酸塩基平衡の異常は、血液のpH値が正常範囲(7.35-7.45)を逸脱する状態として定義されます。アシドーシスは平衡を酸性側にしようとする状態で、血液中に酸が増えすぎるか塩基が少なくなりすぎることで生じ、pH値が7.4未満に低下します。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%B7%E3%83%89%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%81%A8%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%82%AB%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%82%B9
一方、アルカローシスは平衡を塩基性側にしようとする状態で、血液中に塩基が増えすぎるか酸が少なくなりすぎることで起こり、pH値が7.4以上に上昇します。
参考)https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/12-%E3%83%9B%E3%83%AB%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%81%A8%E4%BB%A3%E8%AC%9D%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E9%85%B8%E5%A1%A9%E5%9F%BA%E5%B9%B3%E8%A1%A1/%E9%85%B8%E5%A1%A9%E5%9F%BA%E5%B9%B3%E8%A1%A1%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81
これらの病態はそれぞれ以下の4つに分類されます:
参考)https://knowledge.nurse-senka.jp/216184/
血中のpHが中性から酸性に傾いた状態をアシデーミア、アルカリ性に傾いた状態をアルカレーミアと呼び、これは血液ガス検査により診断されます。
アシドーシスの症状は重篤度により段階的に現れます。軽度では倦怠感や頭痛が認められ、中等度では吐き気、嘔吐、意識障害が生じます。重症化すると呼吸困難、ショック状態、最終的には昏睡に至る可能性があります。
参考)https://kanri.nkdesk.com/naika/alca.php
呼吸性アシドーシスの主な原因と病態。
PaCO2が正常値40mmHgを超える状態で、CO2の排出障害により細胞内に炭酸が蓄積し、pH低下を引き起こします。
代謝性アシドーシスの病態分類。
興味深いことに、代謝性アシドーシスでは細胞内外のカリウム移動が生じ、通常は高カリウム血症を伴います。しかし、AG上昇型では有機酸が細胞内に同時移動するため、カリウム排出が起こりにくいという特異的な病態を示します。
アルカローシスの症状は神経筋の興奮性亢進が特徴的です。軽度では手足のしびれや筋肉のけいれん、中等度では錯乱状態やテタニー様症状、重度では意識障害や呼吸抑制が生じます。
呼吸性アルカローシスの原因。
過換気により過剰にCO2が排出され、PaCO2が40mmHg未満に低下します。治療として古典的に用いられるペーパーバッグ法は、吐き出したCO2を再吸入することで症状改善を図ります。
代謝性アルカローシスの病因。
代謝性アルカローシスは通常、過剰な塩基が尿中へ排泄されるため発症しにくいとされていますが、体液量減少や電解質異常が併存すると持続します。
参考)https://guides.lib.kyushu-u.ac.jp/c.php?g=774919amp;p=5559691
注目すべき点として、アルカローシスでは低カリウム血症を伴うことが多く、これは細胞内へのカリウム移動と腎からの喪失増大によるものです。
血液ガス分析による診断は系統的な5ステップアプローチが確立されています:
参考)https://www.med.nagoya-u.ac.jp/general/img/uploads/2017/08/5bab75759611ab201cd5c496bb23627c.pdf
ステップ1:pH評価
ステップ2:一次異常の特定
アシデーミアの場合。
ステップ3:アニオンギャップ計算
AG = Na+ - (Cl- + HCO3-)
正常値:12±2 mEq/L
代謝性アシドーシスの鑑別において極めて重要で、AG上昇型と正常型で原因疾患が大きく異なります。
ステップ4:代償反応の評価
代謝性アシドーシスの場合。
予測PaCO2 = 40 - 1.3 × ΔHCO3-
実測値が予測範囲内であれば適切な代償、逸脱すれば混合性異常を示唆します。
参考)http://square.umin.ac.jp/seedbook/AB.html
ステップ5:補正計算
AG上昇時のみ。
補正HCO3- = HCO3- + ΔAG (ΔAG = AG - 12)
これにより潜在する代謝性アルカローシスの検出が可能になります。
診断精度向上のため、臨床症状と併せた総合的判断が不可欠です。
治療の基本原則は原因疾患の根治と対症療法の組み合わせです。緊急度の高い病態では迅速な介入が生命予後を左右します。
呼吸性アシドーシス治療。
代謝性アシドーシス治療。
呼吸性アルカローシス治療。
代謝性アルカローシス治療。
電解質補正は段階的に行い、特にカリウム異常の是正は不整脈予防のため優先されます。モニタリングにおいては、血液ガス検査の連続測定による治療効果判定と、腎機能・電解質バランスの定期評価が重要です。
治療抵抗性の場合は混合性異常の可能性を考慮し、再評価と治療戦略の見直しを行います。