アプルウェイ デベルザ 違い | SGLT2阻害薬トホグリフロジン製品比較

SGLT2阻害薬トホグリフロジンの2つのブランド、アプルウェイとデベルザの違いを詳しく解説。製薬会社、薬価、臨床データから使い分けまで、医療従事者が知るべき情報を網羅。実際の処方選択に迷った時の判断基準は何でしょうか?

アプルウェイ デベルザ 違い

アプルウェイとデベルザの基本情報
💊
同一成分・異なるブランド

両者ともトホグリフロジン水和物20mgを含有するSGLT2阻害薬

🏢
製薬会社の違い

アプルウェイはサノフィ、デベルザは興和が販売

💰
薬価・コスト

同一薬価で患者負担に差はなし

アプルウェイ デベルザの成分と基本特性

アプルウェイ錠20mgとデベルザ錠20mgは、どちらもトホグリフロジン水和物20mgを有効成分とするSGLT2阻害薬です。両製品は2014年3月24日に厚生労働省から同時承認を受け、同年5月に発売開始されました。
参考)http://www.interq.or.jp/ox/dwm/se/se39/se3969021.html

 

📋 基本情報の比較

  • 有効成分: トホグリフロジン水和物20mg(両製品共通)
  • 効能・効果: 2型糖尿病(両製品共通)
  • 用法・用量: 1日1回朝食前または朝食後経口投与(両製品共通)
  • 薬効分類: 糖尿病用剤/SGLT2阻害剤/選択的SGLT2阻害剤

トホグリフロジンは、腎尿細管におけるグルコース再吸収を制御するSGLT2に対し選択的・可逆的に阻害する作用機序を有します。インスリンを介さずに血糖降下作用を発揮するため、低血糖リスクが低く、体重減少効果も期待できる特徴があります。
参考)https://dm-rg.net/news/2014/03/014481.html

 

国内で実施された第3相臨床試験では、HbA1c値の有意な低下が認められ、良好な忍容性も確認されています。半減期は約5時間と比較的短時間ですが、1日1回投与で十分な効果を示します。
参考)https://dm-net.co.jp/calendar/2015/023325.php

 

アプルウェイ デベルザの製薬会社と販売戦略

アプルウェイとデベルザの最も大きな違いは、販売元の製薬会社にあります。アプルウェイ錠20mgはサノフィ株式会社、デベルザ錠20mgは興和株式会社がそれぞれ販売しています。
参考)https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20200217113000_950.html

 

🏢 販売体制の特徴

  • アプルウェイ(サノフィ):
    • グローバル製薬企業としての豊富な糖尿病領域経験
    • 他のSGLT2阻害薬との差別化戦略
    • 医療従事者向け情報提供システムの充実
  • デベルザ(興和):

    興味深いことに、興和は発売時から3ヵ月間でデベルザを投与された65歳以上の2型糖尿病患者1,535例を対象とした大規模な特定使用成績調査を実施しており、製造販売後早期の安全性・有効性データを蓄積しています。この調査では中止・脱落率が27.92%で、主な理由は有害事象(10.60%)、効果不十分(6.25%)でした。
    両社とも医療従事者向けの情報提供には力を入れていますが、サノフィは国際的なエビデンスを、興和は国内の実臨床データを重視する傾向があります。

     

    アプルウェイ デベルザの薬価と経済性比較

    薬価の観点から見ると、アプルウェイとデベルザに差は存在しません。両製品ともトホグリフロジン水和物20mgとして同一の薬価が設定されており、患者の自己負担額に違いはありません。
    💰 経済性の考察

    • 薬価: 両製品とも同額(薬価基準収載時)
    • ジェネリック: 現在複数のジェネリック医薬品が発売済み
    • 処方量: 1日1回投与のため、服薬コンプライアンス向上によるコスト効果
    • 併用療法: 他の糖尿病治療薬との組み合わせによる総合的な治療コスト

    SGLT2阻害薬の特徴として、尿糖排泄による血糖降下作用のため、体重減少効果や血圧降下作用といった付加的なメリットがあります。これらの効果により、肥満や高血圧を合併する2型糖尿病患者では、トータルでの医療費削減につながる可能性があります。
    参考)https://ims-kinen.com/wp-uploads/2015_02.pdf

     

    また、トホグリフロジンには尿酸降下作用があり、他のSGLT2阻害薬との大きな違いとなっています。高尿酸血症を合併する糖尿病患者では、別途尿酸降下薬を処方する必要がなくなる場合があり、処方薬剤数の削減による経済効果も期待できます。

    アプルウェイ デベルザの臨床効果と安全性プロファイル

    臨床効果と安全性に関して、アプルウェイとデベルザは同一成分のため、基本的に同等の効果と副作用プロファイルを示します。ただし、製造過程や添加物の違いにより、わずかな差が生じる可能性があります。
    📊 臨床効果の特徴

    • HbA1c低下: プラセボと比較して有意な改善
    • 体重減少: 約2-3kgの体重減少効果
    • 血圧降下: 収縮期血圧5-10mmHg程度の低下
    • 尿酸値: 他のSGLT2阻害薬にない尿酸降下作用

    ⚠️ 主な副作用と注意点

    • 尿路・性器感染症: 尿糖増加により感染リスク上昇
    • 脱水・低血圧: 利尿作用による体液量減少
    • ケトアシドーシス: まれだが重篤な副作用
    • 皮膚症状: 発疹、掻痒感など

    興和が実施した高齢者対象調査では、65歳以上の患者1,472例中、有害事象による中止が10.60%で観察されました。高齢者では特に脱水や尿路感染のリスクが高いため、慎重な観察が必要です。
    トホグリフロジンの半減期は約5時間と短めですが、その代謝産物も含めた薬物動態を考慮すると、1日1回投与で安定した血糖コントロール効果を維持できます。

    アプルウェイ デベルザの処方選択と使い分けの実践的考察

    実臨床においてアプルウェイとデベルザのどちらを選択するかは、多くの場合、医療機関の採用医薬品や医師の処方習慣によって決まります。しかし、患者個別の状況を考慮した選択基準も存在します。

     

    🎯 処方選択の実践的指針
    患者背景による考慮点:

    • 高齢患者: 興和の高齢者調査データが豊富なデベルザを選択する医師もいる
    • 併存疾患: 高尿酸血症合併例では尿酸降下作用を重視
    • 服薬指導: 製薬会社のサポート体制の違いを考慮
    • 院内フォーミュラリー: 医療機関の採用状況

    臨床現場での特殊な使い方:
    一部の医療機関では、トホグリフロジンの隔日投与についても検討されています。これは副作用軽減や高齢者での安全性向上を目的とした投与法で、195例の検討では有効性と安全性が確認されています。
    将来展望と研究動向:
    SGLT2阻害薬は心血管イベント抑制効果や腎保護効果など、血糖降下作用を超えた多面的効果が注目されています。アプルウェイ・デベルザも含めたトホグリフロジンについて、これらの心腎保護効果に関するエビデンス蓄積が期待されます。

     

    処方医にとって重要なのは、両製品が同一成分であることを理解した上で、患者個々の状況、医療機関の体制、製薬会社のサポート内容などを総合的に判断することです。最終的には患者の血糖コントロール改善と安全性確保が最優先となります。