有効成分(active ingredient, AI)とは、医薬品や医薬部外品に含まれる物質のうち、生理活性を示すもののことを指します。薬事法第2条第2項に基づき、医薬部外品として製造販売される場合は、個別品目ごとに厚生労働大臣の承認が必要とされています。
参考)https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/yakuyou_kounou_1.pdf
有効成分は製剤加工前の段階では「原体(げんたい)」や「原末(げんまつ)」とも呼ばれ、医薬品では通常、有効成分と賦形剤に分けて考えられます。賦形剤は剤形を決める物質ですが、有効成分の吸収を調節する効果を持つ場合もあり、薬効発現において重要な役割を果たします。
参考)有効成分 - Wikipedia
興味深いことに、生薬の場合には有効成分が明らかでない場合や、多数の有効成分が考えられる場合があり、漢方薬では薬効の中心となる特定の生薬を有効成分と称することもあります。この複雑さが、現代医学における生薬成分の研究を困難にしている一因でもあります。
厚生労働省が定める有効成分リストでは、規格コードによって成分の品質基準が明確に分類されています。規格コード01は日本薬局方、24は日本薬局方外医薬品規格2002、51は医薬部外品原料規格2006に対応し、それぞれ異なる品質基準と試験方法が設定されています。
参考)https://www.pref.miyagi.jp/documents/27865/52886.pdf
これらの規格は、有効成分の純度、含量、不純物の限度などを詳細に規定しており、製造業者はこれらの基準を満たす原料のみを使用することが義務付けられています。特に医薬部外品では、既承認品と有効成分及びその配合量、効能・効果、用法・用量、剤形が同一である場合、原則として有効性・安全性に関する資料の提出が不要となるため、規格の統一性が重要な意味を持ちます。
参考)https://www.pref.kyoto.jp/yakumu/documents/e.pdf
さらに興味深い点として、専ら口唇に用いる薬用化粧品については、括弧内に特別な配合量が設定されており、使用部位による安全性への配慮が規格に反映されています。
一般用医薬品における有効成分は、その作用機序によって神経系作用薬、胃腸薬、血液作用薬、外皮用薬など多岐にわたって分類されます。例えば、解熱鎮痛成分では、アセトアミノフェンがプロスタグランジン抑制作用を持たないため胃を荒らしにくい一方、イブプロフェンは優れた解熱鎮痛効果と抗炎症作用を示しますが胃粘膜への刺激が強いという特徴があります。
参考)一般用医薬品の種類と有効成分 - Wikipedia
抗ヒスタミン成分においても、第一世代のジフェンヒドラミン塩酸塩は強い催眠作用という副作用がある反面、この特性を利用して睡眠改善薬としても活用されています。一方、第二世代のメキタジンは眠気が比較的少ないため、日中使用する風邪薬に適用されます。
これらの成分選択は、治療目的だけでなく患者の生活スタイルや他の薬剤との相互作用も考慮して行われ、同じ効果を持つ成分でも使い分けが重要になります。
薬用化粧品では、シャンプー、リンス、化粧水、クリーム、乳液、日やけ止め剤、パック、薬用石けんなど、製品の種類ごとに有効成分の配合量が細かく規定されています。例えば、アラントインは化粧水では0.05~0.2%、クリーム・乳液では0.05~0.5%の範囲で配合が認められており、製品の特性や使用方法に応じた最適化が図られています。
グリチルリチン酸二カリウムは抗炎症作用を持つ代表的な有効成分として、ほぼ全ての薬用化粧品カテゴリーで使用可能ですが、その配合量は製品種類によって0.05~0.5%の範囲で調整されています。この成分は甘草由来であるため、食品との相互作用にも注意が必要です。
特に注目すべきは、パック製品では「洗い流す用法」と「洗い流さない用法」で有効成分の配合量に制限が設けられており、皮膚への接触時間を考慮した安全性への配慮が見られます。
有効成分の選択において最も重要な考慮事項の一つが、成分間の相互作用です。例えば、アクリノールとヨードチンキを併用すると効果が低下するため、これらの成分を含む製品の同時使用は避けるべきです。また、マーキュロクロム(赤チン)とヨードチンキの併用も同様に効果低下を招きます。
トラネキサム酸は優れた抗炎症作用を持つ一方で、血液凝固を促進する作用があるため、血栓症の既往歴がある患者では使用に注意が必要です。逆に、ブロメラインは血液凝固を阻害する作用があり、出血傾向のある患者には適用できません。
ロートエキスを含む胃腸薬と乗り物酔い防止薬の併用は、抗コリン作用の過剰により副作用のリスクが高まるため禁忌とされています。このような相互作用情報は、薬剤師による適切な服薬指導の根拠となる重要な知識です。