アルカリフォスファターゼ高い子供の原因と適切な対応

小児でアルカリフォスファターゼが高値を示す原因や背景を詳しく解説。一過性高ALP血症から低ホスファターゼ症まで、適切な診断と対応について詳しく説明します。医療従事者必見の情報とは?

アルカリフォスファターゼ高い子供の診断と対応

小児ALP高値の主要ポイント
📊
年齢別基準値の理解

小児期は成人の3-6倍の高値が正常範囲

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一過性高ALP血症の認識

ウイルス感染後に一時的に異常高値を示す良性疾患

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適切な鑑別診断

病的な高値と生理的な高値の見極めが重要

アルカリフォスファターゼ高い子供の年齢別基準値と正常範囲

小児におけるアルカリフォスファターゼ(ALP)の値は、成人と大きく異なることを理解することが重要です。成人の基準値が38~113U/Lであるのに対し、小児期では年齢と性別によって大幅に異なります。
参考)https://ubie.app/byoki_qa/clinical-questions/l2fw5m4kpgs8

 

年齢別ALP基準値(IFCC法):

  • 1歳:男性138.3~468.7U/L、女性138.3~451.2U/L
  • 5歳:男性150.5~420.0U/L、女性157.5~420.0U/L
  • 10歳:男性160.0~507.5U/L、女性164.5~507.5U/L
  • 15歳:男性94.5~420.0U/L、女性54.3~315.0U/L

小児期にALPが高値を示すのは、骨の成長に伴って骨型ALP(ALP3型)が上昇するためです。1歳から思春期では成人の3~4倍、成長期のピークでは成人の4~6倍にも達します。これは子どもの体が成長するために骨が大きく伸びて成長しており、骨での新陳代謝が亢進しているためです。
参考)https://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/125.html

 

乳幼児期と10歳前後が最も高く、その後は急速に成人の検査値に近づきます。医療従事者は、小児のALP値を評価する際には必ず年齢・性別別の基準値を参照し、成人の基準値で判定しないよう注意が必要です。
参考)https://jaclap.org/wp-content/uploads/2019/09/labo_no436.pdf

 

アルカリフォスファターゼ高い子供の一過性高ALP血症の病態

一過性高ALP血症(Transient Hyperphosphatasemia: TH)は、小児において成人の10~30倍という異常高値を一時的に示す良性疾患です。この病気は乳幼児から小児に多く見られ、発症頻度は10歳以下の小児科外来患者の約0.7%とされています。
一過性高ALP血症の特徴:

この疾患では、ALPアイソザイムでALP1型とALP2型の中間位にバンド(α1α2)を認めることが特徴とされています。臨床的には嘔吐・下痢などの消化器症状、発熱・咳などの呼吸器症状が多く報告されていますが、全く症状の認められない症例もあります。
参考)https://kango-oshigoto.jp/hatenurse/article/3779/

 

RSウイルス、ロタウイルス、サイトメガロウイルス、水痘などのウイルス感染との関係が示唆されており、感染後に続発することが多いのが特徴です。重要なのは、この疾患が良性であり、特別な治療を要さないということです。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3667036/

 

アルカリフォスファターゼ高い子供の病的高値との鑑別診断

小児でALP高値を認めた場合、生理的な高値、一過性高ALP血症、そして病的な高値を適切に鑑別することが重要です。病的な高値の原因として以下が挙げられます。
肝胆道系疾患:

骨疾患:

内分泌疾患:

鑑別のポイントとして、小児において成人の基準値上限の5倍以上の高ALP血症の場合は、ALPアイソザイムで確認することが推奨されます。また、他の肝機能検査(AST、ALT、γ-GTP)や骨代謝マーカー、臨床症状を総合的に評価することが必要です。
特に極低出生体重児(1000g未満)では、代謝性骨疾患のリスクが非常に高く、ALP値600IU/L以上が頻繁に観察されます。このような症例では早期からの生化学的スクリーニングが推奨されています。
参考)https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fped.2021.642158/pdf

 

アルカリフォスファターゼ高い子供のウイルス感染との関連性

近年の研究により、小児の一過性高ALP血症とウイルス感染との密接な関連が明らかになってきました。特に急性呼吸器感染症との関連が注目されており、感染症流行期にTHの発症が増加する傾向が報告されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8212759/

 

関連が報告されているウイルス:

  • RSウイルス
  • ロタウイルス
  • サイトメガロウイルス
  • 水痘ウイルス
  • その他の呼吸器ウイルス

ウイルス感染がTHを引き起こすメカニズムについては、まだ完全に解明されていませんが、感染による炎症反応やサイトカインの産生が関与している可能性が示唆されています。感染後2~4週間でALPの異常高値が出現し、その後1~2ヶ月で自然に正常化することが典型的な経過です。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11404655/

 

医療従事者は、小児で異常高値のALPを認めた際には、最近の感染症の既往を詳細に聴取し、THの可能性を考慮することが重要です。特に症状のない健康な小児で偶然発見された高ALP値の場合、THの可能性が高いと考えられます。

 

アルカリフォスファターゼ高い子供の医療従事者向け管理指針

小児のALP高値に対する適切な管理には、段階的なアプローチが重要です。以下に医療従事者向けの実践的な管理指針を示します。
初期評価のステップ:

  1. 年齢・性別別基準値での評価
  2. 臨床症状の詳細な評価
    • 消化器症状(嘔吐、下痢)の有無
    • 呼吸器症状(発熱、咳嗽)の有無
    • 最近の感染症の既往
  3. 検査項目の追加
    • 他の肝機能検査(AST、ALT、γ-GTP)
    • 骨代謝マーカー
    • 必要に応じてALPアイソザイム

フォローアップ戦略:

  • 症状がなく他の検査値が正常な場合:1-2ヶ月後の再検査
  • "Wait and see"アプローチが推奨
  • 不要な検査による保護者の不安軽減が重要

注意すべき所見:

  • 持続的な高値(2ヶ月以上)
  • 他の肝機能検査の異常
  • 成長障害や骨症状の併存
  • 家族歴の存在

医療従事者は、小児のALP高値の多くが生理的または一過性であることを理解し、過度な検査や治療介入を避けながら、適切な経過観察を行うことが求められます。保護者への十分な説明と安心感の提供も重要な役割です。