収縮期血圧と拡張期血圧の正常値とその意味

収縮期血圧と拡張期血圧の正常値は、心臓と血管の健康状態を評価する重要な指標です。医療従事者として、これらの数値が示す意味と臨床的な意義を正しく理解していますか?

収縮期血圧と拡張期血圧の正常値

血圧の正常値を理解する3つのポイント
🩺
正常血圧の基準

診察室血圧で収縮期120mmHg未満かつ拡張期80mmHg未満、家庭血圧で115/75mmHg未満が正常範囲

📊
収縮期血圧の意味

心臓が収縮して血液を送り出す際の最大血圧で、心機能と血管弾力性を反映

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拡張期血圧の意味

心臓が拡張して血液を受け入れる際の最小血圧で、末梢血管抵抗の状態を示す

血圧は心臓が収縮と拡張を繰り返すポンプ作用によって変動します。収縮期血圧(最高血圧)は心臓が収縮して大量の血液を送り出す際に血管にかかる最大の圧力を示し、拡張期血圧(最低血圧)は心臓が拡張して血液が末梢に流れ出る際の最小の圧力を表します。
参考)収縮期血圧と拡張期血圧の違いとは?上の血圧・下の血圧の意味を…

日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2024」によると、成人における正常血圧は診察室血圧で収縮期120mmHg未満かつ拡張期80mmHg未満、家庭血圧では収縮期115mmHg未満かつ拡張期75mmHg未満と定義されています。
参考)健康維持のために知っておきたい!血圧の基礎知識と正常値【知っ…

収縮期血圧と拡張期血圧の測定原理

 

血圧測定には聴診法とオシロメトリック法の2つの主要な方法があります。聴診法では、上腕にマンシェットを巻いて加圧し、減圧しながら聴診器でコロトコフ音を聴取します。コロトコフ音は、カフ圧が収縮期血圧を下回り血液が狭窄した血管を通過する際に生じる血流の乱流や血管壁の振動によって発生する音です。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3541069/

コロトコフ音の発生メカニズムに関する超高速超音波研究
コロトコフ音の物理学的起源について、最新の超高速超音波画像技術を用いた詳細な解析が報告されています。

 

コロトコフ音が聴こえ始める点(Swan第1点)が収縮期血圧、音が完全に消失する点(Swan第5点)が拡張期血圧として記録されます。測定時には予測される収縮期血圧より30mmHg程度高く加圧することで、上腕動脈の血流を完全に遮断し、正確な収縮期血圧を捕捉できるようにします。
参考)血圧測定時、予測される収縮期より30mmHgくらい加圧して測…

収縮期血圧と拡張期血圧の正常値と分類

血圧は連続的なスペクトルとして捉えられ、複数の段階に分類されています。日本高血圧学会の基準では、正常血圧に続いて「正常高値血圧」(診察室血圧120-129/80mmHg未満)、「高値血圧」(130-139/80-89mmHg)という中間段階が設定されており、これらは高血圧ではないものの、正常血圧と比較して脳卒中や心疾患のリスクが上昇する状態です。
参考)知っておきたい血圧の正常値。各年代の平均値や高血圧・低血圧の…

📌 血圧値の分類(診察室血圧)

  • 正常血圧: 収縮期120mmHg未満かつ拡張期80mmHg未満
  • 正常高値血圧: 収縮期120-129mmHgかつ拡張期80mmHg未満
  • 高値血圧: 収縮期130-139mmHgかつ/または拡張期80-89mmHg
  • Ⅰ度高血圧: 収縮期140-159mmHgかつ/または拡張期90-99mmHg
  • Ⅱ度高血圧: 収縮期160-179mmHgかつ/または拡張期100-109mmHg
  • Ⅲ度高血圧: 収縮期180mmHg以上かつ/または拡張期110mmHg以上

血圧が低めの人(収縮期<120、拡張期<80mmHg)のリスクを1とすると、高値血圧の人で約1.7倍、Ⅰ度高血圧で約3.3倍、Ⅲ度高血圧では約8.5倍と、血圧レベルの上昇に伴い脳卒中リスクが急激に増加します。
参考)https://www.healthcare.omron.co.jp/cardiovascular-health/hypertension/hypertension-guide/02.html

収縮期血圧と拡張期血圧が反映する血行動態

血圧は血行動態学的には「血圧=心拍出量×末梢血管抵抗」という式で規定されます。収縮期血圧は主に心拍出量と大動脈の弾力性を反映し、拡張期血圧は末梢血管抵抗の状態を示します。
参考)https://www.megumikai.com/colum_riha/colum_riha15.pdf

収縮期血圧と拡張期血圧の差は「脈圧」と呼ばれ、血管の弾力性を反映する重要な指標です。平均血圧は「脈圧÷3+拡張期血圧」の式で算出され、例えば130/70mmHgの場合、脈圧60mmHg、平均血圧90mmHgとなります。平均血圧は心臓から離れた細動脈や毛細血管の状態を、脈圧は心臓に近い大動脈や太い動脈の状態を反映します。​
日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」一般向け解説冊子
高血圧の診断基準、治療目標、生活習慣改善について詳細に解説されています。

 

高血圧の発症には、心拍出量の増加(体液量の増大、心収縮力の増加)と末梢血管抵抗の上昇(血管収縮性物質の亢進、血管拡張性物質の減弱)の両方またはいずれかが関与します。交感神経機能やレニンアンジオテンシン系の亢進は、心拍出量を増加させるとともに血管緊張を高めて末梢血管抵抗も増加させます。
参考)https://www.chugaiigaku.jp/upfile/browse/browse1474.pdf

収縮期血圧の年齢による変化と孤立性収縮期高血圧

血圧は年齢とともに変化します。年代別の血圧平均値を見ると、20代男性では115.9/68.1mmHg、30代で117.2/73.8mmHg、40代で125.4/80.6mmHg、50代で129.7/81.0mmHg、60代で134.1/78.3mmHg、70代以上で133.9/74.5mmHgと、年齢とともに収縮期血圧が上昇する傾向があります。
参考)血圧の正常値を年代別に解説!数値を正常に保つ方法も詳しく紹介…

この理由は、加齢に伴い動脈や細静脈の弾力性が失われ、血液を素早く送り出せなくなるためです。特に高齢者では、収縮期血圧が140mmHg以上であるにもかかわらず拡張期血圧が90mmHg未満の「孤立性収縮期高血圧」が高頻度で認められます。
参考)高血圧

⚠️ 孤立性収縮期高血圧の特徴

  • 高齢者に多く見られる
  • 動脈硬化により大動脈の伸展性が低下
  • 収縮期血圧のみ上昇し拡張期血圧は正常または低下
  • 血管が硬くなっているため治療が必要

孤立性収縮期高血圧では、大型動脈の壁が硬くなり反射波が速く伝わって収縮初期に前方波に重なるため、収縮期血圧と脈圧が上昇します。この病態は動脈硬化の進行を示唆し、心血管イベントのリスク上昇と関連します。
参考)そもそも血圧とは?|血圧 ・血糖値・中性脂肪|森永乳業

収縮期血圧と拡張期血圧の測定における診察室血圧と家庭血圧の違い

血圧測定では、測定環境によって数値が大きく変動することが知られています。医療機関で測定すると緊張から血圧が高くなる「白衣高血圧」や、診察室では正常でも家庭では高値を示す「仮面高血圧」が存在します。
参考)家庭での正しい血圧測定で、あなたの健康を守る - 京都市下…

診察室血圧の高血圧基準は140/90mmHg以上ですが、家庭血圧では135/85mmHg以上とやや低く設定されています。現在の高血圧治療ガイドラインでは「診察室血圧と家庭血圧の間に差がある場合、家庭血圧による診断を優先する」とされており、家庭血圧測定の重要性が強調されています。
参考)【2025年最新】高血圧の新しい基準と対策について【日本は厳…

🏠 家庭血圧測定のポイント

  • 朝は起床後1時間以内、排尿後、朝食・服薬前に測定
  • 夜は就寝前に測定
  • 1-2分間安静後に測定
  • 座位で上腕にカフを巻き心臓の高さで測定
  • 2回測定してその平均値を記録

仮面高血圧の中には、夜間や早朝に血圧が上昇する「夜間高血圧」「早朝高血圧」があり、これらは脳卒中や心筋梗塞のリスクが高いにもかかわらず病院での測定だけでは見逃されやすいという特徴があります。家庭血圧測定により、これらの病態を早期に発見し適切な治療介入につなげることが可能となります。​

収縮期血圧と拡張期血圧の管理における生活習慣改善

血圧管理には薬物療法だけでなく、生活習慣の改善が不可欠です。特に重要なのは減塩、適度な運動、体重管理、節酒です。
参考)高血圧の食事療法・運動療法|板橋区・練馬区│光が丘クリニック

食塩中のナトリウムは血圧上昇の主要な原因物質です。ナトリウムが増えると体内の水分が増加して循環血液量が増え、昇圧物質に敏感に反応し、血管平滑筋を収縮させるため血圧が上昇します。日本人の平均食塩摂取量は1日10g以上ですが、高血圧の方は6g未満が推奨されます。
参考)当センターの血圧検査と食事等の生活習慣改善で高血圧症防止を

💡 減塩の具体的な工夫

  • 加工食品(ハム、ベーコン、漬物、インスタント食品)を控える
  • 調味料は「かける」ではなく「つける」程度に
  • 出汁や香辛料、レモンなどで風味を補う
  • 野菜、果物、海藻、キノコを積極的に摂取

運動療法も重要な非薬物療法です。有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、水泳など)を週3-5回、1回30分程度行うことで、収縮期血圧を5-10mmHg程度低下させる効果が期待できます。DASH食(Dietary Approaches to Stop Hypertension)や地中海食も高血圧予防に有効であり、野菜、果物、低脂肪乳製品を中心とし、ナトリウム、飽和脂肪酸、コレステロールを抑える食事スタイルが推奨されます。​
厚生労働省e-ヘルスネット「高血圧」
高血圧の定義、診断基準、予防と治療について、信頼性の高い情報が提供されています。

 

血圧管理において重要なのは、正常値を理解し、継続的にモニタリングすることです。収縮期血圧と拡張期血圧はそれぞれ異なる血行動態的意義を持ち、両者を総合的に評価することで心血管リスクをより正確に評価できます。医療従事者として、患者の血圧値を単なる数値としてではなく、心臓と血管の状態を反映する重要な生理学的指標として捉え、個別化された管理を提供することが求められます。​

 

 


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