京都大学による世界初の無作為化対照試験では、387名を対象とした2か月間の追跡調査において、水でうがいを行った群では風邪発症率が月100人中17.0人まで減少し、うがいをしない群の26.4人と比較して40%の発症抑制効果が確認されました 。この大規模研究により、日本独自の衛生習慣であるうがいの有効性が世界で初めて科学的に実証されました 。
参考)https://www.hoken.kyoto-u.ac.jp/wp-content/uploads/2015/03/gargle2007.pdf
興味深いことに、同研究ではヨード液うがい群の発症率が23.6人となり、水うがい群よりも効果が低い結果が示されました 。これは、ヨード液が口腔内の常在菌を過度に除去することで、病原体の侵入を防ぐ自然のバリア機能が低下したためと考察されています 。
参考)うがいのエビデンス
うがいは口臭の主要原因である口腔内細菌、口腔内乾燥、におい玉(陰窩膿栓)の3つすべてに直接的にアプローチできる効果的な対策です 。口腔内の食べカスや死んだ細胞などのタンパク質が細菌によって分解される際に発生する揮発性硫黄化合物(VSC)が口臭の原因となりますが、うがいによりこれらの原因物質を洗い流すことで臭気物質の発生を抑制できます 。
参考)うがいは口臭に効果がある?臭いの原因や効果的なうがいのやり方…
名古屋市立大学の研究では、水による10秒3回のうがいで口腔内生菌数に有意な減少が認められ、90分後も持続的な効果が確認されました 。さらに、イソジンうがい薬10秒3回では、水うがいと比較してより高い殺菌効果と持続効果が得られることが実証されています 。
参考)http://nurs.med.nagoya-cu.ac.jp/kansen.dir/common/dl/data09.pdf
人間は1日約2万リットルの空気を呼吸しており、その過程で口や鼻から入った空気中の異物を肺まで届かせないよう、のどから肺に至る気道の内壁をおおう粘液と線毛が重要な防御機能を果たしています 。うがいは、繊維運動のようなのど本来が持つ防御機能を高めるとともに、物理的な洗浄効果により口腔やのどを清潔に保ちます 。
参考)うがい
具体的なうがいの効果として、適度な刺激による粘液分泌と血行促進、のどへの潤い供給による粘膜機能維持、ホコリなどの異物を粘液とともに上気道から洗い出す作用、口腔粘膜への細菌付着抑制などが挙げられます 。これらの作用により、線毛運動をサポートし、体外への異物排出機能を活性化させることができます 。
参考)知っておきたい「うがい」のコツ!風邪の季節の前に効果的な方法…
効果的なうがいには正しい手順が重要で、まず「ブクブクうがい」で口の中の食べカスや有機物を除去してから「ガラガラうがい」を行う必要があります 。最初から上を向いてガラガラうがいを行うと、口の中のウイルスや細菌が水と一緒にのどに運ばれてしまい、かえって風邪をひくリスクが高まります 。
参考)正しいうがいの方法
正しい手順は以下の通りです。
うがい薬を使用する場合は、説明書記載の用法・用量に従ってうがい液を作成し、同様の手順で実施します 。
うがいの予防効果を最大化するには、適切なタイミングでの実施が重要です。特に効果的なタイミングは起床時、外出からの帰宅時、空腹時、夕方などの口臭が強くなりやすい時間帯です 。起床時は睡眠中に増殖した口腔内細菌を除去し、帰宅時は外部から持ち込んだウイルスや細菌を洗い流すことができます。
体調が優れない時や人混みを歩いた後は、通常よりも入念にうがいを行うことが推奨されます 。また、幼児への指導では3歳で約50%、4歳で約75%がブクブクうがいを習得できるとされており、段階的な教育アプローチが効果的です 。お風呂場での練習や声を出しながらの指導により、安全で正しいうがい習慣を身につけることができます 。
参考)幼児に「うがい」を教える方法と注意点