タゾバクタムピペラシリン商品名と効果副作用使い方の全て

タゾバクタムピペラシリン商品名であるタゾピペの適応症、効果的な使用法、注意すべき副作用について医療従事者が知っておくべき重要なポイントを詳しく解説していきます。あなたは適切な使用法を理解していますか?

タゾバクタムピペラシリン商品名と臨床応用

タゾバクタムピペラシリンの基本情報
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主要商品名

タゾピペ配合静注用として各製薬会社から発売

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配合比率

タゾバクタム:ピペラシリン=1:8の固定比

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作用機序

β-ラクタマーゼ阻害剤と広域ペニシリンの合剤

タゾバクタムピペラシリンの主要商品名と製剤特性

タゾバクタムピペラシリンの主要商品名は「タゾピペ」として知られており、各製薬会社から様々な規格で販売されています。タゾピペ配合静注用2.25「明治」、タゾピペ配合静注用4.5「DSEP」など、多くのジェネリック医薬品が市場に流通しています。
参考)https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00065874

 

この薬剤は、β-ラクタマーゼ阻害剤であるタゾバクタムと幅広い抗菌スペクトルを有するペニシリン系抗菌薬ピペラシリンを力価比1:8の割合で配合した製剤です。特筆すべき点として、先発医薬品にない「タゾピペ配合点滴静注用バッグ2.25」という規格も追加されており、利便性の向上が図られています。
参考)https://med.daiichisankyo-ep.co.jp/products/files/1172/EPTAP1L01401-1.pdf

 

この配合比は、β-ラクタマーゼ産生による耐性菌の増加により、ピペラシリン単独では使用が困難となった重症・難治性感染症に対して効果を発揮するよう設計されています。タゾバクタムがβ-ラクタマーゼのペニシリナーゼ、セファロスポリナーゼ及び基質特異性拡張型β-ラクタマーゼを強く不活性化するため、ピペラシリンがこれらの酵素によって加水分解されることを防御し、ピペラシリン耐性菌に対して抗菌力を示します。
参考)https://www.carenet.com/drugs/category/antibiotics/6139505F4069

 

タゾバクタムピペラシリンの効果と適応症

タゾバクタムピペラシリンは、ブドウ球菌属等のグラム陽性菌、緑膿菌等のグラム陰性菌及び嫌気性菌まで幅広い抗菌スペクトルを有し、殺菌的に作用します。β-ラクタマーゼ産生のピペラシリン耐性のグラム陽性菌及びグラム陰性菌に対して強い抗菌力を示すことが特徴的です。
適応症は以下の通りです。

  • 一般感染症:敗血症、肺炎、腹膜炎、腹腔内膿瘍、胆嚢炎及び胆管炎

    参考)https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00065858

     

  • 泌尿器系感染症:腎盂腎炎及び複雑性膀胱炎
  • 皮膚軟部組織感染症:深在性皮膚感染症、びらん・潰瘍の二次感染

臨床試験において、β-ラクタマーゼを産生しピペラシリン耐性菌による感染症に高い有効性を示しており、複雑性膀胱炎で77.8%(175/225例)、腎盂腎炎で80.3%(57/71例)、敗血症で75.0%(3/4例)の臨床効果が確認されています。
参考)http://www.antibiotic-books.jp/drugs/94

 

この薬剤は、多くのグラム陽性菌、グラム陰性菌、嫌気性菌に対する広域な抗菌スペクトルを持つため、経験的治療として使用される場合も多く、特にPseudomonas aeruginosaを含む感染症の治療に重要な役割を果たしています。
参考)https://academic.oup.com/ofid/article/doi/10.1093/ofid/ofad500.1871/7448073

 

タゾバクタムピペラシリンの用法用量と投与方法

タゾバクタムピペラシリンの用法用量は、感染部位や重症度により調整されます。

 

成人の標準用法用量

  • 一般感染症(敗血症、肺炎、腹膜炎、腹腔内膿瘍、胆嚢炎及び胆管炎):通常、1回4.5g(力価)を1日3回点滴静注します
  • 肺炎の場合:症状、病態に応じて1日4回に増量可能です
  • 腎盂腎炎及び複雑性膀胱炎:1回4.5g(力価)を1日2回点滴静注し、症状に応じて1日3回に増量できます

小児の用法用量

  • 1回112.5mg(力価)/kgを1日3回点滴静注します

    参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/DrugInfoPdf/00066395.pdf

     

  • 症状、病態に応じて1回投与量を適宜減量できますが、1回投与量の上限は成人における1回4.5g(力価)を超えないものとします

特殊な投与法
延長注入(Extended Infusion)や持続注入(Continuous Infusion)という投与方法も注目されています。これらの方法により、β-ラクタム系抗菌薬の時間依存性の特性を活用し、より効果的な抗菌効果を得ることが可能です。研究では、持続注入により適切な薬物濃度を維持し、特にβ-ラクタマーゼ産生Enterobacteralesに対する効果を最適化できることが示されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10376400/

 

投与時は必要に応じて緩徐に静脈内注射することも可能ですが、点滴静注が推奨されます。腎機能低下患者では用量調整が必要であり、患者の状態を観察しながら慎重に投与することが重要です。

タゾバクタムピペラシリンの副作用と注意点

タゾバクタムピペラシリンの副作用発現率は4.64%(103/2221例)と報告されており、比較的安全性の高い抗菌薬とされています。
主な副作用(頻度順)。

臨床検査値の変動

  • γ-GTP上昇(10%;3例/30例)
  • ALT(GPT)上昇(5.05%;105例/2081例)
  • 好酸球増多(3.82%;72例/1884例)
  • AST(GOT)上昇(3.69%;77例/2084例)

重大な副作用
2015年に薬剤性過敏症症候群が重大な副作用として追加され、中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、急性汎発性発疹性膿疱症などの重篤な皮膚障害も報告されています。
参考)https://www.m3.com/clinical/open/news/390172

 

特に注意が必要な患者

  • 小児:2歳未満で57.7%、2歳以上6歳未満で40.6%の下痢・軟便の副作用発現率が報告されています

    参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00065858.pdf

     

  • 高齢者:生理機能の低下により副作用が発現しやすく、ビタミンK欠乏による出血傾向にも注意が必要です

希少だが重篤な副作用として、心筋障害を伴う心不全の症例も報告されており、患者の状態を慎重に観察することが重要です。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10865456/

 

タゾバクタムピペラシリンの薬剤師介入と適正使用

タゾバクタムピペラシリンの適正使用において、薬剤師の介入が重要な役割を果たしています。近年の研究では、薬剤師による薬物利用評価と介入により、使用の適正化が大幅に改善されることが示されています。
参考)https://www.mdpi.com/2079-6382/12/7/1192/pdf?version=1689406112

 

薬剤師介入による改善効果
薬剤師介入前後の比較研究において、以下の改善が認められました:

  • 不適切な経験的広域スペクトラム使用:31%から12%に減少
  • 腎機能に応じた最適化された用量調整:49%から94%に改善
  • 適時な細菌培養検査の実施:47%から74%に改善
  • 迅速なde-escalation:31%から53%に改善
  • 延長注入ガイドラインの遵守:34%から86%に改善

適正使用のための重要な要素

  • 治療薬物モニタリング(TDM):両成分(ピペラシリンとタゾバクタム)の血中濃度測定により、個別化治療が可能です

    参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10994818/

     

  • 腎機能に基づく用量調整:クレアチニンクリアランスに応じた用量設定が必要です
  • 感染症の重症度評価:適応症と重症度に応じた適切な選択が重要です

抗菌薬スチュワードシップの観点
タゾバクタムピペラシリンは広域スペクトラム抗菌薬であるため、不適切な使用は薬剤耐性菌の増加につながります。医療機関では利用率が地域や全国平均と比較して高い傾向にあるため、プロバイダー教育やガイドライン提供による使用最適化が重要です。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10677252/

 

薬剤師による定期的な処方監査、培養結果に基づくde-escalationの推奨、代替治療の提案などが、適正使用の推進と医療費削減につながることが実証されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6281135/