オキシコドンによる便秘は、鎮痛に必要な用量の約1/50という低用量でも発生することが報告されています。これは、オピオイドが脳のμ受容体を介して鎮痛作用を発揮する一方で、腸管に存在するμ受容体にも作用し、アセチルコリン遊離を抑制することで腸蠕動運動が抑制されるためです。
参考)https://www.jspm.ne.jp/files/guideline/pain_2014/02_04.pdf
便秘対策は鎮痛コントロールに匹敵するほど重要な要素であり、オピオイド投与期間中は耐性がほとんど生じないため継続的な管理が必要です。医療従事者として以下の対応が推奨されます。
参考)若手薬剤師必見!オピオイドによる便秘の発現機序と対処法【事例…
📋 便秘対策の基本アプローチ
便秘と疼痛の二重苦により患者がオピオイドの服薬を拒否する可能性があるため、早期からの予防的介入が重要です。
オピオイドによる悪心嘔吐は服用患者の50~60%に発生し、鎮痛作用が発現する必要量の約1/10で起こります。悪心嘔吐の発生機序として、延髄化学受容器引き金帯(CTZ)への直接作用、前庭系への影響、消化管運動抑制などが関与しています。
参考)https://jpps.umin.jp/old/issue/magazine/pdf/0903_02.pdf
重要なことに、オピオイドによる悪心嘔吐には耐性が生じるため、制吐薬の予防投与は投与後1~2週間で減量もしくは中止を検討する必要があります。
参考)302 Found
🔹 制吐薬の選択と使用方法
プロクロルペラジンを予防的に投与することで、オキシコドン誘発性悪心嘔吐の発現を抑制できることが複数の臨床試験で示されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5905679/
オピオイドによる呼吸抑制は、脳幹延髄の呼吸中枢に存在するμ受容体に作用することで発生します。具体的には、延髄呼吸中枢が直接抑制され、動脈血二酸化炭素(CO2)濃度に対する感受性が低下することで呼吸活動が低下します。
参考)公益社団法人 福岡県薬剤師会 |質疑応答
呼吸抑制はオピオイドの重篤な副作用であり、特に使用開始時や増量時には注意深い観察が必要です。中枢神経系の副作用として、せん妄、意識障害、精神障害なども報告されており、これらは特にベンゾジアゼピン系薬剤や抗うつ薬との併用時にリスクが上昇します。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10930086/
⚠️ 呼吸抑制への対応
近年の研究では、オレキシン受容体2作動薬などの呼吸刺激薬が、オピオイド誘発性呼吸抑制を軽減しながら鎮痛効果を保持できる可能性が示されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11892998/
オキシコドンは主にCYP3A4およびCYP2D6という薬物代謝酵素によって代謝されます。この代謝経路は臨床的に重要な薬物相互作用の原因となります。
参考)医療用医薬品 : オキシコドン (オキシコドン錠2.5mgN…
CYP3A4阻害薬(ボリコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、リトナビル、クラリスロマイシンなど)との併用により、オキシコドンの血中濃度が上昇し副作用が増強されます。実際の臨床研究では、ボリコナゾール併用で血中濃度が約5倍、イトラコナゾール併用で約2倍上昇し、55~58%の患者で副作用が発現したことが報告されています。
参考)KAKEN href="https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-23929023/" target="_blank">https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-23929023/amp;mdash; Research Project…
💡 薬物相互作用の管理ポイント
クマリン系抗凝血薬(ワルファリン)との併用でも作用が増強される可能性があるため、投与量の調節が必要です。
参考資料:日本緩和医療薬学会によるオキシコドンの薬物相互作用に関する研究
https://jpps.umin.jp/researchgrant/theme3/
オキシコドンの適切な用量調節は、副作用管理と鎮痛効果のバランスを保つ上で極めて重要です。オピオイド鎮痛薬を使用していない患者では、オキシコドン塩酸塩として7.5~12.5mgを1日投与量とすることが推奨されています。
参考)オキシコドン注射液50mg「第一三共」の効果・効能・副作用
オキシコドンは連用により薬物依存を生じる可能性があるため、投与中止時には退薬症候(離脱症状)を避けるため漸減投与が必要です。せん妄などの精神症状が出現した場合には、オピオイドスイッチングによる対応が有効であり、せん妄惹起性はモルヒネ>オキシコドン>フェンタニルの順序で低下することが知られています。
参考)http://www.kanwa.med.tohoku.ac.jp/study/pdf/index/2018/no03.pdf
🔧 用量調節の実践的アプローチ
がん患者における長期投与の安全性と有効性については、OXN PR(オキシコドン-ナロキソン配合徐放製剤)が最大180/90mg/日の用量まで安全に使用できることが示されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5655918/
副作用データベースに基づく解析では、オキシコドンに関連する重要な有害事象として、モルヒネやフェンタニルと共通してせん妄、悪心嘔吐などが臨床的に認知されており、特に女性において副作用発現率が高い傾向が報告されています。
参考)副作用データベースに基づくオキシコドンの副作用発現傾向の解析
参考資料:がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(日本緩和医療学会)
https://www.jspm.ne.jp/files/guideline/pain_2014/03_02.pdf
腎機能障害患者におけるオピオイド選択は、代謝産物の蓄積リスクを考慮する必要があります。モルヒネでは代謝産物morphine-6-glucuronideが蓄積し、嘔気嘔吐、鎮静、呼吸抑制などの原因となりますが、オキシコドンは腎機能障害患者でも比較的安全に使用できることが報告されています。
参考)https://kirishima-mc.jp/data/wp-content/uploads/2023/04/761d43576471b386d2489ffa400b63e5.pdf
実際に、呼吸困難を訴えたがんおよび非がん疾患終末期の血液透析患者7症例に対してオキシコドンを経口あるいは持続皮下注射で投与した研究では、開始時の平均投与量は注射換算で3.8mg/日、平均最大投与量は19.7mg/日であり、呼吸抑制などの有害事象の発現はなく安全に使用可能でした。
参考)終末期血液透析患者の呼吸困難に対するオキシコドンの有効性と安…
🏥 腎機能障害時の注意点
さらに、オキシコドンは主にグルクロン酸抱合により代謝されるため、CYP代謝に依存するフェンタニルと比較して薬物相互作用が少ないという利点もあります。これにより、ポリファーマシーを伴う高齢がん患者や複数の併存疾患を持つ患者において、より安全な使用が期待できます。