血液透析の種類と治療方法の違い

血液透析には様々な種類があり、それぞれに特徴やメリット・デメリットがあることをご存知ですか?本記事では血液透析の種類と治療方法について医療関係者向けに詳しく解説しています。患者に最適な透析方法を選択するための参考になる情報とは何でしょうか?

血液透析の種類

血液透析治療の主な分類
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血液透析(HD)

最も一般的な透析法で、拡散による小分子量物質の除去に優れている

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血液透析濾過(HDF)

拡散と大量限外濾過を組み合わせ、より多くの老廃物を除去する

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血液濾過(HF)

限外濾過のみで中・大分子量物質の除去に特化した治療法

血液透析は腎機能が10%以下に低下した患者に対する生命維持療法として、日本では約97%の透析患者が選択している治療法です 。血液透析の種類は主に物質除去の原理によって分類され、それぞれが異なる適応と特徴を有しています 。
参考)https://www.tsuchiya-hp.jp/pdf/ckd-202009-2.pdf

 

最も基本的な治療法である血液透析(HD)は、拡散と限外濾過による物質交換を行う治療法です 。現在、透析療法全体の約90%を占めており、小分子量物質の除去に優れている特徴があります 。患者の血液をダイアライザーと呼ばれる人工腎臓に通し、透析液との濃度差を利用して老廃物や余分な水分を除去します 。
参考)透析療法の種類

 

血液透析濾過(HDF)は、HDとHFの両方の長所を取り入れた改良型治療法として注目されています 。HDよりも急激な血圧変動が起こりにくく、大きな分子量の物質も除去できるという利点があります 。特にβ2-マイクログロブリンなどの中分子量物質の除去に優れており、透析アミロイドーシスなどの合併症予防効果が期待されています 。
参考)オンラインHDFについて

 

血液濾過(HF)は透析液を使用せず、限外濾過で水分と老廃物を除去した後、置換液を補充する方法です 。中分子や大分子量物質の除去に特化していますが、最近では使用頻度が減少している傾向にあります 。

血液透析(HD)の基本原理と特徴

血液透析(HD)は、半透膜を介した拡散現象を利用して血液中の老廃物を除去する最も一般的な透析法です 。ダイアライザー内の約1万本の中空糸膜を通して、血液と透析液の濃度差により物質交換が行われます 。
参考)血液透析療法とは

 

HDの最大の特徴は、尿素やクレアチニンなどの小分子量物質の除去能力に優れていることです 。標準的な治療スケジュールは週3回、1回4時間程度の通院治療で、医療スタッフの監視下で安全に実施されます 。日本全国に4,000件以上の透析施設があるため、アクセスが良好である点も大きなメリットです 。
参考)人工透析とは?透析の種類について詳しく解説

 

一方で、中分子量から大分子量の物質除去には限界があり、長期透析患者では透析アミロイドーシスなどの合併症リスクが指摘されています。また、週3回の通院が必要で生活の制約が大きく、食事や水分摂取の厳格な管理が求められます 。
参考)人工透析とは?仕組みや血液透析と腹膜透析の違いをわかりやすく…

 

血液透析濾過(HDF)の種類と実施方法

血液透析濾過(HDF)は、血液透析に大量の限外濾過を組み合わせた治療法で、オンラインHDFとオフラインHDFに大別されます 。現在の主流はオンラインHDFで、清浄化した透析液を補充液として使用することで、大量の濾過が可能になっています 。
参考)血液透析(HD)とHDFの違いとは?種類と特徴をやさしく解説…

 

オンラインHDFには補充液の注入部位により前希釈法と後希釈法があります 。前希釈法はダイアライザー通過前の血液回路に補充液を注入する方法で、日本では圧倒的に多く採用されています 。後希釈法はダイアライザー通過後に補充液を注入し、より高い濾過効率が得られる特徴があります 。
参考)オンラインHDFについて - 池袋久野クリニック【公式】池袋…

 

I-HDFという新しい治療方法も登場しており、透析濾過液を間欠的に少量補充することで、アルブミンの喪失量を抑制しながら透析中の血圧低下を予防する効果が報告されています 。高齢で栄養状態が良くない患者や、透析中の血圧低下を頻繁に来す患者に特に有用とされています 。
HDFの適用により、β2-マイクログロブリンをはじめとする中分子量物質の除去率が向上し、透析アミロイドーシスや手根管症候群などの合併症予防効果が期待されています 。ただし、アルブミンの一部喪失というデメリットもあるため、血液検査データを慎重に監視しながら個別化した透析条件の設定が重要です 。

血液透析における機器と装置の種類

血液透析装置は透析液をコントロールし、患者の状態をモニタリングする重要な機器です 。現代の透析装置には自己検査機能、炭酸塩透析、液面・気泡・血液漏れ検知器などの安全機能が標準装備されています 。
参考)血液透析装置 - 全ての医療製品メ-カ-

 

血流量は通常0.03-0.6L/min、透析液流量は0.3-0.8L/min、限外濾過流量は0-4L/minの範囲で調整可能です 。最新の装置では閉鎖した容積のバランス室による正確な限外濾過制御、ワンキー低速限外濾過機能、自動消毒・洗浄プログラムなどの機能が搭載されています 。
ダイアライザー(人工腎臓)は血液透析の中核となる機器で、その性能は膜面積、膜素材、構造によって決定されます 。膜面積は1.5-2.1㎡の範囲で、体格に応じてS、M、Lサイズが選択されます 。現在は生体適合性に優れるポリスルホンなどの合成高分子膜が主流となっており、セルロース系膜から置き換わっています 。
参考)ダイアライザー(人工腎臓)の種類と性能

 

ダイアライザーは性能によりⅠ型からⅤ型まで分類され、β2-マイクログロブリンクリアランス値により区分されています 。Ⅴ型(70mL/min以上)は最高性能のスーパーハイパフォーマンス膜として、より多くの中・大分子量物質除去が可能です 。

血液透析の合併症と管理方法

血液透析には短期的合併症と長期的合併症があり、適切な管理が患者の生命予後に直結します 。最も頻繁に見られる短期的合併症は低血圧で、透析中の除水による循環血液量減少、血管収縮能低下、心機能障害が主な原因です 。
参考)透析治療後の合併症について

 

透析不均衡症候群は透析導入期に多く見られる合併症で、血液と脳組織間の濃度差により頭痛、吐き気、嘔吐、脱力感などが生じます 。予防には水分・塩分・タンパク質摂取の適切な管理と、緩やかで無理のない透析条件の設定が重要です 。
参考)代表的な合併症

 

長期的合併症としては心血管系イベント、骨・ミネラル代謝異常、腎性貧血、透析アミロイドーシスなどがあります 。これらの合併症は患者の生活の質(QOL)と生命予後に大きく影響するため、継続的な医学的管理と患者教育が不可欠です 。
血圧低下の管理には、適切なドライウェイト設定、除水量の調整、栄養状態の改善、必要に応じた昇圧薬の使用が効果的です 。また、透析アミロイドーシス予防のためには、β2-マイクログロブリン除去能の高いダイアライザーの使用や、HDFへの変更が推奨される場合があります 。

血液透析におけるアクセス方法と選択基準

バスキュラーアクセスは血液透析の生命線とも言える重要な要素で、患者の血管状態、全身状態、年齢、生活状況に応じて選択されます 。日本透析医学会の調査によると、自己血管内シャントが約90%、人工血管内シャントが約7%、動脈表在化が約2%、カテーテルが約1%の使用割合となっています 。
自己血管内シャントは動脈と静脈を直接縫合する方法で、最も理想的なバスキュラーアクセスです 。閉塞リスクが低く長期使用が可能ですが、穿刺可能になるまで2-4週間の成熟期間が必要です 。人工血管内シャントは自己血管での作製が困難な場合に選択され、自己血管に比べて閉塞や感染リスクが高く、寿命も短いという特徴があります 。
中心静脈カテーテルは首の中心静脈に挿入するアクセス方法で、長期間留置可能なカフ型と一時的使用の非カフ型があります 。透析毎の穿刺が不要というメリットがありますが、常時体外にカテーテルが露出するため感染リスクの管理が重要です 。
動脈表在化は上腕動脈を皮下に持ち上げ、直接穿刺する方法で、シャント手術が困難な場合や心機能低下患者に適応されます 。各アクセス方法の特徴を理解し、患者個別の状況に応じた最適な選択と適切な管理が、透析治療の成功に不可欠です 。