セフタジジム・アビバクタム(商品名:ザビセフタ)は、2024年6月に国内で承認された革新的な抗菌薬配合剤です。本剤の最大の特徴は、セフタジジム水和物にアビバクタムナトリウムという新有効成分のβ-ラクタマーゼ阻害薬を配合した点にあります。
参考)https://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2024/2024-11-12
アビバクタムは非β-ラクタム系β-ラクタマーゼ阻害薬として、従来のクラビン酸やスルバクタムとは異なる独特な作用機序を持ちます。具体的には、β-ラクタマーゼと可逆的な共有結合を形成し、加水分解に対して安定な付加体を形成することによりβ-ラクタマーゼを阻害します。
参考)https://www.pfizerpro.jp/medicine/zavicefta/product/moa
🔬 阻害対象となるβ-ラクタマーゼ
⚠️ 注意すべき限界
アビバクタムはクラスBのメタロβ-ラクタマーゼ(MBL)に対する阻害作用は示しません。この点は臨床使用における重要な留意事項となります。
参考)https://www.pfizerpro.jp/medicine/zavicefta/product/product-basic-information
本剤の適応症は、薬剤耐性菌を含む原因菌による重篤な感染症に限定されており、AMR対策の観点から適正使用が求められています。
参考)https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00071469
📋 承認適応症
💉 用法・用量
通常、成人には1回2.5g(アビバクタムとして0.5g/セフタジジムとして2g)を1日3回、2時間かけて点滴静注します。腹腔内感染症に対しては、嫌気性菌をカバーするためメトロニダゾール注射液との併用が必要です。
参考)https://www.pfizerpro.jp/medicine/zavicefta/product/efficacy
本剤は他の治療法が適切でない場合にのみ推奨される、いわゆる「最後の砦」的な位置づけの抗菌薬です。これは薬剤耐性の発生を抑制し、将来にわたって有効性を維持するための重要な使用原則です。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%83%95%E3%82%BF%E3%82%B8%E3%82%B8%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%93%E3%83%90%E3%82%AF%E3%82%BF%E3%83%A0
セフタジジム・アビバクタムは、近年問題となっているβ-ラクタマーゼ産生菌に対して優れた臨床効果を示します。特に、従来の抗菌薬では治療困難とされてきた多剤耐性グラム陰性桿菌感染症への新たな治療選択肢として期待されています。
🧪 対象となる主要病原菌
国内第3相試験では、複雑性腹腔内感染症患者を対象として、本剤とメトロニダゾールの併用療法の有効性と安全性が評価されました。多施設共同、非盲検、単群試験として実施され、良好な臨床成績が確認されています。
参考)https://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2024/2024-06-24
海外では既に90以上の国・地域で承認されており、豊富な臨床使用実績があります。2015年の米国承認以降、複雑性尿路感染症、複雑性腹腔内感染症、院内肺炎に対する治療薬として広く使用されています。
セフタジジム・アビバクタムの安全性プロファイルは、セフタジジム単剤と概ね同様の傾向を示しますが、配合薬剤特有の注意点があります。
⚠️ 主な副作用
🚨 重篤な副作用
腎機能低下患者では用量調整が必要です。クレアチニンクリアランスに応じて投与量と投与間隔の調整を行い、血中濃度の上昇による副作用リスクを避ける必要があります。
妊娠中の使用については、セフタジジム単剤では安全性が確認されていますが、アビバクタムとの配合薬剤としての十分な研究データは限られているため、慎重な適応判断が求められます。
セフタジジム・アビバクタムは、主に腎排泄される薬剤であるため、腎機能や腎排泄に影響を与える薬剤との相互作用に注意が必要です。
💊 主要な薬剤相互作用
高齢者への投与では、加齢による腎機能低下を考慮した用量調整が重要です。また、脱水や電解質異常を合併しやすいため、十分な水分管理と電解質モニタリングが必要です。
🔬 モニタリング項目
透析患者への投与は、血液透析により本剤が除去されるため、透析後の補充投与が推奨されます。腹膜透析患者では、薬物動態データが限られているため、より慎重な投与が必要です。
本剤の薬物動態特性として、セフタジジムとアビバクタムの血中半減期がほぼ同等(約2-3時間)であることから、配合比率が維持され、相乗効果が期待できる設計となっています。この特性により、投与期間中を通じて安定した抗菌効果が得られると考えられています。
参考)https://passmed.co.jp/di/archives/19016