テラゾシン添付文書の効能効果から用法用量まで

テラゾシンの添付文書情報を詳しく解説。α1遮断薬としての効能効果、用法用量、副作用について医療従事者向けに網羅的に説明します。服薬指導で押さえるべきポイントとは?

テラゾシン添付文書の概要

テラゾシン基本情報
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一般名・分類

テラゾシン塩酸塩水和物・持続性α1遮断薬

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主要効能

高血圧症・前立腺肥大症に伴う排尿障害

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処方区分

処方箋医薬品(医師等の処方箋により使用)

テラゾシン(商品名:バソメット錠など)は、持続性α1遮断薬として分類される処方箋医薬品です。α1アドレナリン受容体を選択的に遮断することで、血管平滑筋や前立腺平滑筋の収縮を抑制し、降圧作用および排尿障害改善作用を発揮します。
参考)https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00048539

 

薬効分類番号:2149
ATCコード:G04CA03
規格:0.25mg、0.5mg、1mg、2mgの4規格が販売されています。
テラゾシンの分子式はC19H25N5O4・HCl・2H2Oで、白色から微黄白色の結晶性粉末として存在します。水にやや溶けにくく、メタノールまたはエタノールに溶けにくい性質を持ちます。

テラゾシン添付文書の効能効果

テラゾシンの効能効果は大きく4つに分類されています:
参考)https://www.carenet.com/drugs/category/antihypertensives/2149023F1030

 

  1. 本態性高血圧症
  2. 腎性高血圧症
  3. 褐色細胞腫による高血圧症
  4. 前立腺肥大症に伴う排尿障害

α1受容体遮断作用により、血管平滑筋の収縮を抑制して血管拡張を促し、血圧を低下させます。また、前立腺や尿道の平滑筋を弛緩させることで、前立腺肥大症による排尿困難、頻尿、尿意切迫感などの症状を改善します。

 

効能に関連する重要な注意として、前立腺癌による排尿障害と前立腺肥大症に伴う排尿障害を鑑別することが必要です。前立腺特異抗原(PSA)値測定などの検査を実施し、適切な診断のもとで使用する必要があります。
興味深いことに、近年の研究では、テラゾシンがα1受容体遮断以外にも、phosphoglycerate kinase 1(PGK1)という解糖系酵素に結合し、ATP産生を促進する作用があることが発見されています。この作用により、神経変性疾患の進行抑制効果も期待されており、パーキンソン病患者での臨床試験も実施されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4412158/

 

テラゾシン添付文書の用法用量詳細

テラゾシンの用法用量は、適応疾患によって異なる設定がされています:
参考)https://hokuto.app/medicine/zcVN5v78uOjJGhCkKXL7

 

高血圧症の用法用量

  • 初回投与:1日0.5mg(1回0.25mg×2回/日)から開始
  • 維持量:効果不十分時は1日1〜4mgまで漸増
  • 最高投与量:1日8mgまで
  • 投与回数:1日2回分割経口投与

前立腺肥大症に伴う排尿障害の用法用量

  • 初回投与:1日1mg(1回0.5mg×2回/日)から開始
  • 維持量:1日2mgに漸増
  • 投与回数:1日2回分割経口投与

用法用量で最も重要なのは、初回投与量の設定です。テラゾシンは初回投与時に起立性低血圧や失神を起こすリスクがあるため、必ず少量から開始し、患者の反応を慎重に観察しながら段階的に増量する必要があります。

 

薬物動態の特徴
健康成人における薬物動態パラメータは以下の通りです:

  • 最高血中濃度到達時間(tmax):0.83〜1.00時間
  • 消失半減期(t1/2):α相 1.80〜2.74時間、β相 10.11〜18.70時間

二相性の消失パターンを示し、比較的長い半減期を有することが1日2回投与の根拠となっています。

 

テラゾシン添付文書の副作用プロファイル

テラゾシンの副作用は、その薬理作用に関連したものが多く見られます:
参考)https://medpeer.jp/drug/d1941

 

重大な副作用

  1. 意識喪失(頻度不明)
    • 血圧低下に伴う一過性意識喪失
    • 特に初回投与時や増量時に注意
  2. 肝機能障害・黄疸(0.1%未満)
    • AST、ALT、ALP、LDH上昇を伴う
    • 定期的な肝機能モニタリングが必要

その他の副作用(発現頻度別)
0.1〜5%未満

  • 精神神経系:めまい、頭痛、倦怠感、脱力感、発汗、不眠
  • 循環器:立ちくらみ、動悸、浮腫、不整脈、胸痛
  • 消化器:腹痛、下痢、便秘、悪心、嘔吐
  • その他:ほてり、鼻閉、息切れ、目の違和感

0.1%未満

  • 循環器:低血圧、起立性低血圧、頻脈
  • 泌尿器:尿失禁、頻尿
  • その他:貧血、インポテンス、羞明

副作用管理で特に重要なのは、初回投与症候群の予防です。就寝前投与や起立時の注意喚起など、患者指導が欠かせません。

 

テラゾシン添付文書の相互作用と禁忌

重要な薬物相互作用

  1. 降圧作用を有する他の薬剤
    • 相加的な降圧作用増強
    • 用量調節が必要
  2. ホスホジエステラーゼ5阻害剤(PDE5阻害剤)

禁忌事項
明確な禁忌は添付文書に記載されていませんが、以下の患者では慎重投与が必要です。

  • 重篤な肝機能障害患者
  • 重篤な腎機能障害患者
  • 起立性低血圧の既往がある患者
  • 高齢者(75歳以上では特に慎重に)

特別な注意を要する患者群
妊婦・授乳婦では、治療上の有益性が危険性を上回る場合のみ投与を検討します。小児等への安全性は確立されていません。

 

高齢者では、一般に過度の降圧は好ましくないとされ、患者の状態を観察しながら慎重に投与する必要があります。

 

テラゾシン添付文書に基づく服薬指導のポイント

医療従事者が患者に対して行うべき服薬指導の重要ポイントをまとめます。
初回投与時の指導

  • 就寝前または安静時の服用を推奨
  • 服用後は急な起立を避ける
  • めまいや立ちくらみが生じた場合の対処法
  • 初回投与後は外出や運転を控える

継続投与中の注意点

  • 定期的な血圧測定の重要性
  • 起立性低血圧予防のためのゆっくりとした動作
  • アルコールとの併用による低血圧増強リスク
  • 脱水状態(下痢、嘔吐、発汗過多時)での注意

症状改善の評価時期
高血圧症では投与開始から2〜4週間、前立腺肥大症に伴う排尿障害では4〜12週間程度で効果判定を行います。

 

中止時の注意
テラゾシンには明確な反跳現象は報告されていませんが、急激な中止は避け、段階的な減量を検討することが望ましいとされています。

 

患者への生活指導

  • 塩分制限などの生活習慣改善の併行
  • 定期的な前立腺癌スクリーニング(PSA測定)
  • 肝機能検査値のモニタリング協力

これらの服薬指導を適切に実施することで、テラゾシンの治療効果を最大化し、副作用リスクを最小限に抑えることが可能になります。