ボルタレン座薬の副作用添付文書解説

ボルタレン座薬の副作用情報について添付文書に基づき医療従事者向けに詳しく解説します。重大な副作用から軽微な副作用まで、頻度や症状を含めて包括的に説明。どのような症状に注意すべきでしょうか?

ボルタレン座薬の副作用添付文書情報

ボルタレン座薬の副作用添付文書解説
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重大な副作用

ショック、アナフィラキシー、消化性潰瘍、重篤な血液障害など生命に関わる副作用の詳細説明

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頻度別副作用分類

1~5%未満、1%未満、頻度不明の副作用を分類し、発現頻度と症状を体系的に整理

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臨床現場での対応

副作用発現時の処置方法と観察ポイント、患者への説明方法について実践的解説

ボルタレン座薬の重大な副作用(頻度不明)

ボルタレン座薬の添付文書には、14項目の重大な副作用が記載されています。これらの副作用は生命に関わる可能性があるため、十分な観察が必要です。

 

1. ショック・アナフィラキシー
胸内苦悶、冷汗、呼吸困難、四肢冷却、血圧低下、意識障害などの症状が現れます。特に初回投与時に注意が必要で、投与後は患者の状態を慎重に観察する必要があります。

 

2. 消化性潰瘍と関連症状

  • 出血性ショックまたは穿孔を伴う消化管潰瘍
  • 消化管の狭窄・閉塞
  • 上部消化管出血、下部消化管出血

これらは消化管への直接的な影響と、プロスタグランジン合成阻害による胃粘膜保護作用の低下が原因となります。

 

3. 腎機能障害

4. 呼吸器系副作用

5. 皮膚・粘膜系副作用

6. 肝機能障害
劇症肝炎、広範な肝壊死等の重篤な肝障害が報告されています。肝機能検査値の定期的なモニタリングが重要です。

 

7. 血液系副作用

8. 心血管系副作用

9. 神経系副作用

  • 無菌性髄膜炎(項部硬直、発熱、頭痛悪心・嘔吐、意識混濁等)
  • 急性脳症(特に、かぜ様症状に引き続き、激しい嘔吐、意識障害、痙攣等)

特にSLE(全身性エリテマトーデス)やMCTD(混合性結合組織病)等のある患者では無菌性髄膜炎のリスクが高まるため注意が必要です。

 

ボルタレン座薬の一般的な副作用と頻度

添付文書に記載された頻度別の副作用は以下の通りです。

 

1~5%未満の副作用

1%未満の副作用

頻度不明の副作用

  • 軟便及び直腸粘膜の刺激
  • 消化性潰瘍
  • 胃腸出血
  • 食欲不振
  • 胃炎
  • 吐血、下血
  • 胃痛

使用成績調査データ
市販後の使用成績調査21,958例中、390例(1.78%)に482件の副作用が認められています。主な内訳は。

  • 消化器症状:182例(0.83%)
  • 局所症状:46例(0.21%)
  • 低体温:30例(0.14%)
  • 浮腫、発疹等

ボルタレン座薬特有の局所副作用

座薬という投与経路の特性により、局所的な副作用が報告されています。

 

肛門部症状

  • 肛門部刺激感
  • 直腸粘膜の刺激
  • 肛門部の不快感

これらの症状は座薬の基剤であるグリセリン脂肪酸エステルによる刺激や、ジクロフェナクナトリウムの直接的な刺激作用によるものと考えられます。

 

低体温のリスク
ボルタレン座薬では特に低体温による副作用が注意されています。高齢者では低体温によるショックを起こすことがあるため、少量から投与を開始することが推奨されています。

 

過度の体温下降、虚脱、四肢冷却等が現れることがあるため、特に高熱を伴う幼小児及び高齢者又は消耗性疾患の患者では注意深い観察が必要です。

 

ボルタレン座薬添付文書の禁忌事項と注意点

添付文書には以下の禁忌事項が明記されています。

 

禁忌(次の患者には投与しないこと)

  1. 消化性潰瘍のある患者(消化性潰瘍を悪化させる可能性)
  2. 重篤な血液の異常のある患者(副作用として血液障害の報告)
  3. 重篤な肝障害のある患者
  4. 重篤な腎障害のある患者
  5. 重篤な心機能不全のある患者
  6. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
  7. アスピリン喘息(非ステロイド性消炎鎮痛剤等による喘息発作の誘発)の患者

特別な注意を要する患者群

  • 高齢者:低体温によるショックのリスクがあり、少量から開始
  • 小児:体重1kgあたり0.5~1mgを基準とした慎重な投与
  • SLE・MCTD患者:無菌性髄膜炎のリスク増加

併用禁忌薬
トリアムテレン(利尿薬)との併用により、腎障害を悪化させる可能性があります。

 

ボルタレン座薬における副作用モニタリングと対応策

臨床現場での観察ポイント
ボルタレン座薬投与時には以下の項目を重点的に観察する必要があります。

  1. バイタルサインの監視
    • 体温(低体温の早期発見)
    • 血圧(ショック症状の監視)
    • 呼吸状態(呼吸困難、喘息発作)
  2. 消化器症状の確認
    • 腹痛、悪心・嘔吐の有無
    • 下血、吐血の兆候
    • 便の性状(軟便、血便等)
  3. 皮膚・粘膜の観察
    • 発疹、紅斑の出現
    • 口腔内の変化(口内炎等)
    • 眼の充血や唇の腫れ

副作用発現時の対応
添付文書では「観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと」と明記されています。

 

具体的な対応として。

  • 重大な副作用の兆候を認めた場合は直ちに投与中止
  • 症状に応じた対症療法の実施
  • 必要に応じて専門医への紹介

患者・家族への指導
座薬使用時の注意点として以下の指導が重要です。

  • 肛門部の刺激感等の局所症状の説明
  • 消化器症状(腹痛、下痢等)の可能性
  • 異常を感じた場合の速やかな医療機関受診の重要性

特殊な副作用:ライ症候群
添付文書では、水痘やインフルエンザ等のウイルス性疾患の先行後に現れる急性脳症について、ライ症候群の可能性を考慮することが記載されています。これは激しい嘔吐、意識障害、痙攣等を特徴とする高死亡率の病態で、特に小児において注意が必要です。

 

症状

  • 急性脳浮腫
  • 肝臓ほか諸臓器の脂肪沈着
  • ミトコンドリア変形
  • AST、ALT、LDH、CKの急激な上昇
  • 高アンモニア血症
  • 低プロトロンビン血症
  • 低血糖

これらの症状が短期間に発現するため、ウイルス性疾患の既往がある患者への投与時は特に慎重な観察が求められます。

 

ボルタレン座薬の副作用情報は添付文書に詳細に記載されており、医療従事者はこれらの情報を十分に理解し、適切な観察と対応を行うことが患者の安全確保に不可欠です。