アーテン錠(トリヘキシフェニジル塩酸塩)の添付文書では、重大な副作用として3つの症状が記載されています。
最も重要なのが悪性症候群です。抗精神病薬、抗うつ薬及びドパミン作動系抗パーキンソン病薬との併用において、本剤及び併用薬の減量又は中止により発現します。症状には以下が含まれます。
このような症状が出現した場合、体冷却、水分補給等の全身管理とともに適切な処置が必要です。白血球の増加や血清CK(CPK)の上昇、ミオグロビン尿を伴う腎機能の低下が現れることも多く報告されています。
精神錯乱、幻覚、せん妄も重要な副作用として位置づけられています。これらの症状が現れた場合には減量又は休薬するなど適切な処置が必要となります。
閉塞隅角緑内障は長期投与により現れることがあり、激しい眼痛、頭痛、急激な視力の低下として症状が現れます。
添付文書における「その他の副作用」として、頻度不明の副作用が系統別に詳細に記載されています。
精神神経系の副作用は特に注意が必要で、以下のような症状が報告されています。
これらの症状については、減量又は休薬するなど適切な処置を行うことが添付文書に明記されています。
消化器系では以下の副作用が記載されています。
特に口渇は10.2%と比較的高い発現率が報告されており、患者への事前説明が重要です。
泌尿器系では排尿困難、尿閉が報告されており、前立腺肥大等の患者では特に注意が必要です。
過敏症として発疹が報告されており、この場合は投与を中止するなど適切な処置が必要とされています。
添付文書では併用注意として重要な薬剤との相互作用が詳細に記載されています。
抗コリン作用を有する薬剤(フェノチアジン系薬剤、三環系抗うつ剤等)との併用では、腸管麻痺のリスクが高まります。症状として以下が挙げられています。
これらの症状は麻痺性イレウスに移行する可能性があり、腸管麻痺が現れた場合には投与を中止し、適切な処置を行う必要があります。
中枢神経抑制剤との併用では、本剤の作用が増強されることがあります。特に三環系抗うつ剤との併用では、精神錯乱、興奮、幻覚等の副作用が増強されるため、このような症状が現れた場合には減量又は休薬が推奨されています。
他の抗パーキンソン病薬(レボドパ、アマンタジン等)との併用では、精神神経系の副作用が増強される可能性があり、適切な減量又は休薬が必要です。
医療従事者が添付文書を基に患者指導を行う際の重要なポイントを解説します。
過量投与時の対応について、添付文書には具体的な症状が記載されています。アトロピン様症状として以下が現れる可能性があります。
これらの症状は服用数時間のうちに最高となり、中毒症状は通常2~3日で消失しますが、精神症状の場合、ときには数ヵ月続くこともあるため、症状が現れた場合にはただちに医師に連絡するよう指導が必要です。
自動車運転への影響については、添付文書で明確に注意喚起されています。眠気、眼の調節障害及び注意力・集中力・反射機能等の低下が起こる可能性があるため、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作には従事させないよう注意することが記載されています。
定期的な検査の重要性として、本剤投与中は定期的に隅角検査及び眼圧検査を行うことが望ましいとされており、患者にこれらの検査の必要性を説明することが重要です。
添付文書に記載されていない、実臨床で重要となる副作用の早期発見法について解説します。
認知機能の微細な変化は添付文書では見当識障害として記載されていますが、実際にはより微細な変化から始まることが多く見られます。患者の日常生活における以下の変化に注意が必要です。
これらの症状は家族からの情報収集が重要で、定期的な面談時に確認することが推奨されます。
体温調節機能の異常は添付文書では高温環境での発汗抑制として記載されていますが、季節の変わり目や室温変化に対する適応能力の低下として現れることがあります。特に高齢者では以下の点に注意が必要です。
消化器症状の重篤化サインとして、添付文書記載の便秘が腸閉塞に進行する可能性があります。以下の症状の組み合わせに注意が必要です。
これらの症状が複合的に現れた場合、速やかな医師への報告が必要となります。
KEGGデータベースによるアーテン錠の詳細な薬理情報
QLifeによるアーテン錠の患者向け情報
アーテン錠の公式インタビューフォーム(PDF)