梅毒は梅毒トレポネーマという細菌が原因で発症する性感染症で、進行具合によって症状が大きく変化します。無治療の場合、病期が進むにつれて重篤な合併症を引き起こすことがあります。各病期の症状を詳しく見ていきましょう。
第1期梅毒(感染から約3週間〜3ヶ月)
感染初期には、梅毒トレポネーマが侵入した部位に特徴的な病変が現れます。これは「硬性下疳(こうせいげかん)」と呼ばれ、以下の特徴があります。
この症状が自然に消えることから「治った」と誤解されがちですが、実際には体内で感染が進行しています。この段階で適切な治療を受けないと、第2期へと進行します。
第2期梅毒(感染から約3ヶ月〜3年)
第2期になると、血液を通じて細菌が全身に広がり、様々な症状が現れます。
この時期の症状も数週間から1ヶ月程度で自然に消失しますが、体内では感染が続いています。第2期までに治療を開始すれば、後遺症を残さずに治る可能性が高いとされています。
潜伏梅毒(無症状期)
第2期の症状が消失した後、外見上の症状がなくなる時期があります。この時期を「潜伏梅毒」と呼びます。症状はありませんが、体内では梅毒トレポネーマが増殖を続けており、検査では陽性反応が出ます。また、この期間も感染力を持ち続けています。
第3期梅毒(感染から約3年〜10年)
適切な治療を受けないまま数年が経過すると、約15〜30%の患者が第3期梅毒に進行します。この時期には。
この段階になると、病変部には梅毒トレポネーマがほとんど見られなくなるため、感染源となる可能性は低くなります。
第4期梅毒(感染から約10年以上)
最終段階では、臓器に重大なダメージが生じます。
この段階まで進行すると、生命に関わる重篤な合併症を引き起こす可能性があります。
梅毒の治療は1943年以来、ペニシリン系抗生物質が基本となっています。適切な治療を早期に行うことで、ほぼ完治が期待できます。現在日本で行われている主な治療法を紹介します。
経口抗生物質による治療
日本では長らく経口抗生物質による治療が主流でした。主な薬剤は以下の通りです。
注射による治療
2021年9月には、世界的な梅毒標準治療薬であるベンジルペニシリンベンザチン筋注製剤が日本でも承認されました。
神経梅毒の治療
神経系に感染が及んだ場合は、特別な治療が必要です。
治療効果の判定
治療開始後、定期的に血液検査を行い、抗体価の減少を確認することで治療効果を判定します。一般的には。
抗体価の減少が見られない場合は、再治療が必要になることもあります。
重要な注意点
梅毒の早期発見・早期治療のためには、適切な検査と正確な診断が不可欠です。現在行われている主な検査方法を解説します。
非特異的抗体検査
梅毒に感染すると体内で抗体が作られますが、これを検出する検査法として。
これらの検査は治療効果の判定に用いられますが、特異性が低いため確定診断には不十分です。
特異的抗体検査
梅毒トレポネーマに特異的な抗体を検出する検査。
これらの検査は感染の有無を判定するのに有用ですが、過去の感染と現在の感染を区別できないため、活動性の判断には非特異的抗体検査と組み合わせる必要があります。
直接検出法
初期病変から直接梅毒トレポネーマを検出する方法。
検査タイミングと注意点
梅毒は適切な予防策を講じることで感染リスクを大幅に減らすことができます。以下に主な予防方法と注意点を紹介します。
性行為における予防
定期的な検査
妊婦の検査と治療
ワクチンの現状
再感染の可能性と注意点
感染者の社会的責任
梅毒に感染すると、他の性感染症にもかかりやすくなるというリスクがあります。これは梅毒の病変が他の感染症の侵入口となったり、免疫機能に影響を与えたりするためです。特