サインバルタ(デュロキセチン)の投与において、絶対禁忌とされる疾患や病態は明確に定められています。
高度肝機能障害患者への禁忌理由
高度腎機能障害患者への注意点
MAO阻害剤との併用は最も重要な禁忌事項の一つです。
併用禁忌となるMAO阻害剤
セロトニン症候群発症のメカニズム
セロトニン症候群は、セロトニン作動性薬剤の併用により脳内セロトニン濃度が異常に上昇することで発症します。MAO阻害剤はセロトニンの分解を阻害し、サインバルタはセロトニンの再取り込みを阻害するため、相乗的にセロトニン濃度が上昇します。
臨床症状と対応
MAO阻害剤中止後も2週間は併用禁忌期間が続くため、処方歴の確認が重要です。
前立腺肥大症患者へのサインバルタ投与は、尿閉のリスクから慎重投与が必要です。
ノルアドレナリン作用による尿閉機序
リスク評価のポイント
前立腺肥大症の重症度評価には国際前立腺症状スコア(IPSS)が有用です。
臨床的な対応策
意外な事実として、前立腺肥大症患者でも軽度であれば、適切な監視下でサインバルタの投与が可能な場合があります。ただし、夜間頻尿や残尿感の悪化に注意が必要です。
サインバルタを含むSNRIは、双極性障害患者において躁転のリスクが他の抗うつ薬より高いことが知られています。
躁転発症のメカニズム
リスク因子の評価
双極性障害の素因を示唆する要因。
臨床的な対応指針
トラムセット併用時の特別な注意
疼痛管理でトラムセット(トラマドール/アセトアミノフェン配合剤)と併用する際は、トラマドールもSNRI様作用を有するため、躁転リスクがさらに高まります。この組み合わせでは特に慎重な観察が必要です。
サインバルタの安全な使用には、肝腎機能の適切な評価とモニタリングが不可欠です。
肝機能評価の具体的指標
軽度から中等度の肝機能障害では慎重投与が可能ですが、以下の指標での評価が重要。
腎機能評価とクリアランス計算
モニタリングスケジュール
投与開始時。
継続投与時。
異常値発見時の対応
肝機能異常。
腎機能悪化。
飲酒習慣のある患者への特別な配慮
アルコール多飲者では肝機能への影響が増強される可能性があります。飲酒量の詳細な聴取と、必要に応じてγ-GTPやCDTなどのアルコール性肝障害マーカーの測定も考慮すべきです。
サインバルタの薬物相互作用に関する詳細情報
https://www.kegg.jp/medicus-bin/drug_interaction?japic_code=00058451
サインバルタの適正使用に関する患者向け情報
https://www.info.pmda.go.jp/downfiles/guide/ph/340018_1179052M1022_2_00G.pdf