頭部外傷の症状と治療方法
頭部外傷の基本情報
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定義
頭部に外力が直接あるいは間接的に加わって頭皮、頭蓋骨、脳実質に生じる損傷
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主な受傷機転
交通事故、転倒・転落、スポーツ外傷など
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重症度評価
GCSスコア:軽症(13-15点)、中等症(9-12点)、重症(8点以下)
頭部外傷の分類と初期症状の見分け方
頭部外傷 は、その損傷部位や機序によって様々な分類がなされています。一次性脳損傷と二次性脳損傷に大別されます。一次性脳損傷は外力そのものによって直接生じる損傷であり、二次性脳損傷は受傷後に引き続いて全身あるいは頭蓋内の要因が悪化することで生じる損傷です。
損傷部位による詳細な分類は以下のとおりです。
頭皮の損傷
頭皮裂傷:頭皮は血管が豊富なため大量に出血します
頭皮挫傷:皮下出血によるたんこぶ(皮下血腫)が形成されます
頭蓋骨骨折
線状骨折:骨折線が単純に走行するもの
陥没骨折:骨片が脳側へ陥入するもの
頭蓋底骨折:髄液 漏や気脳症、神経症状を伴うことがある
頭蓋内出血
硬膜外血腫:頭蓋骨と硬膜の間に出血が生じるもの
硬膜下血腫:硬膜とクモ膜の間に出血が生じるもの(急性と慢性がある)
外傷性クモ膜下出血:脳挫傷 やびまん性脳損傷に合併することが多い
脳内血腫:脳実質内に出血が生じるもの
脳実質の損傷
脳震盪:脳の構造に損傷はないが精神機能が一時的に変化する状態
脳挫傷:脳実質の直接的な損傷
びまん性軸索 損傷:広範な神経線維の損傷で、画像上明らかな異常がなくても重度の意識障害を呈することがある
頭部外傷の初期症状として注意すべき主なものには。
意識障害(軽度の混乱から昏睡まで)
頭痛(軽症でも出現することが多い)
めまいやふらつき
嘔気 ・嘔吐(特に小児で多い)
記憶障害(特に受傷前後の健忘)
瞳孔異常(大きさの変化や対光反射の減弱)
四肢の運動障害 や感覚障害
言語障害
けいれん発作
特に警戒すべき危険サイン
意識レベルの悪化
瞳孔不同の出現または増悪
片麻痺などの局所神経症状の出現
繰り返す嘔吐
激しい頭痛の増強
これらの症状が見られる場合は、緊急の精査と処置が必要となります。なお、脳震盪後には「脳しんとう後症候群」として頭痛やめまい、疲労、記憶力低下、集中力低下、睡眠障害 、思考力低下、易怒性、抑うつ、不安などが続くことがあります。
頭部外傷による意識障害と神経学的評価のポイント
頭部外傷患者の評価において、意識レベルの評価は最も重要な指標です。一般的にはGlasgow Coma Scale(GCS)が用いられ、開眼反応(E:1-4点)、言語反応(V:1-5点)、運動反応(M:1-6点)の合計点(3-15点)で評価します。このスコアに基づき、軽症(13-15点)、中等症(9-12点)、重症(8点以下)に分類されます。
神経学的評価において注目すべきポイントは以下のとおりです。
瞳孔所見
大きさ(正常は2-5mm程度)
左右差(瞳孔不同は重要な徴候)
対光反射(消失や減弱は神経障害 を示唆)
眼球運動
眼球偏位(中脳障害や脳ヘルニアで生じる)
眼振の有無(小脳や前庭機能障害を示唆)
運動機能
四肢の自発運動
筋力低下や麻痺の有無と左右差
除脳硬直や除皮質硬直(重症の脳幹障害を示唆)
反射
腱反射の亢進/低下
病的反射(Babinski反射など)の出現
バイタルサイン
血圧上昇と徐脈(Cushing現象:頭蓋内圧亢進の徴候)
呼吸パターンの変化
意識障害の評価に際しては、その原因が頭部外傷に起因するものか、他の要因(アルコール中毒 、薬物中毒、代謝性疾患など)によるものかを鑑別することが重要です。また、意識障害の経時的変化を追跡観察することは極めて重要で、初期には軽度であっても徐々に悪化する場合は頭蓋内病変の増悪を示唆します。
特に注意すべき点として、高齢者や抗凝固薬 ・抗血小板薬服用中の患者では、軽微な外傷でも重篤な頭蓋内出血をきたす可能性があるため、より慎重な経過観察が必要です。また、外見上は軽症に見える患者でも、特に受傷から症状出現までに時間差がある「talk and deteriorate」症例には注意が必要です。
頭部外傷患者の意識評価では、以下の点に留意しましょう。
評価は定期的に(特に急性期は1-2時間ごと)行う
意識レベルの変化は記録に残し、悪化傾向があれば早急に医師に報告する
疼痛や鎮静薬の影響を考慮に入れる
小児や言語障害のある患者では、標準的なGCSでは評価が難しく、小児用GCSなど代替評価法を検討する
頭部外傷の緊急治療と応急処置の実際
頭部外傷患者に対する初期対応は、その後の予後を大きく左右します。治療の第一 歩は、外傷初期診療の原則に則った「ABCDE」アプローチから始まります。
A:気道確保 (Airway)
頸椎 保護を意識した気道確保
必要に応じて気管挿管 (GCS≦8の場合は適応を検討)
頭蓋底骨折が疑われる場合は経口挿管を選択
B:呼吸管理(Breathing)
適切な酸素化の維持(SpO₂>95%)
過換気 は原則として推奨されない(脳血管収縮による脳虚血 のリスク)
C:循環管理(Circulation)
静脈路確保と適切な輸液 管理
低血圧 の是正(収縮期血圧<90mmHgを避ける)
必要に応じて昇圧剤 の使用
D:神経学的評価(Disability)
GCSスコア、瞳孔所見、四肢運動の評価
神経学的所見の経時的変化の観察
E:全身の評価と露出(Exposure)
多発外傷の評価(頭部外傷の約50%は多発外傷)
体温管理(低体温・高体温ともに避ける)
頭部外傷の応急処置において特に重要なポイントは以下のとおりです。
頭部の出血に対する処置
清潔なガーゼやタオルで直接圧迫
頭皮裂傷は血管が豊富なため出血が多いが、小さな傷でも多量に出血することがあるため冷静に対応
明らかな陥没や骨片は触らず、専門医の到着を待つ
頭位管理
基本的には頭部を30度程度挙上(頭蓋内圧減少効果)
頸部を過度に屈曲/伸展させない(頸椎損傷の可能性)
脊椎の保護:脊椎安定性が確認されるまで頸椎カラーと脊椎ボードによる固定が必要
薬物治療
痛みに対してはオピオイド 系鎮痛薬(フェンタニルなど短時間作用型が望ましい)
頭蓋内圧亢進に対するマンニトールやグリセオール などの浸透圧 利尿剤
必要に応じた鎮静剤の使用
画像検査
頭部CT:急性期の出血性病変の検出に最適
MRI:急性期以降の詳細な評価に有用
その他必要に応じてCT血管造影やMRA
頭部外傷後の病院受診時の治療フロー
初期評価と蘇生
画像診断(頭部CTなど)
治療方針の決定(保存的治療か手術的治療か)
ICUまたは一般病棟での管理
手術治療が必要となる主な状態は以下のとおりです。
頭部打撲 :氷のうや保冷剤による冷却、必要に応じて内服薬
頭皮の外傷 :消毒と縫合
頭蓋骨骨折 (脳に損傷がなければ):入院による経過観察
急性硬膜外血腫 :開頭手術による血腫除去
急性硬膜下血腫 :開頭手術による血腫除去
脳挫傷が大きい場合 :損傷した脳の摘出手術
大量の頭蓋内血腫がある場合 :頭蓋骨を大きく外す減圧手術
手術後は、集中治療室 での厳密な神経モニタリングと全身管理が行われます。特に頭蓋内圧のコントロールは重要で、頭蓋内圧センサーを用いた継続的なモニタリングが行われることもあります。
頭部外傷後の二次性脳損傷と予防管理の重要性
頭部外傷における二次性脳損傷は、初期の物理的 損傷(一次性脳損傷)後に生じる生理学的反応や合併症によって引き起こされる追加的な脳の損傷を指します。この二次性脳損傷を最小限に抑えることが、頭部外傷管理の核心となります。
二次性脳損傷の主な原因
頭蓋内要因
脳浮腫:細胞性浮腫と血管性浮腫
頭蓋内圧亢進:脳灌流圧の低下をもたらす
血腫の増大:圧排効果による周囲組織の損傷
脳血管攣縮:局所脳虚血をもたらす
痙攣発作:脳の代謝需要増大と酸素消費量増加
全身性要因
低酸素血症:脳組織への酸素供給不足
低血圧:脳灌流圧低下による脳虚血
発熱:脳代謝亢進と酸素需要増加
電解質異常:特に低ナトリウム血症 は脳浮腫を悪化
高血糖 ・低血糖 :神経細胞 障害を増悪
二次性脳損傷の予防と管理
頭蓋内圧管理
目標:ICP<20-22mmHg、脳灌流圧>60mmHg
モニタリング:重症例では頭蓋内圧モニター留置を検討
治療階層。
第一段階:頭位挙上、過換気の回避、鎮静、浸透圧利尿剤
第二段階:高浸透圧療法、軽度過換気、脳脊髄液ドレナージ
第三段階:バルビツレート療法、低体温療法、減圧開頭術
呼吸・循環管理
酸素化の維持:PaO₂>80mmHg
血圧管理:収縮期血圧 >90mmHg
炭酸ガス分圧管理:PaCO₂ 35-40mmHg(過度の過換気を避ける)
代謝管理
体温管理:36-37℃を目標(高体温は積極的に治療)
血糖管理:140-180mg/dLを目標
電解質バランス(特にナトリウム)の維持
痙攣発作の予防と管理
予防的抗てんかん薬 の適応:硬膜下血腫、脳挫傷、外傷性クモ膜下出血など
早期痙攣(受傷後7日以内)と晩期痙攣(8日以降)の管
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