ドパミン点滴の効果と医療現場での適応

ドパミン点滴は急性循環不全の治療に用いられる重要な医薬品で、心収縮力増強や血圧上昇、利尿作用など複合的な効果を発揮します。投与量によって異なる作用を示すドパミンの臨床効果や適応症、副作用について詳しく解説しますが、適切な使用にはどのような注意点があるのでしょうか?

ドパミン点滴の効果

ドパミン点滴の主な効果
💓
心収縮力増強作用

心筋の収縮力を高めて心拍出量を増加させる

🩸
血圧上昇作用

循環動態を改善し血圧を適正レベルに維持する

🫘
腎血流量増加・利尿作用

腎機能を保護し尿量を増加させて体液バランスを調整する

ドパミン点滴の基本的な薬理作用

ドパミン塩酸塩点滴静注は急性循環不全の治療において中心的な役割を果たす薬剤です 。この薬剤は心臓の収縮力を高めて血圧を上昇させ、同時に腎臓での血流量を増やして尿量を増加させる複合的な効果を発揮します 。
参考)くすりのしおり : 患者向け情報

 

薬理学的には、以下の作用が複合的に絡み合って強心作用、昇圧作用、利尿作用を発現し、急性循環不全状態を改善します :
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00070339.pdf

 

  • 心収縮力増強作用:冠動脈血流、大動脈血流及びLVdp/dtは投与量に比例して増加する
  • 腎血流量増加作用:ドパミン受容体を介して腎血流量を増加させる

    参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00068966.pdf

     

  • 上腸間膜血流量増加作用:ドパミン受容体を介して上腸間膜血流量を増加させる
  • 血圧上昇作用:心拍出量の増加により血圧を上昇させる

ドパミン受容体を介した作用機序の詳細

ドパミン塩酸塩の作用機序は主にドパミン受容体との相互作用を通じて発現します 。体内には複数のドパミン受容体サブタイプが存在し、それぞれが異なる生理学的反応を引き起こします 。
参考)ドパミン塩酸塩(イノバン) href="https://kobe-kishida-clinic.com/respiratory-system/respiratory-medicine/dopamine-hydrochloride/" target="_blank">https://kobe-kishida-clinic.com/respiratory-system/respiratory-medicine/dopamine-hydrochloride/amp;#8211; 呼吸器治療薬 -…

 

投与量による作用の違い

  • 低用量(1-5μg/kg/分):主にドパミン受容体を刺激して腎血流量の増加や利尿作用を促進する
  • 中等量:β1アドレナリン受容体も活性化され、心筋収縮力の増強や心拍数の上昇が生じる
  • 高用量:血管のα1受容体を刺激し、血管収縮による血圧上昇作用が顕著になる

    参考)http://image.packageinsert.jp/pdf.php?mode=1amp;yjcode=2119402A1361

     

低用量のドパミンは血管平滑筋にあるD1ドパミン受容体に直接働き、細胞内cAMP量を増加させて血管拡張を起こします 。特に上腸間膜及び腎での血流量を増やし、さらに糸球体ろ過を増大させてNa⁺利尿を起こします 。

ドパミン点滴の投与量調整と効果判定

ドパミンの投与は通常1分間あたり1~5μg/kgから開始し、患者の病態に応じて20μg/kgまで増量することができます 。投与量は患者の血圧、脈拍数及び尿量により適宜増減する必要があります 。
効果判定の指標

  • 血圧:収縮期血圧の維持・改善
  • 脈拍数:適切な心拍数の維持
  • 尿量:腎機能改善の指標として重要
  • 心拍出量:循環動態の改善評価

ドパミンの薬剤効果が出現するには5分以内であり、定量状態になるのは5分程度です 。そのため血圧測定は投与開始後5分で実施することが推奨されます 。
参考)https://kango-oshigoto.jp/hatenurse/article/8724/

 

通常、ドパミンは1~20μg/kg/分の範囲で使用され、投与量によってその効果に違いがあることを理解しておく必要があります 。γ(ガンマ)=μg/kg/分という単位を用いることが多く、正確な投与のために輸液ポンプが必須です 。
参考)心拍再開後、ドパミン投与の指示。輸液ポンプを取りに行くべき?…

 

ドパミン点滴の副作用と循環器系への影響

ドパミン塩酸塩は循環動態を改善する一方で、様々な副作用を引き起こす可能性があります 。特に循環器系への影響は顕著で、投与量や患者の状態によって異なる症状が現れることがあります 。
主な副作用の発現頻度

  • 不整脈(心室性期外収縮、心房細動、心室性頻拍等):5%以上
  • 動悸、頻脈:0.1~5%未満
  • 嘔気、嘔吐、腹部膨満、腹痛:消化器系副作用
  • 静脈炎、注射部位の変性壊死:局所反応

高用量投与時には頻脈や不整脈のリスクが高まり、心筋酸素消費量の増大につながる恐れがあります 。不整脈が発現した場合には、抗不整脈剤を投与するか本剤の投与を中止する必要があります 。
また、長期投与によって耐性が生じ、効果が減弱することも循環器系への影響として考慮すべき点です 。

ドパミン点滴の適応症と臨床管理における注意点

ドパミン塩酸塩点滴静注の適応症は急性循環不全(心原性ショック、出血性ショック)で、以下のような急性循環不全状態に使用されます :

  • 無尿、乏尿や利尿剤で利尿が得られない状態
  • 脈拍数の増加した状態
  • 他の強心・昇圧剤により副作用が認められたり、好ましい反応が得られない状態

臨床管理上の重要なポイント
それぞれのショック状態において、必要に応じ最初に輸液、輸血、呼吸管理、ステロイド投与等の処置を考慮することが重要です 。血圧、脈拍数及び尿量等、患者の状態を観察しながら投与する必要があります 。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00070008.pdf

 

大量投与したとき、脈拍数の増加がみられた場合や尿量の増加がみられない場合には、本剤を減量するか中止することが求められます 。過剰投与された場合は急激な血圧上昇等が生じるおそれがあるため、患者の状態が安定するまで投与速度を落とすか一時的に投与を中断する処置が必要です 。
参考)ドパミン塩酸塩点滴静注液600mgキット「KCC」の効能・副…

 

高齢者では生理機能が低下していることが多く、副作用があらわれやすいので、少量から投与を開始するなど患者の状態を観察しながら慎重に投与することが重要です 。
参考)https://vet.cygni.co.jp/include_html/drug_pdf/jyunkan/IN3439-01.pdf