放射性ヨウ素治療における副作用は大きく2つの種類に分けられます 。第一の副作用は、治療前に行う甲状腺ホルモン剤の中止によって生じる甲状腺機能低下症状です 。
参考)放射線治療(ヨウ素治療)
具体的な症状として、以下のようなものが現れます。
これらの症状は治療の4週間前から甲状腺ホルモン剤(チラーヂンなど)の服用を中止するために起こります 。幸い、これらの症状は治療後にホルモン剤の服用を再開することで次第に改善していきます 。
参考)https://housya.hiroshima-u.ac.jp/medical/disease201310.pdf
バセドウ病の場合は、治療後1〜2ヶ月頃から徐々に症状が改善し、首の腫れが軽減してきます 。しかし、放射線の影響で甲状腺ホルモンの分泌量が低下しすぎた場合、永続的な甲状腺機能低下症になる可能性があります 。
参考)https://www.pdradiopharma.com/wpeptip/wp-content/themes/wpeptip/_assets/docs/pdf/hcw/imagedb/ptt3_0.pdf
内服した放射性ヨウ素は病変に取り込まれるだけでなく、消化管や耳下腺などの唾液腺にも取り込まれるため、さまざまな副作用が現れます 。
参考)甲状腺癌の放射性ヨード治療
主な消化器系と唾液腺系の副作用。
これらの症状は放射性ヨウ素摂取後しばらくしてから出現し、一般的には一過性です 。ほとんどの場合、時間の経過とともに改善しますが、ヨウ素治療を何度も繰り返した患者では、味覚の変化や唾液の出にくさが残る場合もあります 。
頻度は稀ですが、放射性ヨウ素治療では血液系やアレルギー系の副作用も報告されています 。
血液系の副作用として以下が挙げられます。
アレルギー系反応として。
これらの副作用の発生頻度は非常に低いものの、治療前には十分な問診と既往歴の確認が重要です。特に若年者に対するアイソトープ治療は、成人より甲状腺癌発生の可能性が高いことが報告されているため、慎重な適応判断が必要です 。
放射性ヨウ素治療の長期的な副作用として、二次発癌のリスクが極めて小さな確率で存在します 。しかし、このリスクと比較して本治療により得られる治療利益の方が勝ると考えられています 。
妊娠・出産への影響については、以下の点が重要です。
最新の研究では、ヨウ素摂取量が多い日本のような地域では、従来考えられていたほど厳格なヨウ素制限は必要でない可能性が示唆されています 。2024年の名古屋大学の研究によると、治療時の尿中ヨウ素濃度と成功率に関連がないことが明らかになりました 。
参考)ヨウ素摂取量が多い地域におけるバセドウ病放射性ヨウ素内用療法…
また、甲状腺がん患者に対する放射性ヨウ素治療の安全性について、継続的なモニタリングが実施されており、九州大学病院では1984年から年間150〜180人の患者が治療を受けている実績があります 。
放射性ヨウ素治療後は、体内の放射性物質が基準値以下になるまで特別な注意が必要です 。
参考)https://oncology.jsnm.org/sites/default/files/pdf/thyroid-guideline_2018-06.pdf
治療直後の制限事項。
退院後の生活制限。
食事制限の継続。
治療後も一定期間、ヨウ素を含む食品の制限が必要です :
これらの制限により、放射性ヨウ素が効率的に病変部に集積し、治療効果を最大化できます。また、周囲への放射線影響を最小限に抑えることで、安全な治療環境を維持できます 。