ボルタレン座薬の添付文書には、14項目の重大な副作用が記載されています。これらの副作用は生命に関わる可能性があるため、十分な観察が必要です。
1. ショック・アナフィラキシー
胸内苦悶、冷汗、呼吸困難、四肢冷却、血圧低下、意識障害などの症状が現れます。特に初回投与時に注意が必要で、投与後は患者の状態を慎重に観察する必要があります。
2. 消化性潰瘍と関連症状
これらは消化管への直接的な影響と、プロスタグランジン合成阻害による胃粘膜保護作用の低下が原因となります。
3. 腎機能障害
4. 呼吸器系副作用
5. 皮膚・粘膜系副作用
6. 肝機能障害
劇症肝炎、広範な肝壊死等の重篤な肝障害が報告されています。肝機能検査値の定期的なモニタリングが重要です。
7. 血液系副作用
8. 心血管系副作用
9. 神経系副作用
特にSLE(全身性エリテマトーデス)やMCTD(混合性結合組織病)等のある患者では無菌性髄膜炎のリスクが高まるため注意が必要です。
添付文書に記載された頻度別の副作用は以下の通りです。
1~5%未満の副作用
1%未満の副作用
頻度不明の副作用
使用成績調査データ
市販後の使用成績調査21,958例中、390例(1.78%)に482件の副作用が認められています。主な内訳は。
座薬という投与経路の特性により、局所的な副作用が報告されています。
肛門部症状
これらの症状は座薬の基剤であるグリセリン脂肪酸エステルによる刺激や、ジクロフェナクナトリウムの直接的な刺激作用によるものと考えられます。
低体温のリスク
ボルタレン座薬では特に低体温による副作用が注意されています。高齢者では低体温によるショックを起こすことがあるため、少量から投与を開始することが推奨されています。
過度の体温下降、虚脱、四肢冷却等が現れることがあるため、特に高熱を伴う幼小児及び高齢者又は消耗性疾患の患者では注意深い観察が必要です。
添付文書には以下の禁忌事項が明記されています。
禁忌(次の患者には投与しないこと)
特別な注意を要する患者群
併用禁忌薬
トリアムテレン(利尿薬)との併用により、腎障害を悪化させる可能性があります。
臨床現場での観察ポイント
ボルタレン座薬投与時には以下の項目を重点的に観察する必要があります。
副作用発現時の対応
添付文書では「観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと」と明記されています。
具体的な対応として。
患者・家族への指導
座薬使用時の注意点として以下の指導が重要です。
特殊な副作用:ライ症候群
添付文書では、水痘やインフルエンザ等のウイルス性疾患の先行後に現れる急性脳症について、ライ症候群の可能性を考慮することが記載されています。これは激しい嘔吐、意識障害、痙攣等を特徴とする高死亡率の病態で、特に小児において注意が必要です。
症状
これらの症状が短期間に発現するため、ウイルス性疾患の既往がある患者への投与時は特に慎重な観察が求められます。
ボルタレン座薬の副作用情報は添付文書に詳細に記載されており、医療従事者はこれらの情報を十分に理解し、適切な観察と対応を行うことが患者の安全確保に不可欠です。