現在確認されているビタミンは全部で13種類存在し、これらは溶解性によって「水溶性ビタミン」と「脂溶性ビタミン」の2つのグループに大別されます 。水溶性ビタミンは文字通り水に溶けやすい性質を持ち、血液などの体液に溶け込んで全身を循環します 。一方、脂溶性ビタミンは水に溶けにくく油脂に溶ける性質があり、主に肝臓や脂肪組織に貯蔵される特徴を持ちます 。
参考)水に溶けるビタミンと油に溶けるビタミン「毎月19日は食育の日…
この溶解性の違いは、各ビタミンの体内での動態や摂取方法、さらには健康への影響に大きな違いをもたらします 。水溶性ビタミンは余分に摂取した分が尿として排出されるため体内蓄積のリスクが低い反面、毎日の継続的な摂取が必要です 。脂溶性ビタミンは体内に蓄積される性質があるため、欠乏症になりにくい一方で、大量摂取による過剰症のリスクが存在します 。
参考)5.ビタミン
脂溶性ビタミンには、ビタミンA、D、E、Kの4種類が含まれ、覚え方として「だけ(DAKE)」という語呂合わせが医療現場でよく使われます 。これらのビタミンは油脂と一緒に摂取することで吸収率が向上し、肝臓や脂肪組織で48時間程度貯蔵される特徴があります 。
参考)https://www.shiroyama-hsp.or.jp/content/files/eiyou/kenkoukyositu.Vol5.pdf
ビタミンAは視力の維持、免疫機能の強化、皮膚と粘膜の健康維持に重要な役割を果たします 。レバー、魚、乳製品、卵黄、ニンジンやほうれん草などの緑黄色野菜に豊富に含まれています 。ビタミンDはカルシウムとリンの吸収を助け、骨と歯の健康維持に不可欠で、魚類や強化乳製品に含まれるほか、日光浴による皮膚での合成も可能です 。
参考)ビタミン 食材 サプリメント
ビタミンEは強力な抗酸化作用により細胞膜を保護し、血液循環の改善に寄与します 。ナッツ、種子、植物油、緑黄色野菜に多く含まれています 。ビタミンKは血液凝固の調整と骨の健康維持に関与し、緑色野菜、大豆油、納豆などに含まれます 。
参考)脂溶性ビタミンの役割りについて
水溶性ビタミンには、8種類のビタミンB群(B1、B2、B6、B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン)とビタミンCの計9種類が含まれます 。これらは主に代謝に関わる働きを持ち、糖質・脂質・たんぱく質の代謝を滞りなく行う補酵素として機能します 。
参考)ビタミンの概要 - 11. 栄養障害 - MSDマニュアル家…
ビタミンB1(チアミン)は糖質の代謝に不可欠で、豚肉やうなぎに多く含まれています 。ビタミンB2(リボフラビン)は脂質の代謝に関与し、レバーや乳製品に豊富です 。ビタミンB12は血液細胞の合成と神経機能に重要で、動物性食品に限定的に含まれるため、菜食主義者は特に注意が必要です 。
参考)水溶性ビタミンとは?種類と働き、含まれている食べ物について解…
ビタミンCは強力な抗酸化作用を持ち、コラーゲン合成、免疫機能の強化に寄与します 。柑橘類、野菜、果物に豊富に含まれていますが、熱に弱く調理や保存で容易に分解されるため、新鮮な状態での摂取が推奨されます 。
参考)ビタミンを水に溶かして飲むのはOK?粉末や錠剤タイプ別の注意…
ビタミンの吸収率は摂取方法によって大きく左右されます 。脂溶性ビタミンは油脂と同時に摂取することで吸収率が劇的に向上するため、炒め物やドレッシング、オイルを使った料理と組み合わせることが効果的です 。特にβ-カロテンの場合、油に溶かしたサプリメントと比較して生野菜からの吸収率は1/7程度まで低下するため、調理方法の工夫が重要です 。
参考)ビタミンの種類と働き、食べ物からの効率的な摂り方
水溶性ビタミンの効率的な摂取には、調理による損失を最小限に抑える工夫が必要です 。茹でるよりも蒸す調理法を選択し、煮込み料理では汁まで摂取することで流出したビタミンを余すことなく摂取できます 。ビタミンB1の吸収率を高めるには、玉ねぎやニンニク、ニラに含まれるアリシンと組み合わせることが効果的です 。
参考)ビタミンB群が多い食品とは
摂取タイミングも吸収率に影響を与えます 。脂溶性ビタミンは食事と一緒に摂取することで吸収が促進される一方、水溶性ビタミンは空腹時でも比較的良好な吸収を示しますが、大量摂取時は分割摂取により吸収率を最適化できます 。
参考)No.055 ビタミンの吸収について
脂溶性ビタミンの過剰摂取は深刻な健康被害を引き起こす可能性があります 。ビタミンA過剰症では急性の場合、脳脊髄液圧上昇による頭痛や嘔吐が生じ、慢性の場合は肝障害、関節痛、皮膚の乾燥・かゆみ、脱毛、視力障害が出現します 。妊娠中の過剰摂取は胎児奇形のリスクを高めるため特に注意が必要です 。
参考)ビタミン過剰症 - みんなの家庭の医学 WEB版
ビタミンD過剰症では高カルシウム血症を引き起こし、食欲不振、悪心、全身倦怠感、腎障害、意識障害などの症状が現れます 。血管壁や腎臓、脳にカルシウムが沈着することで重篤な合併症を生じる可能性があります 。ビタミンK過剰症では黄疸、呼吸困難、皮膚水疱などの症状が報告されています 。
参考)ビタミン過剰症
一方、水溶性ビタミンは尿中排泄により過剰症のリスクは比較的低いとされていますが、メガビタミン療法など大量摂取では副作用のリスクが存在します 。ビタミンCの場合、200mg/日程度までは90%が吸収されますが、1000mg/日以上では吸収率が50%以下に低下し、消化器症状を引き起こす場合があります 。
参考)マルチビタミンとメガビタミン - 26. その他の話題 - …
脂溶性ビタミンの欠乏症は、脂肪吸収不良を起こす疾患で特に問題となります 。慢性下痢、クローン病、嚢胞性線維症、膵臓疾患、胆管閉塞などの消化器疾患では脂溶性ビタミン全体の吸収が阻害されます 。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11242131/
ビタミンA欠乏では夜盲症、乾燥肌、免疫機能低下が生じます 。ビタミンD欠乏はくる病や骨軟化症の原因となり、カルシウム吸収不良により骨密度低下を招きます 。ビタミンE欠乏では神経障害や筋力低下が、ビタミンK欠乏では出血傾向や骨密度低下が認められます 。
参考)https://www.jpof.or.jp/Portals/0/images/publication/leaf_02_181003.pdf
治療では、単一ビタミンの補充よりもADEK複合製剤による包括的な補充療法が推奨されます 。リポソーム製剤やミセル加工製剤の使用により、消化機能が低下した患者でも効率的な吸収が可能となります 。補充療法の効果判定には血中ビタミン濃度の定期的な測定が重要で、過剰症を避けながら最適な治療効果を得ることができます 。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7601514/