水溶性ビタミンは、水に溶けやすく油脂には溶けにくい性質を持つビタミン群で、全13種類のビタミンのうち9種類が該当します。具体的には、ビタミンB群(ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸、ビオチン)の8種類とビタミンCの合計9種類で構成されています。
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これらのビタミンは血液などの体液に溶け込み、体内では長期間留まることができないため、過剰に摂取しても尿として速やかに排泄されます。このため過剰症のリスクは低い一方で、体内に貯蔵することが困難なため、毎日一定量を継続的に摂取する必要があります。
参考)https://www.kenkou-club.or.jp/kenko_yogo/s_19.jsp
脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)とは対照的に、水溶性ビタミンは主に小腸で吸収された後、門脈血を通じて肝臓に運ばれます。ビタミンB12を除くほとんどの水溶性ビタミンは、体内でそのままの形では長期間留まることができず、トランスポーターと呼ばれる輸送タンパク質と結合して利用されます。
参考)No.055 ビタミンの吸収について
ビタミンB1(チアミン)は、糖質代謝やアミノ酸代謝に関わる補酵素として機能し、特にエネルギー産生のクエン酸回路(TCA回路)において中心的な役割を果たします。チアミンピロリン酸(TDP)として活性化され、糖質からのエネルギー生成を促進するため「疲労回復ビタミン」とも呼ばれています。
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ビタミンB1の欠乏は、脚気という疾患を引き起こします。脚気には乾性脚気と湿性脚気があり、乾性脚気では中枢神経症状(ウェルニッケ脳症、コルサコフ症候群)や末梢神経症状(手足のしびれ、筋力低下、深部腱反射の低下)が現れます。湿性脚気では、末梢血管抵抗の低下により静脈還流が増加し、心拍出量が増えて高拍出性心不全(呼吸困難、頻脈、下腿浮腫)を引き起こします。
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ウェルニッケ脳症の三徴候は、(1)意識障害(失見当識、無関心)、(2)運動失調(歩行障害)、(3)眼球運動障害(眼振、外転障害)であり、医療従事者は特にアルコール依存症患者や偏食傾向のある患者でこれらの症状を見逃さないよう注意が必要です。
ビタミン欠乏症の臨床症状と看護に関する詳細情報
ビタミンB2(リボフラビン)は、補酵素FMN(フラビンモノヌクレオチド)およびFAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)として、エネルギー代謝や物質代謝に深く関与しています。TCA回路、電子伝達系、脂肪酸のβ酸化などのエネルギー代謝経路で機能するため、ビタミンB2が欠乏すると成長抑制が引き起こされます。
参考)https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000067134.pdf
食品中のリボフラビンの大半は、FADまたはFMNとして酵素タンパク質と結合した状態で存在しています。消化の過程で遊離したFADおよびFMNは、小腸粘膜のホスファターゼによって加水分解されてリボフラビンとなり、小腸上皮細胞で能動輸送によって吸収されます。
欠乏症状としては、口内炎、口角炎、舌炎、脂漏性皮膚炎などの皮膚・粘膜症状が特徴的です。これらの症状は、細胞の成長と修復が阻害されることによって生じます。日本で食されている平均的な食事中のビタミンB2の遊離型に対する相対生体利用率は64%と報告されており、食品の種類や調理法によって吸収率が変動することが知られています。
参考)ビタミンの解説
ビタミンB6(ピリドキシン)は、補酵素として多くのアミノ酸代謝を助けるとともに、免疫機能の正常な働きの維持、皮膚の抵抗力の増進、赤血球のヘモグロビン合成に関与しています。さらに神経伝達物質の生成にも関わり、ホモシステインの血中濃度を低下させることで心血管疾患のリスクを軽減します。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10316346/
ビタミンB12(コバラミン)は、神経細胞の代謝と成長を助け、脳内の神経伝達物質の生産を促進します。特にビタミンB1、B6とともに神経系の健康維持において相乗的に作用し、神経障害の予防や改善に寄与します。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6930825/
ビタミンB12欠乏症は、体内貯蔵量が多いため5~10年かけて徐々に進行します。高齢者における有病率は10%以上と推定され、最も多い原因は胃酸や膵液の分泌障害(53%)です。臨床症状には、疲労、精神症状(認知機能低下、抑うつ)、巨赤芽球性貧血、左右対称性の知覚異常、歩行障害、ハンター舌炎(舌の腫れ、びらん、舌乳頭萎縮)などがあります。
リスク因子として、萎縮性胃炎、プロトンポンプ阻害薬の長期内服、ビグアナイド薬(メトホルミン)の使用、胃切除後などが挙げられます。医療従事者は、これらのリスクを持つ患者に対して定期的なビタミンB12濃度のモニタリングを検討すべきです。
ビタミンC(L-アスコルビン酸)は、強力な抗酸化物質として体内で発生する活性酸素の働きを弱め、細胞を酸化ストレスから保護します。ヒトは多くの動物と異なり、ビタミンCを体内で合成できないため、食事からの摂取が不可欠です。
参考)厚生労働省eJIM
ビタミンCは、ナトリウム依存性ビタミンCトランスポーター(SVCT)を介して小腸から吸収されます。血中濃度が一定レベルを超えると吸収率が低下し、過剰分は尿中に排泄されます。このため、1g以上のビタミンCを摂取することで血中濃度が量依存的に上昇することが研究で示されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10716693/
ビタミンCは、コラーゲン合成に必須であり、皮膚、血管、骨の健康維持に重要です。また、酸化されたビタミンEを再び活性化させる働きがあり、ビタミンEとの併用により抗酸化作用が相乗的に高まります。心血管疾患や動脈硬化の予防において、ビタミンCとEの同時摂取が推奨されます。
参考)https://www.healthcare.omron.co.jp/resource/column/life/7.html
水溶性ビタミンの吸収は、特異的な膜輸送タンパク質によって厳密に制御されています。溶質運搬体(SLC)ファミリータンパク質やATP結合カセット(ABC)トランスポーターが、各ビタミンの効率的な取り込みと細胞内分布を担っています。
参考)https://academic.oup.com/lifemeta/article/doi/10.1093/lifemeta/loaf008/8068533
ビタミンB群の多くは、吸収される前に一旦リン酸エステルが加水分解され、細胞内に取り込まれた後に再びリン酸エステル化されて体内で利用されます。この過程において、亜鉛などのミネラルの栄養状態がビタミンBの吸収・代謝に影響を与えることが明らかになっています。
参考)https://www.kyoto-u.ac.jp/sites/default/files/2024-09/web_2409_FASEB_J_Kambe-1dfe6e70c886a6c1bf8a4e8b4f4eab74.pdf
ビタミンB群とビタミンCは相互に補完的に働き、神経伝達物質やストレスホルモンのバランスを整えることに寄与します。特にビタミンB1、B2、葉酸などは動脈硬化の予防において相互効果をもたらすことが示されています。医療従事者は、単一ビタミンの補充ではなく、複数のビタミンを組み合わせた包括的な栄養管理を検討することが重要です。
参考)ビタミンCとの相性は?一緒に摂りたい栄養素とは
厚生労働省が定める水溶性ビタミンの推奨摂取量は、欠乏症を予防するための最低限の基準です。例えば、ビタミンB1の推奨量は男性1.2mg/日、女性1.1mg/日ですが、これは欠乏しないラインであり、予防医学の観点からはより高い摂取量が推奨される場合があります。
参考)【摂取基準量まとめ】ビタミン・ミネラル15項目の予防医学的な…
水溶性ビタミンは体内に蓄積されにくいため、過剰症の心配は一般的に少ないとされていますが、大量摂取による副作用も報告されています。ナイアシンは50mg以上の摂取で一過性の皮膚紅潮やかゆみ(フラッシュ)が起こることがあり、葉酸は5-10mg以上の摂取で乳がんや前立腺がんのリスク増加が懸念されます。
参考)https://www.seiyuukai.or.jp/health/tukarenivitamin/tukarenivitamin.htm
臨床現場では、慢性腎臓病(CKD)患者や透析患者において水溶性ビタミンの需要が増加し、透析によって損失が生じることが知られています。これらの患者群では、適切なビタミン補充が治療成績の改善につながる可能性があり、定期的な血中ビタミン濃度のモニタリングと個別化された補充療法が重要です。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9964313/
厚生労働省による水溶性ビタミンの策定指標に関する公式資料
水溶性ビタミンを豊富に含む食品としては、ビタミンB1は豚肉・豆類・玄米、ビタミンB2はレバー・卵・うなぎ、ビタミンB6は赤身魚・にんにく・ナッツ類、ビタミンB12は二枚貝・レバー・のり、ビタミンCはピーマン・キウイフルーツ・レモンなどが挙げられます。医療従事者は、患者の食事内容を評価し、必要に応じて食事指導やサプリメント補充を検討することが求められます。
参考)水溶性ビタミンとは?9種類のビタミンのはたらきや食事摂取基準…

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