本態性高血圧は、明確な病因が特定できない高血圧で、高血圧患者の約90%を占めています 。この疾患は複数の遺伝子と環境因子が関与する多因子疾患として知られており、特定の単一原因ではなく、複数の要因が重なり合って発症します 。
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主な要因として、遺伝的要因が大きく関与しており、家族歴がある場合の発症リスクが高くなります 。また、食塩の過剰摂取、肥満、運動不足、ストレス、加齢といった生活習慣要因も重要な役割を果たします 。
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興味深いことに、日本人における本態性高血圧は、欧米諸国と比較して食塩感受性が高いという特徴があり、これは遺伝的背景と食文化の影響が考えられています。さらに、年齢とともに動脈硬化が進行することで、血管の弾力性が失われ、血圧上昇に寄与することも明らかになっています 。
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二次性高血圧は、特定の疾患や薬剤が原因で発症する高血圧で、全高血圧患者の10-15%を占めます 。この高血圧の最大の特徴は、原因となる疾患を治療することで血圧の正常化や完治が可能である点です 。
参考)二次性高血圧症(腎血管性高血圧を含む)
二次性高血圧の原因は、①腎実質性、②腎血管性、③内分泌性、④血管性、⑤脳・中枢神経性、⑥遺伝性、⑦薬剤誘発性に分類されます 。最も頻度が高いのは原発性アルドステロン症で、全高血圧例の約5%、治療抵抗性高血圧では20%程度を占めるとされています 。
参考)2次性高血圧
腎血管性高血圧は、腎動脈の狭窄や閉塞により腎血流が低下し、レニン-アンジオテンシン系が活性化されることで発症します 。また、薬剤誘発性高血圧では、経口避妊薬、非ステロイド性消炎薬(NSAIDs)、ステロイド薬などが原因となることが報告されています。
参考)腎血管性高血圧(RVHT) – 循環器の疾患
本態性高血圧の診断は、まず二次性高血圧を除外することから始まります 。診断基準は診察室血圧で収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上とされており、家庭血圧では135/85mmHg以上が基準となります 。
参考)https://clinicplus.health/hypertension/8h3l44qd/
血圧測定は、異なる日の複数回の測定で繰り返し高値が記録される場合に診断が確定されます 。特に重要なのは家庭血圧測定で、朝の起床後1時間以内(排尿後・朝食前・服薬前)と夜の就寝前に座位で安静状態での測定が推奨されています 。
参考)https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019/JSH2019_hp.pdf
診断過程では、心血管イベント危険因子の評価と臓器障害の検索が必要です。血液検査では脂質、血糖、腎機能、電解質の確認、心電図や胸部X線検査による心肥大の評価、尿検査による腎障害の有無を調べます。30歳以下の若年発症や治療抵抗性高血圧の場合には、二次性高血圧の精査が特に重要となります 。
参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/contentpage.aspx?diseaseid=1138
二次性高血圧の最大の特徴は、原因疾患に由来する特異的な症状を呈する可能性があることです 。本態性高血圧が通常無症状であるのに対し、二次性高血圧では原因疾患の症状が併存することが多く見られます。
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原発性アルドステロン症では、低カリウム血症による手足の脱力、筋肉痛、不整脈などの症状が現れることがありますが、カリウム値が正常の症例も多いため注意が必要です 。腎血管性高血圧では、頭痛、めまい、視力低下、疲労感などが主な症状として報告されています 。
参考)原発性アルドステロン症(Primary Aldosteron…
早期発見のための重要な指標として、以下の場合に二次性高血圧を強く疑う必要があります:①40歳未満の若年発症、②急速に進行する高血圧、③複数の薬剤でもコントロール困難な難治性高血圧、④血圧変動の激しい高血圧、⑤電解質異常を伴う高血圧 。特に30歳未満または50歳以上での拡張期高血圧の突然発症は、腎血管性高血圧を疑う重要な所見とされています 。
参考)https://www.j-athero.org/chart2025/chart2025_qr01.pdf
本態性高血圧の治療は、生活習慣の改善と薬物療法の組み合わせが基本となります。降圧目標は一般的に130/80mmHg未満とされており、75歳以上の後期高齢者では140/90mmHg未満が推奨されています 。
参考)腎・高血圧内科
第一選択薬として、カルシウム拮抗薬、アンジオテンシンII受容体遮断薬(ARB)、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)、利尿薬の4種類が推奨されています 。カルシウム拮抗薬は日本で最も多く使用されており、副作用が少なく、臓器血流を保つ効果も優れているため、高齢者にも適用しやすいという特徴があります 。
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生活習慣の改善では、食塩制限(1日6g未満)、適正体重の維持、定期的な有酸素運動、節酒、禁煙が重要です。特に日本人は食塩感受性が高いため、減塩対策は極めて効果的とされています。また、DASH食(野菜・果物・低脂肪乳製品を多く摂取し、飽和脂肪酸を制限する食事パターン)の導入も血圧降下に有効であることが証明されています 。
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現代では、複数の降圧薬を組み合わせた配合剤の使用が増えており、服薬アドヒアランスの改善と相乗効果による降圧効果の向上が期待されています。血圧が140/90mmHg以上の患者には、通常2種類の薬剤を同時に処方することが多くなっています 。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/12681ebce342dad472a2451722e6e2e4cab4541b