甲状腺疾患の種類と一覧:機能異常とバセドウ病から橋本病まで

甲状腺疾患にはさまざまな種類があり、症状や治療法が異なります。本記事では甲状腺機能亢進症と低下症の違い、バセドウ病や橋本病の特徴、リバースT3の影響まで幅広く解説します。あなたの不調は甲状腺が原因かもしれませんか?

甲状腺疾患の種類と一覧

甲状腺疾患の基本知識
🔍
甲状腺の役割

甲状腺は新陳代謝を促進するホルモンを分泌する重要な内分泌器官です。身体活動の調整に大きく関与しています。

📊
主な分類

甲状腺疾患は機能異常(亢進・低下)と形態異常(びまん性・結節性)の2つに大きく分類されます。

🩺
早期発見の重要性

症状が多岐にわたるため見逃されやすく、適切な検査で早期に診断することが治療効果を高めます。

甲状腺疾患の主な分類と代表的な病気

甲状腺疾患は、大きく機能異常と形態異常に分類できます。機能異常は甲状腺ホルモンの分泌量に関わる問題で、形態異常は甲状腺の形や大きさに関わる問題です。これらを詳しく見ていきましょう。

 

甲状腺の機能異常は、さらに甲状腺機能亢進症甲状腺機能低下症に分けられます。

 

甲状腺機能亢進症
甲状腺ホルモンが過剰に分泌される状態で、代表的な疾患には以下があります。

  • バセドウ病:甲状腺を刺激する物質(TSHレセプター抗体)が体内で産生され、甲状腺ホルモンを大量に作らせる自己免疫疾患
  • 無痛性甲状腺炎:炎症により甲状腺組織が破壊され、一時的にホルモンが血中に漏れ出る状態
  • 亜急性甲状腺炎:ウイルス感染後などに生じる一過性の炎症性疾患
  • プランマー病(中毒性単結節性甲状腺腫):機能性甲状腺結節によるホルモン過剰産生

甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモンの分泌が不足する状態で、主な原因疾患は。

  • 橋本病(慢性甲状腺炎):自己免疫により甲状腺組織が徐々に破壊される疾患
  • 亜急性甲状腺炎後の機能低下:炎症後に一時的に機能が低下する状態
  • 薬剤性甲状腺機能低下症:抗甲状腺薬の過剰投与などによるもの

形態による分類
甲状腺の形態異常は、びまん性と結節性に分けられます。

  • びまん性甲状腺腫:甲状腺全体が腫大するもの(単純性びまん性甲状腺腫、バセドウ病、橋本病など)
  • 結節性甲状腺腫:甲状腺の一部にしこりができるもの(良性腫瘍、悪性腫瘍、嚢胞など)

甲状腺疾患の診断には、血液検査(TSH、FT3、FT4など)、超音波検査、針生検などが用いられます。症状が多様であるため、頸部の腫れや不快感だけでなく、全身症状にも注目することが重要です。

 

甲状腺機能亢進症:バセドウ病と亜急性甲状腺炎の症状と治療

甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで起こる病態です。このセクションでは、代表的な亢進症であるバセドウ病と亜急性甲状腺炎について詳しく解説します。

 

バセドウ病の特徴
バセドウ病は、甲状腺機能亢進症の中で最も頻度が高く、特に20~30歳代の女性に多い疾患です。男性の5~7倍の頻度で女性に発症します。

 

主な症状。

  • 甲状腺の対称性腫大
  • 動悸・頻脈(安静時でも心拍数が増加)
  • 手指の細かい震え
  • 多汗・暑がり・発汗過多
  • 食欲亢進にもかかわらず体重減少
  • イライラ感・情緒不安定
  • 眼球突出(バセドウ眼症)
  • 月経不順・不妊(女性)

バセドウ病の治療には主に3つの方法があります。

  1. 抗甲状腺薬による治療:チアマゾール(メルカゾール)やプロピルチオウラシル(PTU)を使用して甲状腺ホルモンの合成を抑制します。通常1~2年の投与期間が必要です。
  2. 放射性ヨウ素治療:放射性ヨウ素を甲状腺に取り込ませ、放射線により甲状腺組織を破壊する方法です。
  3. 手術療法:甲状腺の一部または大部分を外科的に切除する方法です。

亜急性甲状腺炎の特徴
亜急性甲状腺炎はウイルス感染後に発症することが多く、甲状腺に一過性の炎症が生じる疾患です。

 

主な症状。

  • 甲状腺の腫れと痛み(片側から始まり反対側に移行することも)
  • 発熱
  • 嚥下時の違和感や疼痛
  • 一過性の甲状腺機能亢進症状(動悸、多汗など)
  • その後に一時的な機能低下が続くこともある

亜急性甲状腺炎の治療。

  • 疼痛に対して非ステロイド性抗炎症薬NSAIDs)を使用
  • 症状が強い場合はステロイド薬(プレドニゾロンなど)を短期間使用
  • 甲状腺機能亢進症状に対してはβ遮断薬(プロプラノロールなど)を対症的に使用
  • 多くは数か月以内に自然軽快するため、経過観察が基本

甲状腺機能亢進症の診断には、血清TSH値の低下と遊離T3(FT3)・遊離T4(FT4)値の上昇が重要です。また、バセドウ病の診断にはTSH受容体抗体(TRAb)の測定が有用です。

 

甲状腺機能低下症:橋本病の病態と診断基準

甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの分泌量が減少することで様々な全身症状を引き起こす病態です。その代表的な原因疾患である橋本病(慢性甲状腺炎)について詳しく説明します。

 

橋本病の病態と疫学
橋本病は自己免疫性の慢性甲状腺炎で、甲状腺に対する自己抗体が産生され、甲状腺組織が徐々に破壊されることで甲状腺機能低下を引き起こします。名称は、1912年に初めてこの疾患を報告した日本人医師・橋本策(はしもとはかる)に由来しています。

 

疫学的特徴として、成人の約10人に1人が罹患していると言われ、特に中年以降の女性に多く見られます。男性より女性の発症率が5~10倍高いことが報告されています。

 

橋本病の主な症状
橋本病による甲状腺機能低下症の症状は、緩徐に進行することが多く、以下のような特徴があります。

  • 甲状腺のびまん性腫大(弾性硬)
  • 喉の違和感や圧迫感
  • 全身倦怠感・疲労感
  • 寒がり・低体温
  • 体重増加(基礎代謝の低下による)
  • 皮膚乾燥・かゆみ
  • 便秘
  • むくみ(特に顔や手)
  • 脱毛や爪の脆弱化
  • 月経過多・不順(女性)
  • 記憶力低下・抑うつ傾向
  • 徐脈(心拍数の低下)

橋本病の診断基準と検査
橋本病の診断には以下の検査が重要です。

  1. 血液検査
    • TSH(甲状腺刺激ホルモン):上昇
    • FT4(遊離サイロキシン):低下
    • 抗TPO抗体(抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体):陽性
    • 抗サイログロブリン抗体:陽性
  2. 超音波検査
    • 甲状腺のびまん性腫大
    • 不均一な低エコー像
    • 線維化を反映する高エコー域の混在
  3. その他の検査
    • 甲状腺シンチグラフィー:取り込みの低下
    • 針生検(必要に応じて):リンパ球浸潤と線維化

橋本病の診断基準は、甲状腺腫と抗甲状腺自己抗体陽性を主な柱としています。機能低下症の有無にかかわらず、これらの所見があれば橋本病と診断できますが、臨床的に重要なのは甲状腺機能低下症を伴う場合です。

 

橋本病の治療
橋本病の治療は、甲状腺機能の状態によって異なります。

  • 甲状腺機能が正常(潜在性)の場合:定期的な経過観察のみ
  • 甲状腺機能低下症を呈する場合:甲状腺ホルモン薬(レボチロキシンナトリウム)による補充療法
  • 投与量は個々の患者に合わせて調整し、通常は体重1kgあたり1.6〜1.8μgを目安に開始

橋本病による甲状腺機能低下症は、適切なホルモン補充療法により症状の多くが改善しますが、生涯にわたる治療継続が必要です。治療効果の判定や用量調整のため、定期的な血液検査によるTSH・FT4の測定が重要となります。

 

甲状腺のしこりと腫瘍:結節性甲状腺腫の診断と鑑別

甲状腺にしこり(結節)ができる病態は、甲状腺疾患の中でも特に頻度が高く、超音波検査の普及により発見率が上昇しています。このセクションでは、結節性甲状腺腫の種類、診断、および良性・悪性の鑑別について解説します。

 

結節性甲状腺腫の分類
甲状腺の結節は、以下のように分類されます。

  1. 良性腫瘍
    • 濾胞腺腫:最も一般的な良性腫瘍
    • 嚢胞:液体が貯留した袋状の構造
    • オンコサイト腫(Hürthle細胞腫)
  2. 悪性腫瘍(甲状腺がん)
    • 乳頭癌:最も頻度の高い甲状腺がん(約80%)
    • 濾胞癌:悪性度はやや高い(約10%)
    • 髄様癌:C細胞由来の稀な腫瘍
    • 未分化癌:最も悪性度が高い
    • 悪性リンパ腫:甲状腺原発のリンパ腫
  3. 腫瘍様病変
    • 腺腫様甲状腺腫:腺腫に似た良性の結節性病変
    • 甲状腺炎に伴う結節
  4. 機能性結節
    • プランマー病(中毒性単結節性甲状腺腫):結節がホルモンを自律的に産生

結節性甲状腺腫の臨床症状
多くの甲状腺結節は無症状で、健診や他の目的での画像検査で偶然発見されることが多いですが、以下のような症状が現れることもあります。

  • 頸部のしこりの自覚
  • 嚥下時の違和感
  • 頸部圧迫感
  • 嗄声(声のかすれ:悪性の場合、反回神経浸潤の可能性)
  • 頸部リンパ節腫大(転移を伴う悪性の場合)
  • 機能性結節の場合は甲状腺機能亢進症状

良性と悪性の鑑別診断
甲状腺結節の約90%は良性と言われていますが、悪性結節の可能性も考慮した評価が必要です。以下の検査が鑑別に重要です。

  1. 超音波検査:以下の所見は悪性を示唆
    • 境界不明瞭
    • 内部不均一
    • 微細石灰化
    • 形状の不整
    • 血流増加パターン
    • 頸部リンパ節腫大
  2. 細胞診(穿刺吸引細胞診:FNA)
    • Bethesdaシステムによる6段階分類で評価
    • カテゴリーⅠ:不適正/不十分
    • カテゴリーⅡ:良性
    • カテゴリーⅢ:意義不明な異型/濾胞性病変
    • カテゴリーⅣ:濾胞性腫瘍の疑い
    • カテゴリーⅤ:悪性の疑い
    • カテゴリーⅥ:悪性
  3. CT/MRI検査:大きな結節や周囲組織への浸潤評価に有用
  4. 核医学検査:機能性結節の評価に有用

結節性甲状腺腫の治療方針
治療方針は結節の性状や患者要因により異なります。

  • 良性結節
    • 小さく症状のない結節:経過観察
    • 大きな結節や圧迫症状がある場合:手術(部分切除)
    • 機能性良性結節:抗甲状腺薬、放射性ヨウ素治療、手術
  • 悪性結節(甲状腺がん)
    • 乳頭癌・濾胞癌:甲状腺全摘または葉切除+リンパ節郭清
    • 進行例:放射性ヨウ素内用療法の追加
    • 未分化癌:集学的治療(手術、放射線療法、化学療法)

    画像診断技術の向上により、無症状の小さな甲状腺結節が発見される機会が増えています。すべての結節に侵襲的治療が必要なわけではなく、結節の特性に応じた適切な対応が重要です。甲状腺結節の管理においては、内分泌専門医と甲状腺外科医の連携による総合的な診断・治療が求められます。

     

    甲状腺疾患の隠れた症状:リバースT3と機能性医学からの視点

    従来の甲状腺機能検査では見落とされがちな「隠れた甲状腺機能低下症」について、機能性医学の視点から解説します。特に「リバースT3(rT3)」という指標に注目することで、標準的な検査では「正常」とされる患者の潜在的な甲状腺機能異常を発見できる可能性があります。

     

    リバースT3(rT3)とは
    リバースT3は、T4(サイロキシン)から生成される非活性型の甲状腺ホルモン代謝物です。通常、T4は体内で脱ヨード化されて活性型のT3に変換されますが、一部はrT3に変換されます。rT3は細胞レベルでのT3の作用を阻害し、甲状腺ホルモンの活性を抑制する働きがあります。

     

    重要なポイントは、標準的な甲状腺機能検査(TSH、FT3、FT4)が正常範囲内でも、rT3が上昇していると、実質的には「組織レベルでの甲状腺機能低下状態」が生じている可能性があることです。

     

    rT3上昇のメカニズムと影響
    rT3が上昇する主な要因。

    • 慢性的なストレス
    • 炎症
    • 栄養素欠乏(特にセレン、亜鉛など)
    • 重篤な疾患や外傷
    • カロリー制限や飢餓状態
    • 一部の薬剤(コルチコステロイドなど)

    rT3の上昇によりT3の細胞レベルでの効果が阻害されると、以下のような症状が現れることがあります。

    • 慢性的な疲労感
    • 体重増加または減量困難
    • 集中力低下
    • 脱毛
    • 冷え症
    • うつ症状
    • 消化器症状
    • 免疫機能低下

    機能性医学における甲状腺評価
    機能性医学では、甲状腺機能を評価する際に、従来の検査に加えて以下の指標も重視します。

    1. FT3:rT3比:この比率が10:1未満の場合、細胞レベルでの甲状腺ホルモン活性低下を示唆します。検索結果によると、日本人ではこの比率が正常範囲に入る人が少なく、潜在的な甲状腺機能低下状態にある可能性があります。
    2. 体温測定:基礎体温の低下(36.5℃未満)は甲状腺機能低下の間接的な指標となることがあります。
    3. 甲状腺自己抗体:抗TPO抗体や抗サイログロブリン抗体が陽性でも、甲状腺機能が正常範囲内である場合は「無症候性自己免疫性甲状腺炎」と呼ばれ、将来的に顕性の機能低下症に進展するリスクがあります。

    "隠れ甲状腺機能低下症"への対応
    標準的な検査で甲状腺機能が正常でも持続的な症状がある場合、以下のアプローチが考えられます。

    1. 包括的な甲状腺検査:rT3の測定、FT3:rT3比の評価(日本では自費検査となることが多い)
    2. 栄養サポート
      • セレン:T4からT3への変換に必要
      • 亜鉛:甲状腺ホルモン受容体の機能に関与
      • ヨウ素:適切な量の摂取が重要(過剰も不足も問題)
      • ビタミンD:甲状腺機能と免疫調整に関与
    3. ストレス管理:慢性的なストレスはコルチゾール上昇を介してrT3を増加させるため、ストレス軽減法の実践
    4. 炎症の管理:抗炎症作用のある食事や生活習慣の改善
    5. 専門医との連携:機能性医学に精通した医師との相談

    甲状腺機能の適切な評価には、単に血中ホルモン濃度だけでなく、細胞レベルでのホルモン活性や変換効率も考慮する必要があります。特に原因不明の慢性疲労や代謝障害を訴える患者では、rT3を含む包括的な甲状腺評価が有用である可能性があります。

     

    北米の統合医療クリニックではrT3の測定が一般的になっていますが、日本ではまだ普及していない現状があります。しかし、甲状腺機能の細胞レベルでの評価は、従来の検査では見落とされがちな患者の症状解明に貢献する可能性があります。

     

    甲状腺疾患の診断と治療:最新のアプローチと注意点

    甲状腺疾患の診断と治療は、医学の進歩とともに日々進化しています。このセクションでは、現在の標準的な診断・治療アプローチと、臨床現場で注意すべきポイントについて解説します。

     

    甲状腺疾患の診断
    甲状腺疾患の診断プロセスは、通常以下のステップで進められます。

    1. 問診と身体診察
      • 家族歴(甲状腺疾患は遺伝的要因が関与することが多い)
      • 詳細な症状の確認
      • 頸部の視診・触診(甲状腺の大きさ、硬さ、圧痛の有無)
      • 全身症状の評価
    2. 血液検査
      • 一次検査:TSH、FT4
      • 二次検査:FT3、抗TPO抗体、抗サイログロブリン抗体
      • 疑われる疾患に応じた追加検査:TRAb(バセドウ病)、サイログロブリン(甲状腺癌)など
    3. 画像診断
      • 超音波検査:最も基本的な画像検査(結節の検出、血流評価など)
      • CT/MRI:進行した疾患や周囲への浸潤評価
      • 甲状腺シンチグラフィ:機能性病変の検出
    4. 細胞診・組織診
      • 穿刺吸引細胞診(FNA):結節の良悪性評価に重要
      • コア生検:細胞診で診断が困難な場合

    治療選択の考え方
    甲状腺疾患の治療は、疾患の種類、重症度、患者の全身状態などを考慮して個別化する必要があります。

     

    1. 薬物療法
      • 甲状腺機能亢進症:抗甲状腺薬(MMI/PTU)、β遮断薬
      • 甲状腺機能低下症:レボチロキシンによる補充療法

      薬物療法の注意点

      • 抗甲状腺薬:無顆粒球症などの重篤な副作用の可能性
      • レボチロキシン:過量投与による不整脈リスク
      • 高齢者では少量から開始し慎重に増量
    2. 放射性ヨウ素治療
      • バセドウ病や機能性結節に有効
      • 甲状腺癌の術後残存組織・転移巣の除去

      放射性ヨウ素治療の注意点

      • 治療後の永続的な甲状腺機能低下症
      • 妊婦・授乳婦には禁忌
      • 治療後一定期間の隔離が必要(国内規制に準拠)
    3. 手術療法
      • 大きな良性結節:圧迫症状緩和のための部分切除
      • 甲状腺癌:全摘または葉切除+リンパ節郭清
      • 薬物治療抵抗性バセドウ病:亜全摘または全摘

      手術療法の注意点

    特殊な状況での管理

    1. 妊娠と甲状腺疾患
      • 妊娠中の甲状腺機能は胎児発育に影響
      • バセドウ病:PTU(第1三半期)またはMMI(第2、3三半期)で慎重に治療
      • 橋本病:適切なレボチロキシン補充で胎児神経発達障害を予防
      • 産後甲状腺炎:一過性の機能亢進から機能低下への推移に注意
    2. 小児の甲状腺疾患
      • 甲状腺ホルモンは神経発達に重要
      • 先天性甲状腺機能低下症:早期発見・早期治療が不可欠
      • 小児バセドウ病:薬物療法が第一選択
    3. 高齢者の甲状腺疾患
      • 非典型的な症状が多い(無症状のことも)
      • 認知機能障害や心機能への影響に注意
      • 薬物療法は少量から慎重に開始

    甲状腺疾患管理の最新トレンド

    1. 甲状腺結節の経過観察基準の変更
      • 超音波検査の精度向上により、小さな良性結節は積極的な介入より経過観察が主流に
      • 微小乳頭癌(1cm以下)は即手術ではなく経過観察選択肢も(慎重な適応判断が必要)
    2. 分子生物学的診断
      • 細胞診で判定困難な結節に対する遺伝子変異検査
      • BRAF、RAS、RET/PTC、PAX8/PPARγなどの変異解析
    3. 薬物治療の個別化
      • 遺伝的背景や年齢に応じた投与量調整
      • 併存疾患を考慮した薬剤選択

    甲状腺疾患の管理において重要なのは、検査値だけでなく患者の症状や生活の質を総合的に評価することです。とりわけ「サブクリニカル(潜在性)」と呼ばれる軽度の機能異常では、治療介入の是非を慎重に検討する必要があります。甲状腺専門医と他科(循環器科、産婦人科、精神科など)との連携も、複雑な症例の管理には不可欠です。

     

    甲状腺疾患は適切な診断と治療により、多くの場合良好なコントロールが可能です。患者教育と定期的なフォローアップが長期的な管理の鍵となります。