急性気管支炎の初期症状は、一般的に風邪に似た症状から始まります。具体的には、頭痛、喉の痛み、軽い咳、倦怠感、くしゃみ、鼻水などが挙げられ、これらの症状は感染初期に上気道で現れることが多く、数日間続くことがあります。その後、上気道の急性炎症が気管から気管支へと波及することで、咳や痰といった下気道症状が出現します。
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COVID-19の患者では、発熱、筋肉痛、胃腸症状、嗅覚や味覚の喪失がより多くみられる特徴があります。一方で、気管支炎の原因がインフルエンザのようなより重篤な感染症である場合や、肺炎が起こっている場合を除いて、通常は高熱や悪寒はみられません。
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急性気管支炎では、数日後に咳が出始め、通常は初めはたんがからまない乾いた咳として現れます。咳と一緒に少量の粘度の低い白い粘液が出ることがあり、この粘液は、しばしば白色から緑色または黄色に変化し、粘性が増します。重要な点として、この色の変化は細菌感染を意味しているわけではなく、炎症に関与している細胞が気道内に集まって、たんの色を変えているにすぎません。
細菌による二次感染を伴うと痰の量が増加し膿性となってきますが、咳や痰の色といった症状だけで、原因がウイルスか細菌かを正確に区別することは難しいとされています。痰は黄色や緑色になることもあり、ウイルス以外に細菌感染が加わると症状が長引く傾向があります。
参考)急性気管支炎と気管支喘息の鑑別診断 href="https://kobe-kishida-clinic.com/respiratory-system/respiratory-disease/acute-bronchitis-vs-asthma-diagnosis/" target="_blank">https://kobe-kishida-clinic.com/respiratory-system/respiratory-disease/acute-bronchitis-vs-asthma-diagnosis/amp;#8211; 症状と治…
気管支炎は気道を一時的に狭めることがあるため、喘鳴や息切れが生じることがあり、喘息発作で起こるものと似ています。喘鳴とは、ヒューヒュー、ゼーゼーという呼吸音のことで、胸部の聴診によって確認することができます。また、咳き込むときに胸に痛みを感じることも少なくありません。
参考)気管支炎(きかんしえん)
急性気管支炎自体が重篤な合併症を引き起こすことはありませんが、咳は2~3週間以上続く可能性があります。熱は通常、1週間ほどで下がりますが、気道の内側が傷ついた場合には、その修復に時間がかかり、咳だけが2~3週間、長いと1か月以上続くこともあります。
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主症状は咳、痰(膿性のこともあり)で、発熱、食欲不振、全身倦怠感といった全身症状を伴うこともあります。アデノウイルスの場合には、腸管にも感染することが多く、下痢の症状が多くみられます。インフルエンザウイルスの場合には、症状が強く、急激な発熱や倦怠感などがみられます。
参考)急性気管支炎
基本的な症状としては、発熱・咳・痰・のどの痛みなどの他、関節痛や倦怠感などの全身症状が出る場合もあります。症状の程度は、原因となるウイルスや細菌の種類、患者の免疫力や基礎疾患の有無によって様々です。
参考)咳が止まらない。 もしかして、気管支炎かもしれません
急性気管支炎の主な合併症は肺炎への進展で、特に高齢者や基礎疾患がある方は注意が必要です。対症療法を行っていても咳が悪化したり高熱が続く場合、息切れなどの症状が出現した場合は、肺炎の合併を疑う必要があります。多くはウイルス感染により、気道上皮の壊死、脱落などが起こり、気道が障害されると発症し、二次的に細菌感染を生じると肺炎にいたる場合もあります。
参考)気管支炎(急性気管支炎) |病気と症状|なみきばしクリニック
気管支炎を引き起こすインフルエンザなどの一部の感染症では、肺組織の感染症(肺炎)に至る可能性があり、これは通常、高齢者か、免疫に異常がある人にのみみられます。特に風邪をひいて発熱が数日以上続くときは、肺炎や気管支肺炎を合併している可能性が高いため、注意深い観察が必要です。
参考)気管支肺炎 (きかんしはいえん)とは
急性気管支炎は慢性肺疾患がない状態で発生する気管気管支の炎症であり、一般的には上気道感染症に続いて起こります。原因はほぼ常にウイルス感染で、急性気管支炎の最も一般的な原因はウイルス感染です。健常な成人の急性気管支炎では、約90%がウイルスによるものとされています。
参考)急性気管支炎 - 05. 肺疾患 - MSDマニュアル プロ…
具体的には、ライノウイルス、パラインフルエンザ、A型またはB型インフルエンザウイルス、RSウイルス、コロナウイルス、またはヒトメタニューモウイルスによって引き起こされる上気道感染症(URI)の一部として起こることが多いです。急性気管支炎はSARS-CoV-2感染に伴って発生する一連の疾患の一部であることもあります。
細菌が原因となるケースは少数で、約6%とされています。肺炎マイコプラズマ、百日咳菌、肺炎クラミジアなどの細菌が原因となるのは症例の5%未満で、このような症例はときにアウトブレイク時にみられます。細菌性の急性気管支炎の原因菌としては、百日咳菌、肺炎クラミジア、肺炎マイコプラズマなどが挙げられます。
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肺炎マイコプラズマや肺炎クラミジアなどの非定型病原体が原因となる場合もあり、一部では、ウイルス感染に引き続いて、二次性の細菌感染が起こる場合もあります。マイコプラズマ肺炎では、症状としては咳が長い間続き、最初は痰が絡まない乾いた咳が多いですが、だんだん痰が絡んだような咳になります。
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呼吸器感染症は、ウイルスと細菌の相互作用によって悪化することが知られています。先行するウイルス感染は、宿主を二次性細菌性肺炎に感染しやすくし、これは罹患率と死亡率の主要な原因となっています。ウイルス誘発性の気道上皮損傷により、細菌が下気道に広がり、その侵襲性が増すことに加え、ウイルス感染後の免疫防御の機能不全が二次性細菌感染への感受性を高める因子として示唆されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10808858/
1918年のパンデミックでは、細菌感染による二次性肺炎による高い罹患率が知られており、最近のCOVID-19パンデミックでも同様の現象が観察されました。ウイルスが後続の細菌感染の道を開くことが観察されており、同様に、細菌もウイルス感染を助けることがあります。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10720647/
急性気管支炎は免疫力が低下しているときや疲労が蓄積しているとき、ウイルス感染が流行している時期などにかかりやすくなります。また、たばこを吸っている方や職場環境で粉塵を吸い込みやすい人なども気管支への刺激が多いため発症しやすい傾向があります。
原因菌の多くはウイルスであることから、かぜ症候群と同様にウイルスによるものが多いといわれています。高齢者、基礎疾患を有している患者では、適宜、抗菌薬を使用する必要がある場合があります。
急性気管支炎の診断は、主に症状と病歴を元に行われ、症状と診察による評価が中心です。診断は臨床所見に基づき行われ、主に咳、痰といった臨床症状から診断します。
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問診では、どのような咳か(乾いた咳か痰があるか)、いつから症状が続いているか、発熱の有無、息苦しさはあるか、タバコやアレルギーの有無、持病(喘息やCOPDなど)などの情報を聴取します。これらの情報をもとに、気管支炎か、それ以外の病気かを判断します。
身体検査では、胸部の聴診を行い、喘鳴や異常音がないか確認します。胸に聴診器をあて、ゼーゼー、ヒューヒューという音(喘鳴)や、ゴロゴロという痰の音を確認します。肺炎では「バリバリ、パチパチ」という音が聞こえることがあります。
発熱などの自覚症状が長引く場合には、肺炎の合併を鑑別する必要があるため、胸部エックス線写真や胸部CTで肺自体に陰影がないことを確認する必要があります。レントゲン検査は、肺炎などの合併症がないか確認するために、胸部X線を撮影することがあります。
参考)急性気管支炎
気管支炎はレントゲンなどの検査では異常が見つけにくいという特徴があるため、レントゲンだけでなく呼吸機能検査やCT検査によって喘息や肺炎、他の呼吸器疾患との鑑別をします。発熱を伴うことも多いですが、一般には身体所見に乏しく、軽症なことが多いです。
血液検査は、感染症の兆候を確認するために、白血球数などをチェックします。重症時や長引くときには血液検査を実施することがあります。高齢者や重症例では、痰の検査を行うこともあります。
病原体が同定されることはまれで、治療においては、特定の細菌感染が疑われない、または診断されない場合は、ウイルス性として抗菌薬は不要であり、対症療法が中心となります。咳や痰の色といった症状だけで、原因がウイルスか細菌かを正確に区別することは難しいとされています。
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急性気管支炎と気管支喘息は鑑別が必要な疾患です。気管支喘息では、喘鳴(ぜんめい)と呼ばれるヒューヒュー、ゼーゼーという呼吸音が特徴的で、呼気時に気道が狭くなることで息苦しさが強まり、発作時には横になりにくいほどつらい呼吸困難を起こす場合もあります。
急性気管支炎は強いせきや痰が主症状で、発熱や倦怠感を伴うことがあり、特に痰は黄色や緑色になることもあります。一方、気管支喘息はアレルギー体質や家族に喘息歴がある方に多く見られ、小児期に始まることが多い一方で、大人になってから初めて発症することもあります。
急性気管支炎の治療は原因によって大きく異なりますが、ウイルスの場合には根本的な治療はありません。治療は支持療法であり、抗菌薬は通常不要です。原因菌の多くはウイルスであることから、病原体に特異的な治療薬はなく、安静、水分栄養補給などの対症療法が中心になります。
解熱のための解熱剤や全身症状を緩和させるために「イブプロフェン」「アセトアミノフェン」を使用することがあります。対処療法とは、症状に応じた治療を行いながら、症状を少しでも緩和していくという考えで行われる治療のことで、熱があれば解熱剤を使い、咳があれば咳止めを使う、のどの痛みには鎮痛剤を使うなどの治療を行います。
十分な水分を補給して、休養を取ることが大切です。安静と十分な栄養によって免疫力を上げていくことも重要になります。しっかりとした栄養、水分補給、十分な睡眠も大切です。
細菌感染が疑われる場合には、適切な抗菌薬を使用します。高齢者、基礎疾患を有している患者に対しては、適宜、抗菌薬を使用します。ウイルスが原因だった場合、抗生物質は効果がないため、細菌による感染が原因である場合を除き、抗生物質を処方することは基本的にしません。
急性気管支炎の原因がインフルエンザの場合には、抗インフルエンザ薬が使用されることがあり、発症後48時間以内であれば抗インフルエンザの効果が期待できます。しかし、発症後すぐにはインフルエンザウイルスが確認されないこともあり、1度受診した後に熱が下がらず、再度受診した時にインフルエンザウイルスと診断されることもあります。
日本感染症学会のガイドラインでは、ウイルス性急性気管支炎に対して抗菌薬投与は推奨されておらず、慢性呼吸器疾患に合併した細菌性気管支炎の場合に抗菌薬の使用が検討されます。
参考)https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/guidelines/093050623_teigen.pdf
急性気管支炎の軽症例であれば、早ければ1週間前後で症状が緩和することがあります。一方、せきが少し長引いて2~3週間ほど続く場合もあり、予後は極めて良好です。基礎疾患を有する患者に細菌感染を合併したような症例を除けば、一般的に予後は良好です。
参考)気管支炎の原因と自然治癒の可能性|回復までの経過と注意点 -…
熱は通常、1週間ほどで下がりますが、気道の内側が傷ついた場合には、その修復に時間がかかり、咳だけが2~3週間、長いと1か月以上続くこともあります。対症療法を行っていても咳が悪化したり高熱が続く場合、息切れなどの症状が出現した場合は、肺炎の合併を疑う必要があります。
かぜ症候群・急性上気道炎と同様に普段から感染予防をすることが最も大切です。マスク着用や手洗い、うがいを励行してください。手洗いとうがいは、感染症予防の基本で、外出から帰った時、食事の前、トイレの後などには必ず行いましょう。
参考)喘息と気管支炎の症状と予防法 - 東京田園調布駅前呼吸器内科…
手洗いは石鹸を使って30秒以上丁寧に行い、うがいは水でのうがいと消毒効果のあるうがい薬でのうがいを組み合わせると効果的です。適切な湿度管理や十分な睡眠と栄養、適度な運動も予防に役立ちます。禁煙も重要で、たばこを吸っている方は気管支への刺激が多いため発症しやすい傾向があります。
医療従事者として急性気管支炎の管理において重要なのは、適切な鑑別診断と不必要な抗菌薬使用の回避です。症状と病歴を元に診断を行い、肺炎などの合併症の可能性を評価することが必要です。
特に高齢者や基礎疾患を有する患者では、肺炎への進展リスクが高いため、注意深い経過観察が必要です。ウイルス性急性気管支炎に対して抗菌薬投与は推奨されないため、患者教育を通じて適切な対症療法の重要性を伝えることが大切です。
発熱、筋肉痛、咽頭痛、消化管症状、ならびに嗅覚および味覚障害は、他の集団よりもSARS-CoV-2の感染者で多くみられるため、これらの症状がある場合はSARS-CoV-2の検査を行うことが適切です。