20,040点(約20万円)が設定されています 。実際の患者負担額は、3割負担の場合で約6万円程度となります。肝細胞癌への血管塞栓術を含む入院費用は、実際の医療機関では約20~30万円程度が目安とされています 。
参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/shinryou.aspx?file=ika_2_10_1_8_2%2Fk615.html
ラジオ波焼灼療法(RFA)では、治療内容により費用が異なります。早期乳癌に対するRFA治療では、3割負担で入院費を含めて約15~16万円が目安となっています 。肝癌に対するRFA治療の場合、治療費総額は約142万円で、1年目治療費が約57万円程度となります 。
参考)部位別がんの治療費:肝臓がん Aステージでの治療方法と治療費…
自由診療となる場合の費用は大幅に高額となり、光免疫療法では2回で110万円、ICGリポソームを使用した治療では6回で132万円といった価格設定となっています 。
参考)治療方法・費用一覧
血管内治療は、カテーテルという細い管を血管内に挿入して病巣部に直接アプローチする低侵襲治療です 。最大のメリットは、手術のように体を大きく切開する必要がないため、患者の身体的負担が軽減されることです 。血管内には神経がないため痛みを感じにくく、カテーテル挿入部分の局所麻酔により、ほとんど痛みなく治療が可能です 。
参考)血管内治療のメリット・デメリット
入院期間も従来の開頭手術や開腹手術と比較して短縮され、数日での退院が可能なケースが多くなっています 。また、開頭手術では治療困難な部位にもアプローチできる場合があり、治療選択肢の拡大につながっています 。
参考)脳血管内治療 - 一般財団法人 富士脳障害研究所附属病院
癌に栄養を供給する異常血管を塞栓することで、癌細胞への栄養供給を遮断し、転移のリスクも軽減できる効果が期待されます 。
参考)血管内治療(カテーテル治療)について
高額療養費制度は、月額の医療費自己負担額が一定額を超えた場合に、超過分が払い戻される制度です 。年収600万円の患者の場合、月額自己負担限度額は約8万円となり、治療費が100万円でも実質負担は8万円程度に抑えられます 。
参考)がん治療には必ず利用したい「高額療養費制度」
血管内治療が保険診療として認められている場合、この制度の対象となるため、患者の経済的負担を大幅に軽減できます 。世帯合算により、同じ健康保険に加入している家族の医療費を合算して計算することも可能で、さらなる負担軽減が期待できます 。
参考)抗がんIVRについて
過去1年以内に3回以上高額療養費の支給を受けている場合、4回目以降は「多数回該当」として自己負担上限額がさらに下がる仕組みもあります 。事前に「限度額適用認定証」を取得しておけば、医療機関での支払い時に一時的な高額負担を回避することも可能です 。
血管内治療にはデメリットも存在します。カテーテル操作は非常に精密な技術を要するため、治療合併症のリスクがゼロではありません 。また、すべての癌がこの治療法で対応できるわけではなく、患者の状態や癌の進行度により適応が限定される場合があります 。
造影剤を使用するため、腎機能に問題がある患者では慎重な検討が必要となります 。治療効果についても、個人差があり、複数回の治療が必要になるケースも少なくありません。
参考)血管内治療とは?
最近のカテーテル技術の進歩により、気管支動脈などの細い血管へのアプローチも可能となり、肺癌患者への治療適応も拡大しています 。神経ブロックや骨セメント充填術など、痛みを軽減する緩和的IVR治療も発展しており、癌患者のQOL向上に大きく貢献しています 。
参考)302 Found
日本IVR学会による肝臓がんに対する動脈塞栓術の詳細説明
抗がんIVRの費用目安と保険適用について(メディカルノート)
がん治療における高額療養費制度の活用方法