ドレナージ(排液)とは、血液・膿・滲出液・消化液などの感染原因の除去や減圧目的で患者の体外に誘導、排泄することです 。医療従事者にとって、この基本的な定義を理解することが、適切な患者管理の第一歩となります。
参考)https://www.kango-roo.com/learning/3827/
ドレナージのために挿入する管をドレーンチューブと呼び、患者の管理において臨床上きわめて重要な処置です 。特に手術後の感染予防や創部の治癒促進を目的として広く用いられており、体内に貯留した液体を排出することで合併症のリスクを軽減します 。
参考)https://kango.mynavi.jp/contents/nurseplus/career_skillup/20250717-2180324/
現代医療において、ドレナージは各診療科でそれぞれ発展してきた治療法があり、胸腔ドレナージ、腹腔ドレナージ、心嚢ドレナージなど、部位や目的に応じた多様な手技が確立されています 。医療技術の進歩により、より安全で効果的なドレナージシステムが開発され、患者の回復促進に大きく貢献しています 。
参考)https://www.mera.co.jp/column/5507/
ドレナージは目的により3つの主要な分類があります。治療的ドレナージは、体内に貯留した血液・滲出液が感染の原因となる場合や、膿が発熱の原因となる場合に適用され、頭蓋内血腫による頭蓋内圧亢進の除去なども含まれます 。
予防的ドレナージは、手術後の出血・滲出液・消化液の貯留が予想される際に、あらかじめ腹腔内や胸腔内の最も有効な位置にドレーンを留置する方法です 。脳外科手術後の硬膜外ドレナージや脳室ドレナージ、消化管吻合術後の腸瘻ドレナージなどが代表例となります。
情報(インフォメーション)ドレナージは、術後の出血、滲出液の貯留、縫合不全などを早期に発見するためのドレナージです 。外からの観察では分からない内部の状態変化を把握する重要な役割を担っており、迅速な対応により重篤な合併症を防ぐことができます 。
ドレナージ管理では、患者のバイタルサインや自覚症状の確認が最も重要です。血圧、脈拍、呼吸回数、呼吸音、SPO2の測定に加え、呼吸困難感や疼痛の有無を継続的に観察する必要があります 。特に疼痛が出現した場合、ドレーンのずれが疑われるため、固定状況の確認が必須となります。
ドレーンの状態観察では、吸引圧の設定、呼吸性移動の有無、ドレーンの閉塞・屈曲・圧迫の確認が重要で、排液バッグは常に患者の体より20cm以上低い位置に設置します 。排液の性状については、1時間あたりの排液量、血性・膿性の有無、混濁や浮遊物の確認を定期的に行い、異常があれば医師への報告が必要です 。
胸腔ドレナージの合併症として、挿入時の肋間動静脈・肋間神経損傷、肺や心臓の損傷、逆行性感染による膿胸などがあり 、再膨張性肺水腫も重要な合併症の一つです 。これらの合併症を早期発見するため、継続的な観察と適切な記録が不可欠となります。
参考)https://www.kango-roo.com/learning/3864/
近年のドレナージ技術では、リアルタイムモニタリング機能を備えたスマートドレナージシステムが開発され、患者の安全性と回復率の向上が図られています 。特に頭蓋外ドレナージ装置では、データモニタリングと遠隔監視機能が搭載される傾向にあり、センサーや接続機器を通じて医療スタッフが患者の頭蓋内圧やドレナージ状況をリアルタイムで監視できるようになっています 。
参考)https://presswalker.jp/press/29250
デジタル医療の発展に伴い、従来の目視による観察から、より精密で客観的な数値化された管理へと移行しています。新素材の開発により、生体適合性が向上し、感染リスクの低減と患者の快適性向上が実現されています 。
参考)https://www.innovations-i.com/release/1616524.html
技術革新により、低侵襲機器やインテリジェントドレナージシステムの導入が進み、システムの安全性、信頼性、使いやすさがさらに向上しています 。これらの進歩により、従来の手技では困難だった長期間の安全な管理が可能となり、患者のQOL向上に大きく貢献しています。
効果的なドレナージ管理には、定期的なメンテナンスと適切な交換時期の判断が重要です。整形外科手術後では、術直後で100~200g/時間程度の排液があり、翌日には10~20g/時間程度に減少し、術後36時間でほぼ排液がなくなるのが一般的な経過です 。
参考)https://knowledge.nurse-senka.jp/716/
排液管理は主に「はかり」を用いた重量計測により行い、術直後は30分から1時間に1回、翌日からは2時間に1回の頻度で計測・記録を実施します 。排液量を管理する目的は、時間当たりの排液量変化を確認し、出血のスピードと総量を把握することにより、輸液量の適正性や輸血の必要性を判断することです。
メンテナンス戦略として、24時間以上体内に留置してドレナージを行う場合は、ドレーンチューブの算定が可能となります 。ドレナージ部位の消毒などの処置料は所定点数に含まれますが、ドレーン抜去後に抜去部位の処置が必要な場合は、創傷処置として別途算定可能です。長期間の管理では、定期的な点検により1年に1回の状態確認を行い、経年劣化を考慮した5~10年での交換検討が推奨されています 。
参考)https://www.n-k-m.co.jp/blog_staff/4973/