糖尿病治療薬は、大きく分けて経口血糖降下薬と注射薬の2種類があります。現在、日本国内では7つのカテゴリーの経口血糖降下薬およびインスリン、GLP-1受容体作動薬が糖尿病治療薬として使用可能となっています。
これらの治療薬は血糖値を下げる作用機序によって、以下のように分類されます。
糖尿病の治療は、食習慣や運動習慣などの生活習慣の改善が基本です。それでも血糖コントロールが不良の場合、合併症の発症予防を目的に薬物療法が開始されます。個々の患者の病態、生活スタイル、嗜好などに合わせて薬剤を選択することで、アドヒアランスや治療効果の向上が期待できます。
インスリン分泌促進系の薬剤は、膵臓からのインスリン分泌を直接的または間接的に促進することで血糖値を下げます。主な種類と特徴は以下の通りです。
1. スルホニル尿素薬(SU薬)
経口血糖降下薬の中で最も長い歴史があり、使用実績も豊富です。
2. 速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)
3. DPP-4阻害薬
4. イメグリミン(ツイミーグ)
インスリン分泌非促進系の薬剤は、インスリンの分泌を直接促進せずに血糖値を下げる薬剤です。インスリン抵抗性を改善したり、糖の吸収や排泄を調節したりすることで効果を発揮します。
1. ビグアナイド薬
2. チアゾリジン薬
3. α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)
4. SGLT2阻害薬
経口薬での血糖コントロールが困難な場合や、特定の病態の患者には注射薬が選択されます。主な注射薬には、インスリン製剤とGLP-1受容体作動薬があります。
1. インスリン製剤
インスリン製剤は作用時間の違いによって以下のように分類されます。
2. GLP-1受容体作動薬
糖尿病治療薬の選択は患者の病態や特性に合わせて個別化する必要があります。薬剤選択の際に考慮すべき点と、近年注目されている配合剤について解説します。
薬剤選択の考慮点
最新の配合剤
近年、服薬アドヒアランス向上のために、複数の薬剤を1つの錠剤にした配合剤が増えています。主な配合剤には以下のようなものがあります。
配合剤のメリットは、服用する薬剤の種類や回数が減少し、服薬遵守率(コンプライアンス)の向上が期待できることです。一方、個々の薬剤の用量調整が難しくなるというデメリットもあります。
最新の治療戦略
近年の糖尿病治療は、単に血糖値を下げるだけでなく、心血管イベントや腎機能低下のリスク軽減も考慮した治療戦略が重視されています。特にSGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬は、大規模臨床試験で心血管イベント抑制効果や腎保護効果が示されており、動脈硬化性心血管疾患や慢性腎臓病を合併する糖尿病患者に対して積極的な使用が推奨されるようになっています。
また、インスリン製剤の進化も目覚ましく、より低血糖リスクの少ない持効型インスリンや、自己注射の負担を軽減する週1回製剤なども登場しています。
糖尿病治療は日進月歩で進化しており、患者一人ひとりの病態やライフスタイルに合わせた個別化医療の重要性がますます高まっています。最適な治療薬の選択には、専門医との綿密な相談が不可欠です。