気道確保の種類と適応および手技

気道確保には様々な種類があり、患者の状態や緊急度に応じて適切な方法を選択する必要があります。基本的な用手的気道確保から外科的気道確保まで、各手技の特徴と適応を理解していますか?

気道確保の種類

気道確保の分類
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用手的気道確保

頭部後屈・下顎挙上による基本的な手技

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声門上気道管理

ラリンジアルマスクやコンビチューブによる管理

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外科的気道確保

輪状甲状靭帯切開や気管切開による確実な気道

気道確保の種類は、換気口の位置によって主に4つのカテゴリーに分類されます 。
参考)http://www.igaku.co.jp/pdf/1801_ope-03.pdf

 

  1. 用手的気道確保(フェイスマスクを用いた換気) - 最も基本的で即座に実施可能な方法です
  2. 声門上器具 - ラリンジアルマスクやコンビチューブなどの器具を使用します
  3. 気管挿管 - 気管内チューブを直接気管内に挿入する確実な方法です
  4. 前頸部からの気道確保 - 外科的アプローチによる最終手段です

これらの手技は、環境要因・患者要因・施行者要因によって最適な方法が決定されます 。

気道確保の基本的手技

用手的気道確保の基本要素は、頭部後屈・下顎挙上(または下顎前突)・開口の3つで構成されます 。患者の頭部を挙上し頸部を伸展させて、外耳道が胸骨と同じ平面に位置し顔面が天井とおおよそ平行になるようにします 。
参考)気道確保および管理 - 21. 救命医療 - MSDマニュア…

 

下顎挙上法では、顎下の軟部組織と下顎を挙上するか、下顎枝を上方向に押すことにより、下顎骨を上方に移動させることで舌根沈下を防ぎます 。これにより上気道の軟部組織による気道閉塞を開放し、バッグバルブマスク換気に最適な姿勢を取らせることができます 。
簡便な気道確保手技として、経口・経鼻エアウェイの挿入があります 。経鼻エアウェイは男性7-8mm、女性6-7mmのサイズを使用し、鼻尖から耳朶までの深さで挿入します 。
参考)https://www.wakayama-med.ac.jp/med/eccm/assets/images/library/er_morning/07.pdf

 

気道確保における声門上器具の種類

**ラリンジアルマスク(LMA)**は、声門上エアウェイとして広く使用される器具で、先端を喉頭蓋に吸着させて気道を確保します 。食道からの逆流誤嚥をある程度防止することができ、気管挿管が必要であった多くの状況で使用されています 。
参考)気道確保 - Wikipedia

 

ラリンジアルマスクの適応は、無呼吸または重度の呼吸不全がみられる患者、意識のない患者または咽頭反射のない患者です 。短時間手術であること、仰臥位であること、適切なサイズが使用できることが条件となります 。
参考)ラリンジアルマスクの挿入 - 21. 救命医療 - MSDマ…

 

**コンビチューブ(ETC)**は、食道内に挿入し、食道内と咽頭の2ヶ所でバルーンを拡張することで食道を閉塞し気道を確保する声門上器具です 。2本のチューブで構成されており、「食道用(esophageal)」と「気管用(tracheal)」のチューブの組み合わせとなっています 。
参考)https://www.nakayamashoten.jp/sample/pdf/978-4-521-73709-6.pdf

 

コンビチューブは通常盲目的に挿入し、多くの場合長いほうのチューブが食道に挿入されます 。短いチューブの側面で、両カフ間には換気孔がいくつか付けられており、心肺蘇生中の気道確保器具として開発されています 。
参考)https://square.umin.ac.jp/jrcm/pdf/36-2/36-2-10.pdf

 

気道確保における気管挿管の適応

気管挿管は最も確実な気道確保の手段として位置づけられ、気管内チューブを気管に挿入し直接気管内へ換気路を確保する方法です 。主な目的として、急変時の気道確保、全身麻酔下での気道確保、人工呼吸器管理が挙げられます 。
参考)気管挿管の看護

 

気管挿管には「経口気管挿管」と「経鼻気管挿管」の大きく2つの方法があり、緊急時は経口気管挿管が第一選択とされます 。気管チューブのサイズ選択は、成人では体重や身長に基づいて決定し、小児では年齢に応じた計算式を用います 。
参考)月齢別の気管チューブのサイズと固定位置のめやすは?

 

小児の気管内チューブサイズは、カフなしの場合「内径(mm)=(年齢/4)+4」、カフ付きの場合「内径(mm)=(年齢/4)+3.5」で算出されます 。気管挿管時は、推測した適正サイズに加えて前後0.5mmのサイズも準備し、気管挿管後のエアリークの程度により適正サイズに調整します 。

気道確保における外科的手技の適応

外科的気道確保は、他の気道確保方法が困難または不可能な場合の最終手段として実施されます 。代表的な方法として、輪状甲状靭帯切開(輪状甲状膜切開)と気管切開があります 。
参考)https://www.jaam.jp/dictionary/dictionary/word/0821.html

 

輪状甲状靭帯切開は、気管挿管の禁忌があるか、他の挿入方法では気管挿管を到達できず、かつ暫定的な方法による気道管理および換気では不十分な場合に適応されます 。経皮的輪状甲状靭帯切開の禁忌は、より低侵襲な気道確保が可能な場合、穿刺部位より体幹側に気道狭窄が存在する場合、輪状甲状靭帯を明確に同定できない場合、出血傾向がある場合などです 。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka/120/9/120_1178/_pdf

 

気管切開術の適応には、上気道閉塞、長期間の人工呼吸管理、人工呼吸器離脱困難、気道分泌物過多、気道防御不能があります 。気管切開の方法として、前方切開法と逆U字切開法があり、短期間での抜去が期待できる場合は前方切開法を、2歳頃まで気管切開が必要な場合は逆U字切開法を選択します 。
参考)https://twmu-amc.jp/mce/NICU/kikansekkai.pdf

 

気道確保手技選択における医療安全の視点

気道確保手技の選択においては、患者の安全を最優先に考慮し、各手技の長所・短所、施行者の技術を熟知した上で決定する必要があります 。いわゆるエビデンスに振り回されることなく、眼前の患者の安全を守ることを優先させることが重要です 。
経口エアウェイの挿入は、意識がある、または咽頭反射がある患者には絶対的禁忌となります 。相対的禁忌として、口腔外傷や開口障害がある場合は実施できず、代わりに経鼻エアウェイが使用されます 。
参考)経口エアウェイの挿入 - 21. 救命医療 - MSDマニュ…

 

NPPVの一般的適応は、意識がよく協力的である、循環動態が安定している、気管内挿管が必要でないことが条件です 。一方、禁忌は非協力的で不穏な状態、気道が確保できない、呼吸停止や昏睡状態、自発呼吸のない状態での換気が必要な場合などがあります 。
参考)麻酔科マニュアル

 

適切な気道確保手技を選択することで、患者の生命を守り、安全な医療を提供することが可能となります。各手技の特徴と適応を理解し、状況に応じた最適な方法を選択することが医療従事者に求められる重要な技術です。