集中治療室(ICU)への入院では、「特定集中治療室管理料」という特別な入院料が適用されます。この管理料は健康保険の適用対象であり、3割負担の場合で1日から7日目までは約4万円、8日から14日目までは約3万6千円程度の自己負担が発生します。
参考)集中治療室(ICU)管理を受けたときに保障される医療保険
実際の医療費は、基本的な管理料に加えて各種検査、画像診断、投薬、処置費用が加算されるため、総額で1日あたり10万円程度かかる患者さんも珍しくありません。特に重篤な状態では人工呼吸器管理、血液浄化療法、各種モニタリング機器の使用により、医療費が大幅に増加する傾向があります。
参考)集中治療室(ICU)とは?種類、入る人、治療、体制、費用など…
病院の種類によっても費用は異なり、特定機能病院では7日以内でICU入院料1・2の場合、3割負担で約36,351円、ICU入院料3・4では約22,809円となっています。
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集中治療室の医療費は高額療養費制度の対象となるため、患者の自己負担額は所得に応じた限度額まで軽減されます。この制度により、一般的な所得区分(年収約370万~770万円)の方では、月額の自己負担限度額は80,100円+(医療費-267,000円)×1%となります。
高額療養費制度を効果的に活用するには、事前に加入している医療保険から「限度額適用認定証」を取得することが重要です。これにより、医療機関の窓口での支払いを自己負担限度額までに抑えることができ、一時的な高額な支払いを避けることが可能になります。
参考)https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/100714a.pdf
ただし、差額ベッド代や食事代(1日460円)、日用品費などは制度の対象外となるため、これらの費用は全額自己負担となることに注意が必要です。
参考)HCU入院費はいくら?ICUとの違い・高額療養費制度と医療保…
民間医療保険では、集中治療室管理に対する特別な給付制度を設けている保険会社があります。例えば、集中治療室管理を受けた場合に入院日額の50倍の一時金を支給する商品では、入院日額10,000円の契約で50万円の給付を受けることができます。
アクサダイレクト生命の「集中治療入院時一時金給付特約」では、所定の集中治療室管理を受ける入院開始時に一律20万円の給付金が支払われ、回数無制限で1回の入院につき1回まで受給可能です。この種の特約は新規契約時のみ付加可能で、中途付加はできない場合が多いため、事前の検討が重要です。
参考)アクサ生命・アクサダイレクト生命、 『アクサダイレクトのON…
集中治療室での治療は予期しない事態で必要となることが多く、高額な医療費による家計への影響を軽減するためには、こうした特約の付加や十分な入院給付金額の設定を検討することが推奨されます。
集中治療室では通常、治療上の必要性から個室や準個室での管理となるため、差額ベッド代について正しく理解しておくことが重要です。厚生労働省の通知により、治療上の必要性から集中治療室に入院した場合は、患者の希望によらない入室のため差額ベッド代を請求されることはありません。
参考)差額を自己負担して受ける診療
差額ベッド代の徴収が認められるのは、患者側が希望して特別療養環境室を利用する場合に限られており、病院側の都合による場合や治療上の必要性による場合は対象外となります。集中治療室への入院は医学的判断に基づく治療上の必要性によるものであるため、基本的に差額ベッド代の負担は発生しません。
参考)【FP監修】差額ベッド代とは?入院時の個室代や希望割合につい…
ただし、病院によっては説明が不十分な場合もあるため、入院時に差額ベッド代についての説明を受け、同意書への署名を求められた場合は、治療上の必要性による入室であることを確認することが大切です。
参考)https://hoken.kakaku.com/gma/select/sagaku-bed/
集中治療室入院に備えた費用対策として、まず健康保険の内容と高額療養費制度の自己負担限度額を事前に確認しておくことが基本となります。所得区分により限度額が異なるため、自身の区分を把握し、必要に応じて限度額適用認定証の申請手続きを理解しておくことが重要です。
民間医療保険の見直しでは、入院給付金の日額設定を十分に行い、集中治療室管理に対する特約の付加を検討することが推奨されます。特に1日あたり5,000~10,000円の給付があると、高額な医療費の実費負担に対する備えとして効果的です。
さらに、医療費控除の活用も視野に入れ、集中治療室での医療費、交通費、付添費用などの領収書を適切に保管することで、税制上の優遇措置を受けることも可能です。家族間での医療費の合算により控除額を最大化できる場合もあるため、年間を通じた医療費の管理が重要になります。
参考)No.1126 医療費控除の対象となる入院費用の具体例