シンチグラフィは、放射性同位元素(ラジオアイソトープ)で標識された薬剤を体内に投与し、放出される放射線を画像化することで薬剤の分布を調べる検査です。放射性医薬品の種類によって、どの臓器に分布し、どのような機能を反映するかが決まり、検査の種類が異なります。
参考)http://www.med.kagawa-u.ac.jp/hosp/shinryoka/hosyasenbu/Bumon/RI/
✅ シンチグラフィの主な種類
通常の単純X線写真やCTなどが体の構造を調べる形態診断であるのに対し、シンチグラフィでは体の機能や病気の活動性などを調べることができる質的診断が特徴的です。撮影は静態画像・動態画像・全身画像に分類され、それぞれ異なる診断情報を提供します。
参考)https://www.radiol.med.kyushu-u.ac.jp/medicalcare/nuclear-medicine/spect.html
静態画像は骨シンチ、甲状腺シンチ、肺換気・血流シンチなど様々な検査に使用され、動態画像は目的臓器への放射性医薬品の取り込みや洗い出し程度を算出する際に用いられます。腎機能シンチや胆道シンチなどでは、この動態画像が重要な役割を果たします。
SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)は、シンチグラフィの断層撮影技術であり、異常に薬剤が集まっている部位をより詳しく見ることができます。ガンマカメラが体のまわりを回転しながら撮影を行い、放射性医薬品の分布を断層像として描出するのが特徴です。
参考)https://himeji.hosp.go.jp/dep/radiology/spect.html
🔄 SPECTの撮影プロセス
従来のシンチグラフィが平面的な画像しか得られないのに対し、SPECTでは各方向からの断層像を得ることで、深部の3次元的な情報を知ることができます。これにより、重複した臓器の影響を受けずに、特定部位の機能を詳細に評価することが可能となります。
SPECTは主に脳血流、心臓、腫瘍の検査に適用され、体の外から放射線をかけて得られる透過像とは異なり、身体から放出される放射線を計測して画像を作成することが特徴的です。このため、十分なデータを得るにはある程度の撮像時間を要します。
参考)https://www.hosp.jihs.go.jp/s037/010/080/010/index.html
検査時間と手順において、シンチグラフィとSPECTには明確な違いがあります。シンチグラフィの撮影時間は概ね20-40分程度ですが、SPECTでは30分程度の撮影時間が必要です。
📋 検査手順の比較
薬剤の投与は主に静脈注射によって行われ、注射の痛みはありますが撮影中は安静に寝ているだけです。薬剤による副作用は極めて少なく、安心して受けることができる検査とされています。
検査の目的や利用する薬剤の種類によって検査方法や時間、撮影部位が変わり、患者への食止めや遮光・遮音などの前処置、撮影回数も検査ごとに異なります。骨シンチグラフィでは午前中に薬剤を注射し、午後から撮影を行うのが一般的な流れです。
近年導入されているSPECT-CT装置は、従来のSPECT装置にCTを融合させた革新的な技術です。シンチグラフィーの機能画像にCTによる解剖学的画像を融合して、核医学画像の診断精度の向上が期待されています。
参考)https://www2.khsc.or.jp/shinryouka-bumon/kyoku/iryougijutsukyoku/kakuigaku/
🏥 SPECT-CTの技術的利点
SPECT装置と臨床用マルチスライスCT装置を一体化させた装置により、同一の寝台でSPECT画像とほぼ同じタイミングでCT画像を高速撮影することができるため、非常に高い精度でSPECTとCTの位置合わせ画像を得ることができます。
2017年に導入されたDiscovery 670DRなどの最新機種では、診断用16ch multi detector CTを搭載しており、高速撮影が可能かつより精細な位置画像の提供が期待されています。一方で、検査時間が若干長くなる(CT撮影の2~3分)というデメリットも存在します。
シンチグラフィとSPECTは、それぞれ異なる臨床応用分野で活用されており、診断目的に応じて使い分けが行われています。シンチグラフィは全身検索が簡単で、治療後の効果判定や経過観察に有効であることが特徴です。
🎯 骨シンチグラフィの主な適応
SPECTは特に脳血流、心臓、腫瘍の検査において威力を発揮します。脳血流シンチグラフィでは、CTやMRIのような脳の形態観察とは異なり、脳全体の血流が保たれているかを観察できるため、脳血管障害など様々な脳疾患に適用されています。
心筋シンチグラフィでは、心臓の血流、脂肪酸代謝、交感神経機能などの低下している部分を評価することができ、特に血流の評価をする場合は運動または薬剤により心臓に負荷をかけて行われます。近年では社会問題となっている認知症の診断にも使用されるようになり、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、血管性認知症、前頭側頭認知症等の鑑別診断において重要な役割を果たしています。
参考)https://g.kawasaki-m.ac.jp/dept/tyuouhousyasen/spect.html