アデノウイルスに感染した大人は、38~40℃の高熱を発症することが多く、この高熱が4~5日間持続するのが特徴的です。特徴的なのは、1日の間に40℃と37℃の間を上下する弛張熱を呈することがあり、この発熱パターンは1週間以上続く場合もあります。アデノウイルスは「夏のインフルエンザ」とも呼ばれるほど、頑固な発熱を引き起こすウイルスです。
参考)アデノウイルスは大人も感染する?症状や予防方法を解説  
発熱は感染後5~7日の潜伏期間を経て出現し、症状が出る2日前から既に他者への感染力を持っています。高熱が長期間続くため、体液の消失と水分摂取不足により脱水状態になるリスクが高く、経口補水液などでこまめな水分補給が必要です。
参考)アデノウイルス|大塚製薬
咽頭炎はアデノウイルス感染症で最もよく見られる症状の一つで、発熱と同時に喉の強い痛みや腫れが現れます。咽頭後壁が真っ赤に腫れ上がり、扁桃腺に白い膿が付着する様子は溶連菌感染症と類似しており、鑑別が重要になります。
参考)http://www.yoshida-cl.com/6-byo/adeno.html
喉の痛みは食事や水分摂取を困難にするほど強く、成人でも辛い症状として訴えられることが多いです。咳が悪化すると気管支炎や肺炎に進展する可能性もあり、特に免疫力が低下している方では注意が必要です。鼻水、鼻づまり、咳などの風邪様症状も伴うことが一般的です。
参考)アデノウイルス感染症 - 特集記事|くまい医院 - 愛知県春…
アデノウイルス感染症では、咽頭炎や発熱に加えて結膜炎を合併することがあり、この3症状が揃った状態を「咽頭結膜熱(プール熱)」と呼びます。結膜炎の症状としては、目の充血、大量の目やに、涙が止まらない、まぶしさを感じる、まぶたの腫れなどがあります。
参考)https://www.mediceo.co.jp/poc_web/lib/otsuka_003.pdf
特に流行性角結膜炎(はやり目)の場合、白目が赤く腫れ、異物感(目がゴロゴロする感覚)が生じ、角膜に点状の病変ができることもあります。角膜病変は3~4週間で軽快することが多いですが、視力障害を引き起こす可能性もあり、症状が長引く場合には眼科受診が推奨されます。
参考)アデノウイルス感染症 
胃腸炎症状として嘔吐、下痢、腹痛が出現することもあり、高熱を伴う場合もあります。出血性膀胱炎では血尿が見られることがあり、アデノウイルスは多彩な症状を引き起こすウイルスとして知られています。
参考)アデノウイルス感染症 - 13. 感染性疾患 - MSDマニ…
アデノウイルスの潜伏期間は、ウイルスの型によって異なりますが、一般的には5~7日程度とされています。呼吸器感染症の場合は3~10日と幅があり、感染してから発症するまでに一定の期間があるため、接触があった場合は1週間程度の経過観察が必要です。
参考)アデノウイルスは大人でも感染する?症状や受診目安についても解…
感染者は症状が出現する2日前から既に他者へ感染させる能力を持っており、発症前から周囲への感染拡大リスクがあります。アデノウイルスはインフルエンザと同等の非常に強い感染力を持つウイルスです。
症状が消失した後も、便中には2週間前後ウイルスが排泄され続けるため、回復後も入浴やプールでの感染リスクは継続します。熱が下がっても最低2日間は自宅療養が推奨され、登園・登校許可が必要な場合もあります。
参考)アデノウイルス|船橋駅 小児科|船橋こどもの森クリニック
大人のアデノウイルス感染症は、基本的に子供と同じ症状を呈しますが、「風邪」として扱われることが多いのが特徴です。大人は過去の感染により一定の免疫を獲得しているため、子供ほど重症化しないことが一般的ですが、感染力は非常に強く、周囲への配慮が必要です。
子供の場合、特に乳幼児では重症化しやすく、肺炎や細気管支炎などの下気道感染症に進展するリスクが高くなります。生後6ヶ月未満の乳児は母体からの抗体が減少する時期であり、呼吸器系や免疫系が未発達なため特に注意が必要です。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11715079/
大人の場合、学校保健法の適用がないため厳密な出勤停止ルールはありませんが、事業所の判断により休業が求められることがあります。法律上の出勤停止義務はないものの、感染力が非常に強いため、体調が優れない場合は無理せず休養し、職場での感染拡大を防ぐ配慮が重要です。
参考)咽頭結膜熱とは?子どもと大人の症状の違いも解説 - 医療法人…
大半のアデノウイルス感染症は自然治癒しますが、免疫力が低下している成人や高齢者では重症化のリスクがあります。免疫力が低下している方、もともと他の病気を持っている方では、アデノウイルスに対する抵抗力が弱く、肺炎などの重篤な合併症を引き起こす可能性が高まります。
参考)アデノウィルス感染症  
近年、健康な若年成人においても、特定のアデノウイルス型(7型、14型、55型)による重症呼吸器疾患の症例クラスターが報告されており、軍の新兵など閉鎖集団でのアウトブレイクも発生しています。重症化すると呼吸困難、肺炎、まれに脳炎や髄膜脳炎などを引き起こし、死に至る劇症例も報告されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11678703/
体内のウイルス量が多い場合、肺炎になるリスクが高まることが研究で示されています。呼吸が速い、ゼーゼー・ヒューヒューという音がする、胸やお腹がペコペコとへこむ陥没呼吸、肩で息をする肩呼吸、顔色や唇が青白い、水分をあまり摂れずぐったりしているなどの症状が見られた場合は、すぐに医療機関を受診する必要があります。
アデノウイルス感染症の診断には、迅速検査キットが広く使用されています。検査方法は、のどの粘膜または眼(結膜)の粘膜から綿棒で検体を採取し、診断キットで検査するもので、約10~15分で結果が判明します。インフルエンザ検査と類似していますが、アデノウイルス検査は鼻からではなく、のどや目から採取する点が異なります。
検査で陽性が出れば、アデノウイルス感染症と診断され、咽頭結膜熱(プール熱)と同様の扱いになります。検査は小さな子供でも安心して受けられる簡便なものです。
参考)アデノウイルス感染の治療・検査方法は?|府中市の小児科・アレ…
臨床的には、咽頭後壁が真っ赤になっている、扁桃腺に白い膿が付着している、高熱が持続している、周囲にアデノウイルス感染疑いの人がいるといった場合に検査が推奨されます。発熱や目の充血といった症状が持続して見られる場合も、早めの受診と検査が推奨されます。
参考)アデノウイルスの潜伏期間・大人もうつる|世田谷区のあのねコド…
アデノウイルス感染症には特異的な抗ウイルス薬が存在せず、治療は対症療法が中心となります。自身の免疫力でウイルスを退治する方法しかないため、栄養をつけて十分な休息をとることが最も重要です。
咽頭痛や発熱の多くは5日前後で回復するため、その間は最大限の免疫力を発揮できるよう、安静を保つことが推奨されます。全身状態が悪い場合や症状が辛い場合には、鎮痛解熱剤を使用して症状を和らげることもあります。
アデノウイルス感染症の基本的な対処法と予防策の詳細(健栄製薬)
脱水状態を予防するため、高熱による体液の消失と咽頭痛による水分摂取不足に十分注意し、経口補水液などでこまめに水分補給を行うことが大切です。症状が改善しない場合、呼吸困難や意識障害などが見られる場合は、早めに医療機関を受診する必要があります。
アデノウイルスの主な感染経路は、飛沫感染、接触感染、糞口感染の3つです。飛沫感染は、感染者の咳やくしゃみで放出される飛沫を吸い込むことで起こり、近距離での会話や密閉空間で感染リスクが高まります。
参考)アデノウイルスの潜伏期間はどのくらい?感染経路や予防方法も紹…
接触感染は、感染者が触れたドアノブ、テーブル、リモコン、タオルなどにウイルスが付着し、他の人がそれを触ることで感染します。アデノウイルスは物品や表面に数時間から数日間残存し、乾燥した環境でも比較的長く生存するため、家庭内や公共の場所での感染拡大が起こりやすいです。
参考)アデノウイルス予防|家族でできる対策法
予防方法として最も基本的で有効なのは、流水と石けんを用いた丁寧な手洗いです。トイレの後、食事の前後、帰宅時などにこまめに手洗いを行うことが推奨されます。タオルや食器、食品の共有は絶対に避け、感染者との物品の使い分けを徹底することが重要です。
アデノウイルスの感染経路と効果的な予防法の解説(健栄製薬)
重要な点として、アデノウイルスはノンエンベロープウイルスであるため、アルコール消毒では十分な効果が得られません。ドアノブやスイッチなどの共用部分の消毒には、次亜塩素酸ナトリウムを使用することが有効です。
参考)アデノウイルスって?症状や感染経路・予防法|アイン薬局
学校保健安全法では、咽頭結膜熱は第二種感染症に分類されており、子供の場合は「主要症状が消失した後、2日を経過するまで出席停止」と定められています。目の充血や発熱などの主な症状が消失して2日間経過するまでは自宅療養が必要です。
大人が感染した場合、法律上の出勤停止義務はありませんが、感染力が非常に強いため、会社によっては出勤を控えるよう求められることがあります。事業所での判断により休業が決定されるため、会社の規定に従う必要があります。
体調が辛い場合や、感染リスクが高い場合には、数日間仕事を休む必要があるかもしれません。特に医療従事者や乳幼児と接する職業の方は、周囲への感染拡大を防ぐため、症状が完全に改善するまで休養することが推奨されます。
流行性角結膜炎(はやり目)の場合は、「医師により感染のおそれがないと認められるまで」出席・出勤停止となるため、医師の診断が必要です。充血を伴わないアデノウイルス感染症については、解熱して全身状態が改善すれば登園や登校は可能であり、必ずしも医師の許可証は必要ありません。
参考)アデノウイルスの潜伏期間・大人にもうつる?|港区の高輪マリン…