サイトカインの種類と機能

免疫系における重要な情報伝達物質であるサイトカインには、炎症性と抗炎症性を含む数百種類が存在し、インターロイキンやインターフェロンなど様々な機能を持つ分類に分けられますが、その具体的な種類や機能についてご存知でしょうか?

サイトカインの種類と機能

サイトカインの主要分類
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インターロイキン類

免疫細胞間の情報伝達を担う主要なサイトカイン群

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インターフェロン類

抗ウイルス作用と免疫調節機能を持つ防御因子

⚖️
炎症性・抗炎症性

免疫応答のバランスを調整する相反する作用

サイトカインのインターロイキン分類と主要機能

インターロイキン(Interleukin:IL)は、白血球間で情報を伝達する主要なサイトカイン群で、現在IL-1からIL-38まで約38種類が同定されています 。これらの分子は多様な細胞によって産生され、細胞の発生および免疫応答の調節において多くの作用を有します 。
参考)免疫系を構成する分子 - 12. 免疫学;アレルギー疾患 -…

 

IL-1は炎症反応の開始、発熱、免疫細胞の活性化を担い、IL-2はT細胞(リンパ球の一種)の増殖・活性化に重要な役割を果たします 。IL-6は炎症反応の促進、抗体産生の誘導、発熱に関与し、IL-10は免疫応答・炎症の抑制(抗炎症性)作用を示します 。IL-12はNK細胞・T細胞の活性化とIFN-γ産生誘導を行い、IL-17はヘルパーT細胞の機能に重要な役割を担っています 。
参考)サイトカインとは?免疫や炎症での働き、種類、関連する病気まで…

 

抗がん作用を持つIL-2は、腫瘍免疫治療における重要な分子として注目されており 、一方でリウマチなど炎症性疾患の原因となるIL-6は治療標的としても研究されています 。インターロイキンは、T細胞、B細胞、NK細胞などの多様な免疫細胞を標的とし、それぞれ特異的な受容体を介してシグナルを伝達します 。
参考)インターロイキンとは?免疫に関わるサイトカインについて解説

 

サイトカインのインターフェロン分類と抗ウイルス機能

インターフェロン(Interferon:IFN)は抗原性や生物学的性質の違いから、I型(IFN-α、IFN-β)、II型(IFN-γ)、III型(IFN-λ)の3つの主要タイプに分類されます 。I型インターフェロンには、IFN-α(13種類:1,2,4,5,6,7,8,10,13,14,16,17,21)、IFN-β(1種類:IFN-β1)、IFN-ω、IFN-ε、IFN-κが含まれます 。
参考)インターフェロン - Wikipedia

 

IFN-αとIFN-βは主にマクロファージ好中球、樹状細胞および他の体細胞で産生され、強力な抗ウイルス作用を示します 。一方、IFN-γはT細胞やNK細胞などの免疫系細胞で産生され、免疫細胞(マクロファージ、NK細胞、T細胞)の活性化、抗腫瘍効果、抗ウイルス作用を発揮します 。
参考)様々な病気に用いられるインターフェロンの効果と副作用 href="https://www.kusurinomadoguchi.com/column/interferon-reaction-20040/" target="_blank">https://www.kusurinomadoguchi.com/column/interferon-reaction-20040/amp;#8…

 

治療として用いられるインターフェロンには、α2a、α2b、β1a、β1b、γ1aがあり、天然型のものと遺伝子組み換え型のものが存在します 。さらに、化学的修飾により持続時間を延長したPEG-インターフェロンも開発されており、副作用がやや少ないとされています 。これらのインターフェロンは、B型肝炎、C型肝炎、悪性腫瘍、多発性硬化症などの治療に広く応用されています 。

サイトカインのTNF腫瘍壊死因子群と細胞制御機能

腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor:TNF)は、狭義にはTNF-α、TNF-β(リンホトキシン-α)、リンホトキシン-βの3種類を指しますが、広義のTNFファミリーには19種類以上の分子が含まれます 。TNF-αは主にマクロファージにより産生され、固形がんに対して出血性の壊死を生じさせるサイトカインとして発見されました 。
参考)腫瘍壊死因子 - Wikipedia

 

TNF-αは炎症反応の強力な誘導、がん細胞への作用、細胞死の誘導、免疫細胞の活性化を担う重要な分子です 。正常な状態では、TNF-αは「がん細胞を破壊する」「傷を治癒する」「体内に入ったウイルス・バクテリアを排除する」などの有益な働きを示します 。しかし、体内バランスが崩れてTNF-αが過剰に増殖すると、「炎症を引き起こす」「動脈硬化・糖尿病のリスクを高める」などの悪影響を及ぼします 。
参考)TNFとは

 

TNFファミリーには、TNFSF(TNF Super Family)として番号付けされた分子群があり、リンホトキシン-α、OX40リガンド、CD40リガンド、Fasリガンド、CD27リガンド、CD30リガンド、TRAIL、RANKLなどが含まれます 。これらは免疫細胞の制御、アポトーシス誘導、T細胞・B細胞の活性化、組織再生などの多様な機能を担っています 。特に関節リウマチや乾癬の患者では TNF-αが過剰に産生されることが判明しており、抗TNF製剤(アダリムマブなど)がこれらの疾患治療に使用されています 。

サイトカインのケモカイン分類と細胞遊走制御機能

ケモカイン(Chemokine)は、細胞遊走活性を主機能とするサイトカインの一群で、走化性(chemotactic)のサイトカイン(cytokine)を意味し、白血球などの組織内移動や局在を制御します 。これまでに50種類以上のケモカインが同定されており、構造上の違いからCC、CXC、C、CX3Cの4つのサブファミリーに分類されます 。
参考)ケモカイン

 

CCケモカインは、N末端側の2つのシステイン残基が連続している構造を特徴とし、CCL1からCCL28まで27種類が同定されています 。代表例としてCCL2(MCP-1)、CCL3(MIP-1α)、CCL5(RANTES)、CCL17(TARC)があり、CCL17のTARCはアトピー性皮膚炎のマーカーとして臨床で用いられています 。
参考)ケモカイン - Wikipedia

 

CXCケモカインは、N末端のシステイン残基間に1つのアミノ酸が存在する構造で、さらにELR(Glu-Leu-Arg)モチーフの有無で分類されます 。ELRモチーフを有するものは好中球遊走と血管新生作用を示し、ELRモチーフを持たないものはリンパ球遊走と血管新生抑制作用を発揮します 。CXCL8(IL-8)は最初に同定されたケモカインで、強力な好中球遊走活性を持ちます 。
現時点でケモカイン受容体は19種類が同定されており、1つの受容体が複数のケモカインと結合可能な冗長性を示します 。この複雑なネットワークにより、炎症反応における白血球の適切な組織浸潤と生理的ホーミングが精密に制御されています 。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/38/10/38_10_645/_pdf/-char/ja

 

サイトカインの造血因子と細胞増殖因子による組織再生機能

造血因子(Colony-Stimulating Factor:CSF)は血液細胞の産生を制御するサイトカイン群で、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、幹細胞因子(SCF)、トロンボポエチン(TPO)などが含まれます 。
参考)造血因子

 

G-CSFはTリンパ球、NK細胞などにより産生され、好中球や単球の産生、造血系細胞の増殖・分化・活性化を促進します 。GM-CSFは分子量22,000、127個のアミノ酸からなる糖蛋白質で、顆粒球・単球系前駆細胞の増殖・分化を刺激し、さらに赤芽球系前駆細胞の増幅作用、血小板増加作用、好酸球造血の刺激作用も示します 。M-CSFは分子量85,000、554個のアミノ酸からなる糖蛋白質で、骨髄における単球産生の刺激、単球の殺腫瘍活性誘導、血中コレステロール低下作用、妊娠継続作用など広範な生物活性を有します 。
参考)http://kajigayakodomo.jp/zouketu.htm

 

細胞増殖因子は組織の修復と再生に重要な役割を果たし、上皮細胞増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)などが主要な分子です 。EGFは上皮細胞の増殖促進とケラチン化に関与し、FGFは線維芽細胞に作用して組織修復を促進し、PDGFは血小板から放出されて血管新生と創傷治癒を制御します 。これらの増殖因子は受容体チロシンキナーゼを介してシグナルを伝達し、細胞の増殖、分化、生存、アポトーシスを精密に調節しています 。
参考)サイトカイン - Wikipedia