不随意運動の種類と特徴、診断方法

不随意運動には振戦、ミオクローヌス、ジストニア、舞踏運動、バリズム、アテトーゼ、チックなど多様な種類があり、それぞれ異なる特徴と原因を持ちます。医療従事者として正確な鑑別診断ができていますか?

不随意運動の種類

不随意運動の主な分類
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律動性不随意運動

振戦、ミオクローヌスなど一定のリズムで反復する運動

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非律動性不随意運動

舞踏運動、バリズム、ジストニア、アテトーゼなど不規則な運動

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発現部位による分類

筋束レベル、個々の筋群、全身性など発現部位で分類

不随意運動とは、意志と無関係に起こるさまざまな体の運動であり、臨床的には意志による抑制が困難な運動を指します。代表的なものとして大脳基底核病変による錐体外路障害があり、振戦、バリズム、舞踏運動、ミオクローヌス、ジストニア、アテトーゼ様運動などが含まれます。不随意運動の多くは睡眠時に消失し、不安や精神的緊張、ストレスで悪化する特徴があります。
参考)不随意運動

不随意運動は運動の出現する部位により大きく3種類に分けられます。筋束のレベルに生じる不随意運動には筋線維束性収縮やミオキミアがあり、個々の筋および少数の筋群を侵す不随意運動には律動的なものとして手指振戦やミオトニア、非律動的なものとしてミオクローヌスが含まれます。臨床的には、発現部位、律動性の有無、出現時期を確認することが重要です。
参考)https://www.igaku-shoin.co.jp/misc/pdf/1402107652.pdf

不随意運動の系統的な観察においては、体のどの部位に出現するのか、律動的か非律動的か、不随意運動の速度や持続時間はどの程度か、リズムと律動性があるかに注意して記録を残すことが重要です。律動的であればリズミカルで速い動きがほとんどで振戦やミオクローヌスのことが多く、非律動的であれば速い動きではバリズム、舞踏運動、チック、遅い動きではジストニア、アテトーゼ様運動を考えます。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnt/36/4/36_372/_pdf/-char/ja

不随意運動の振戦とミオクローヌス

 

振戦は一定のリズムで反復する律動性の不随意運動であり、本態性振戦は10 Hz前後の頻度で出現し、感覚入力による影響を受けない特徴があります。振戦は安静時、姿勢時、動作時の出現パターンにより分類され、パーキンソン病では安静時振戦が典型的です。動作時振戦は動作中に認められ、動作を止めると減弱または消失します。
参考)福岡大学医学部 脳神経外科│患者さんへ│対象疾患│不随意運動…

ミオクローヌスは筋肉の不随意的かつ突発的な収縮を意味し、一定のリズムで素早い不随意運動があればミオクローヌスではなく振戦と呼ばれます。限局的であれば一つの筋肉がピクッと収縮する程度ですが、広範囲になると全身的に多数の筋肉が周期的に収縮を繰り返します。随意運動に伴う場合を動作時ミオクローヌスといい、さまざまな脳の病変で生じます。
参考)不随意運動のしくみ 患者への困りごとへの対処

ミオクローヌスの原因は多岐にわたり、無酸素状態、代謝性障害(急性腎不全、肝不全など)、頭部外傷、クロイツフェルト・ヤコブ病、アルツハイマー病多発性硬化症、てんかん性、生理的ミオクローヌス(睡眠時ミオクローヌス、しゃっくりなど)があります。脳の広範囲にびまん性に炎症が起きて錐体外路系の均衡が崩れた場合にミオクローヌスは生じると考えられており、小さな局所性病変では基本的に出現しません。
参考)不随意運動 - みやけ内科・循環器科【総合内科のアプローチ】

ミオクローヌスの分類と治療アプローチに関する詳細な解説(英語)

不随意運動のジストニアとアテトーゼ

ジストニアは主動筋と拮抗筋が同時に、持続的に筋収縮を生じることで、捻転や反復運動、異常な姿勢を生じる不随意運動です。ジストニアは局所性のものと全身性のものがあり、局所性ジストニアとしては眼瞼痙攣、痙性斜頸、書痙などが知られています。一部のジストニア患者にはL-ドパが著効する方がおり、ドパ反応性ジストニアといわれます。
参考)パーキンソン病および不随意運動症

アテトーゼは四肢遠位部や体幹にゆっくりとした、くねるような、緩徐で不規則な不随意運動を特徴とします。アテトーゼは脳性麻痺の方の不随意運動としてみられることがあり、運動過多のために栄養障害、QOLの低下などを招く危険性があります。アテトーゼとジストニアはしばしば複合的に出現し、鑑別が困難な場合があります。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmid/35/1/35_25/_pdf/-char/ja

ジストニアでは睡眠障害、呼吸障害、胃食道逆流などを来たしやすく、程度が強い場合には適切な対応が必要です。局所性ジストニアに対しては、ボツリヌス毒素を緊張の強い筋に注射することで、筋緊張を緩和させて症状を軽減させるボツリヌス治療が有効です。全身性で重度のジストニアに対しては、脳深部刺激療法(DBS)が選択されることがあります。​

不随意運動の舞踏運動とバリズム

舞踏運動は四肢遠位優位にみられ、比較的速く滑らかな、踊っているような不随意運動です。運動のパターンも速度も、あたかも随意運動であるかのような自然さをもつ不随意運動であり、全身のあらゆる部位に生じ、リズムはなく不規則です。舞踏運動は主に遠位筋および顔面の、非律動的、発作的、急速、抑制不可能な不随意運動であり、その動きは半意図的な行為に組み込まれることがあります。
参考)舞踏運動,アテトーゼ,およびヘミバリスム - 07. 神経疾…

バリズムは上肢または下肢を近位部から投げ出すような大きく激しい不随意運動であり、数秒に1回程度の頻度で不規則に繰り返し生じます。多くの場合、片側の上下肢に見られ、片側バリズムと呼ばれています。原因の大部分は血管障害で、責任病巣は対側の視床下核または視床下核―淡蒼球路にあり、障害の直後から運動を生じるとされています。​
舞踏運動とバリズムはいずれも大脳基底核の障害により生じる非律動性の不随意運動であり、責任病巣は尾状核、被殻-淡蒼球-視床下核を含む大脳基底核です。パーキンソン病の治療薬であるレボドパは、不随意運動(ジスキネジア)を引き起こすことがあり、これがハンチントン病の舞踏運動と似ているため、混同されることがあります。
参考)【2024年版】パーキンソン病と似ている? ハンチントン病と…

舞踏運動、アテトーゼ、ヘミバリスムの鑑別診断に関する専門的解説(MSDマニュアル)

不随意運動のチックと他の不随意運動

チックは顔面や肩をピクつかせたり思わず声を出したりする不随意運動であり、小児期に発症することが多い特徴があります。チックは非律動的な不随意運動に分類され、速い動きの不随意運動として舞踏運動やバリズムと鑑別する必要があります。チックは本人の意思とは無関係に身体に異常な運動が起きるもので、大脳の深部に位置する基底核の異常により生じます。
参考)小児の不随意運動

アカシジアは錐体外路症状(EPS)による「じっとできない」状態(静座不能)を指し、パーキンソン病や抗精神病薬の副作用として出現します。アカシジアは四肢に限局した不随意運動として分類され、患者は座位や立位を維持することが困難となります。遅発性ジスキネジアは抗精神病薬の長期服用により生じる不随意運動で、口がもぐもぐと動くなどの特徴的な症状があります。​
ミオキミアは筋がさざ波のように動く不随意運動であり、眼瞼ミオキミアが代表的です。ミオトニアは筋の持続的なこわばりを特徴とし、筋緊張性ジストロフィなどで認められます。これらの不随意運動は単独で出現するのみならず、複合的に出現することもしばしば認められるため、系統的に診察する必要があります。​

不随意運動の診断と検査方法

不随意運動の診断では、いつから始まりどのように始まったのかという発症時期と様式を確認し、家族歴や既往歴を確認することが最初のステップです。次に不随意運動を観察、診察し、臨床的には発現部位(体のどの部分に出現するのか)を確認後、律動的か非律動的かをまず観察します。出現時期(安静時、姿勢時、運動時のいつ出現するのか)を確認することも重要です。​
表面筋電図は相反した筋収縮の状態を明らかにするために有用であり、実際の不随意運動は症例により微妙に異なるためビデオにより記録を残しておくことはより重要です。脳・脊髄MRI、誘発電位、脳波などが、運動の性質を知り理解を深めるうえで役立ちます。血液検査、画像診断、電気生理学的検査、場合によってはビデオ撮影などによる症状の詳細な解析が必要となります。
参考)不随意運動症(本態性振戦、パーキンソン病、ジストニアなど)

遅発性ジスキネジアの診断では、内服している抗精神病薬の種類や服用期間などを確認し、体のどの部位に、どのような不随意運動がみられるか、例えば口や顔、手足などに特徴的な症状があるかなどについて確認します。同じような症状がみられる他の病気を除外(鑑別診断)した上で、診断を行います。小児の不随意運動が疑われる場合は、早めに小児神経専門医に診察を受けることが推奨されます。
参考)遅発性ジスキネジアはどのような検査を行いますか?|遅発性ジス…

不随意運動の診かたに関する詳細な学術論文(PDF)

不随意運動の原因疾患と錐体外路障害

不随意運動の原因疾患はパーキンソン病などの特発性の疾患、脳梗塞などの脳血管障害、薬剤性、遺伝性疾患によるものがあります。パーキンソン病では手の振るえ(振戦)、動きにくさ(寡動)、そして体の固さ(固縮)などが特徴的な症状です。脳梗塞や脳出血の後遺症、パーキンソン病などの神経変性疾患、脳性麻痺などの症状としてみられることがあります。
参考)第8回「不随意運動」

錐体外路症状とは、大脳皮質―大脳基底核ループの障害に由来する症状であり、不随意運動として扱われます。非律動性の不随意運動である舞踏運動、バリズム、アテトーゼ、ジスキネジアの責任病巣は大脳基底核(尾状核、被殻-淡蒼球-視床下核)です。約2 Hzでみられる口蓋振戦や眼球ミオクローヌスはギラン・モラレーの三角の病変で起こります。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscn/43/4/43_122/_pdf/-char/ja

薬の副作用で不随意運動が現れることもあり、特に抗精神病薬の長期服用による遅発性ジスキネジアが重要です。モノアミンの合成に関係する多くの酵素の異常が不随意運動症の原因となり、この一部で薬物治療が可能です。治療可能な不随意運動症として、ドパ反応性ジストニアなどが知られており、適切な診断により効果的な治療が可能となります。
参考)不随意運動【ナース専科】

不随意運動の治療とリハビリテーション

不随意運動に対する治療としては、不随意運動の種類や疾患による違いはありますが、一般には薬物治療、ボツリヌス治療、手術があります。薬物治療では不随意運動のタイプにより薬物を選択していき、例として一部のジストニア患者さんにはL-ドパが著効します。本態性振戦の方にはβ受容体遮断薬や抗コリン薬が試みられます。​
ミオクローヌスの治療には valproic acid(800–3000mg/日)、clonazepam(2–15mg/日)、もしくは primidone(500–1000mg/日)などが使用されます。基礎疾患の治療または原因物質の除去を行うことが重要です。手術治療には症状発現にかかわる部位を破壊する破壊術と、電極を留置し、電気刺激することにより脳の異常な信号を調節する脳深部刺激療法(DBS)があります。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnt/33/2/33_110/_pdf

不随意運動によって歩行や手指による巧緻運動などが遂行困難となる場合があり、例えば歩行器を使用する、書字や食事などで使用する器具を工夫するなど、環境調整を行うことで一時的に効果が得られることもあります。いくつかの工夫を試し、その時点でもっとも患者が安楽で快適な方法を選択できると良いでしょう。病巣の破壊による侵襲も大きいため、最近では脳の深部を電気刺激する脳深部刺激療法が選択されることが増えています。​
治療可能な不随意運動症に関する最新情報(東京都立神経病院)

 

 


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