ピーゼットシー(ペルフェナジンマレイン酸塩)は、フェノチアジン系の精神神経安定剤として統合失調症や術前・術後の悪心・嘔吐、メニエル症候群の治療に使用されています。しかし、特定の疾患や状態においては絶対禁忌とされており、医療従事者は慎重な判断が求められます。
絶対禁忌とされる主な疾患・状態は以下の通りです。
これらの状態を悪化させるおそれがあるため、投与は厳禁です。中枢神経抑制作用により、既存の意識障害や循環動態の悪化を招く可能性があります。
中枢神経抑制剤の作用を延長し増強させるため、呼吸抑制や意識レベルの低下を引き起こす危険性があります。
アナフィラキシーの救急治療に使用する場合を除き、アドレナリンとの併用は禁忌です。α遮断作用により血圧の急激な低下を招く可能性があります。
過敏反応により重篤な副作用を引き起こすおそれがあります。
血液障害のある患者への投与は特に注意が必要です。ピーゼットシーは血液障害を悪化させるおそれがあり、無顆粒球症や白血球減少などの重篤な血液系副作用が報告されています。
褐色細胞腫またはパラガングリオーマ、動脈硬化症あるいは心疾患の疑いのある患者では、血圧の急速な変動がみられることがあります。これは、ピーゼットシーのα遮断作用により、カテコールアミンの作用が修飾されるためです。
特に注意すべき点。
白血球数、血小板数の監視が必要です。異常値が認められた場合は、直ちに投与を中止し適切な処置を行います。
褐色細胞腫患者では、血圧の急激な変動により生命に危険を及ぼす可能性があります。
QT間隔の延長や不整脈の出現に注意が必要です。
重症喘息、肺気腫、呼吸器感染症等の患者では、呼吸抑制があらわれることがあるため慎重投与が必要です。ピーゼットシーの中枢神経抑制作用により、呼吸中枢の機能が低下し、既存の呼吸器疾患を悪化させる可能性があります。
皮質下部の脳障害(脳炎、脳腫瘍、頭部外傷後遺症等)の疑いがある患者では、原則禁忌とされています。治療上やむを得ないと判断される場合を除き、投与は避けるべきです。高熱反応があらわれるおそれがあり、このような場合には全身を氷で冷やすか、解熱剤を投与するなど適切な処置が必要です。
てんかん等の痙攣性疾患またはこれらの既往歴のある患者では、痙攣閾値を低下させることがあるため注意が必要です。
呼吸器疾患患者への対応。
中枢神経系疾患患者への対応。
妊婦または妊娠している可能性のある女性には投与しないことが望ましいとされています。動物実験において催奇形作用(口蓋裂の増加)が報告されており、胎児への影響が懸念されます。
妊娠後期に抗精神病薬が投与された場合、新生児に以下の症状があらわれたとの報告があります。
授乳婦への投与についても注意が必要です。ヒトで母乳中へ移行することが報告されているため、投与中及び投与後一定期間は授乳しないことが望ましいとされています。
妊娠・授乳期の管理ポイント。
高齢者では生理機能の低下により、副作用があらわれやすい状況にあります。特に以下の症状に注意が必要です。
高齢者では肝機能、腎機能の低下により薬物代謝が遅延し、薬物の蓄積が起こりやすくなります。そのため、患者の状態を観察しながら慎重に投与することが重要です。
小児等への投与では、幼児・小児で錐体外路症状、特にジスキネジアが起こりやすいため慎重投与が必要です。小児等を対象とした臨床試験は実施されていないため、安全性は確立されていません。
興味深い臨床知見として、遅発性ジスキネジアの発症リスクは年齢と投与期間に相関することが報告されています。20歳代前半の患者でも、約1年5カ月の投与により遅発性ジスキネジアを発症した症例があり、脳深部刺激療法(DBS)が必要となったケースも報告されています。
高齢者・小児への配慮事項。
長期投与における監視項目。
ピーゼットシーの投与においては、これらの禁忌疾患や特別な配慮が必要な患者群を十分に理解し、適切な患者選択と継続的な監視を行うことが、安全で効果的な治療の実現につながります。医療従事者は常に最新の添付文書情報を確認し、患者の状態に応じた個別化された治療を提供することが求められます。