起立性低血圧の高齢者における対処法と管理

起立性低血圧の高齢者対処法

起立性低血圧の高齢者における症状と診断基準

起立性低血圧は高齢者に特に多い症状で、立ち上がり時の血圧低下により脳血流が減少し、めまいや失神を引き起こす疾患です 。高齢者における起立性低血圧の有病率は15-25%と高く、80歳以上では約34%にまで上昇すると報告されています 。
参考）https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8140709/

 

診断基準として、収縮期血圧20mmHg以上または拡張期血圧10mmHg以上の低下が立位後3分以内に認められる場合に起立性低血圧と診断されます 。検査では、5分間の臥位安静後に立位血圧測定を行い、1分後、3分後、5分後の血圧と脈拍を測定します 。
参考）起立性低血圧 - 04. 心血管疾患 - MSDマニュアル …

 

高齢者では、血管の弾力性低下や自律神経機能の衰えにより、血圧調整機能が低下しているため、起立性低血圧を発症しやすくなります 。症状としては、立ちくらみ、めまい、眼前暗黒感、失神、頭痛、全身脱力感などが現れ、特に午前中に症状が出現しやすいとされています 。
参考）https://kango-oshigoto.jp/hatenurse/article/775/

 

起立性低血圧の高齢者における原因と病態生理

高齢者の起立性低血圧には複数の原因が複雑に関与しており、主要な原因として自律神経障害、薬物の副作用、循環血液量の低下、心血管疾患が挙げられます 。
参考）起立性低血圧:原因は？診断は？対処法や治療は？ href="https://www.premedi.co.jp/%E3%81%8A%E5%8C%BB%E8%80%85%E3%81%95%E3%82%93%E3%82%AA%E3%83%B3%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3/h01875/" target="_blank">https://www.premedi.co.jp/%E3%81%8A%E5%8C%BB%E8%80%85%E3%81%95%E3%82%93%E3%82%AA%E3%83%B3%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3/h01875/amp;#8211…

 

自律神経系の異常が最も重要な原因であり、交感神経と副交感神経のバランス崩れにより血圧調整がうまく機能しなくなります 。パーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症、糖尿病性末梢神経障害などの神経変性疾患が関与することも多く報告されています 。
参考）起立性低血圧 href="https://maruoka.or.jp/cardiovascular/cardiovascular-disease/orthostatic-hypotension/" target="_blank">https://maruoka.or.jp/cardiovascular/cardiovascular-disease/orthostatic-hypotension/amp;#8211; 循環器の疾患

 

薬物による副作用も重要な原因の一つで、降圧薬、利尿薬、血管拡張薬などが起立性低血圧を誘発します 。高齢者では多剤併用が多いため、薬剤の見直しが重要となります。
参考）起立性低血圧とは？治し方や原因、症状、セルフチェックについて…

 

脱水状態や循環血液量の低下も高齢者で頻繁に見られる原因で、体内水分が不足すると血液量が減少し血圧が下がりやすくなります 。加齢に伴う腎機能低下や食事摂取量の減少、利尿薬の使用などが関与します。
参考）意外と多い？ふらつきの原因　起立性低血圧

 

起立性低血圧の高齢者における非薬物療法と生活指導

起立性低血圧の治療において、非薬物療法が治療の基本となり、特に高齢者では副作用のリスクを考慮して優先的に実施されます 。
参考）起立性低血圧とは？症状や原因、日常生活を送る上での注意点を解…

 

段階的な体位変換が最も重要な対処法で、急激な立ち上がりを避け、寝た状態から座位、そして立位へとゆっくりと移行することで血圧の急激な変化を防ぎます 。ベッドの縁に座って数分間待つか、立ち上がる前に足踏みなどで体を動かして血行を促進することが推奨されます 。
参考）パーキンソン病で起立性低血圧【なぜ？対策も！】 - 脳卒中･…

 

水分摂取の管理も重要で、1日の必要水分量は2.5L程度、食事以外では1.5L前後の水分摂取が目安となります 。脱水を避けるため、特に冬季でも適宜水分補給を心がける必要があります 。
参考）低血圧は塩分をたくさんとるべき？食事のコツを管理栄養士が解説…

 

運動療法では、ふくらはぎの筋力強化が特に効果的です 。ふくらはぎは「第二の心臓」と呼ばれ、筋肉の収縮により血液を心臓まで押し上げる重要な役割を果たします 。座位での踵上げエクササイズや、水泳、ウォーキングなどの全身運動が推奨されます 。
食事療法では、1回の食事量を減らして回数を増やす分割食が有効です 。朝食時には炭水化物や糖分の摂取を控え、食後低血圧を防ぐことが重要です 。塩分摂取の適度な増加も血圧維持に有効とされています 。
参考）低血圧の人が食べてはいけないものは？食事方法にも注意

 

起立性低血圧の高齢者における薬物療法

非薬物療法で改善が不十分な場合、薬物療法が併用されますが、高齢者では副作用のリスクを十分に考慮して使用する必要があります 。youtube
**フルドロコルチゾン（フロリネフ®）**が第一選択薬として用いられ、鉱質コルチコイドとして血液量と血圧を増加させる作用があります 。0.1mg/日から開始し、病院での監視下で使用することが推奨されています 。体内の水分量を増やすことで血圧が上がりやすい状態を作り、繰り返し起こる起立性のめまいに対する治療手段となります 。
参考）https://www.bmj.com/content/295/6600/683.1.full.pdf
youtube
ミドドリンも補助療法として使用され、α刺激薬として血管収縮作用により血圧を上昇させます 。フルドロコルチゾンと併用されることが多く、症状に応じて調整されます。
参考）https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsma/71/6/71_523/_pdf

 

薬物療法の効果に関するシステマティックレビューでは、フルドロコルチゾンの有益性と有害性について十分な検討が必要とされており、個々の患者の状態に応じた慎重な使用が求められています 。youtube
高齢者では薬剤の相互作用や副作用に特に注意が必要で、定期的な血圧測定と腎機能、電解質バランスの監視が重要です 。

起立性低血圧の高齢者における補助具使用法と転倒予防

弾性ストッキングの使用は、下肢への血液の流れを改善し血圧を安定させる重要な補助的治療法です 。特に薬物療法で改善が不十分な重症例において、弾性ストッキングが著効を示した症例報告もあります 。
参考）https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhgmwabun/17/5/17_546/_pdf/-char/ja

 

弾性ストッキングの効果は個人差がありますが、下肢の静脈血のうっ滞を防ぎ、心臓への血液還流を促進することで起立性低血圧の症状を軽減します 。着用指導には時間を要することがありますが、失神を防ぐことで自宅での安全な生活が可能になります 。
転倒予防対策として、環境整備と行動指導が重要です 。立位保持訓練では、最初は手すりや支えを利用し、安定した立位が可能になったら補助なしでの立位保持を目指します 。めまいを感じた際は、倒れる前にしゃがみ込むことを覚えておくことも重要です 。
参考）【2025年最新】血圧とバランス機能・転倒リスクの関係：安全…

 

タウントレーニングにより、頭を動かしたり身体の方向を変えたりする際のバランス訓練を行い、前庭系の働きを強化することで起立性低血圧によるふらつきを軽減できます 。
長時間の同じ姿勢を避け、規則正しい生活リズムを心がけ、過度のアルコール摂取を控えることも重要な対処法となります 。入浴時は長時間を避け、ぬるめのお風呂に入ることで血管への負担を軽減できます 。