神経膠細胞の種類と機能

神経膠細胞は中枢神経系を構成する重要な細胞群で、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、ミクログリア、上衣細胞の4種類に分類されます。それぞれが神経細胞を支え、脳機能の維持に不可欠な役割を担っていますが、その具体的な機能と臨床的意義をご存知でしょうか?

神経膠細胞の種類と機能

神経膠細胞の4つの種類
アストロサイト(星状膠細胞)

脳内環境の調整とエネルギー供給を担う最大のグリア細胞

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オリゴデンドロサイト(希突起膠細胞)

髄鞘形成により神経伝導速度を高める専門細胞

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ミクログリア(小膠細胞)

中枢神経系の免疫担当細胞として脳を保護

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上衣細胞

脳室壁を構成し脳脊髄液の循環を制御

神経膠細胞は中枢神経系においてニューロン以外の細胞群を指し、その数はニューロンの10倍以上に達します。これらの細胞は形態や機能により4つの主要な種類に分類され、それぞれが脳の正常な機能維持に欠かせない役割を果たしています。かつては単なる神経細胞の支持組織と考えられていましたが、現在では神経系の情報処理や恒常性維持に積極的に関与する重要な細胞として認識されています。
参考)グリア細胞

神経膠細胞におけるアストロサイトの役割

 

アストロサイトは星型の形態を持つ最も大きなグリア細胞で、神経膠細胞の中で最も数が多い種類です。この細胞の主要な機能は、血管とニューロンを結びつけることで栄養供給を仲介し、脳内環境を調整することです。具体的には、血管からグルコースを取り込み、グリコーゲンとして貯蔵した後、必要に応じて乳酸に変換してニューロンにエネルギーを供給します。
参考)グリア細胞とは?わかりやすく簡単に解説!種類や機能、役割や働…

アストロサイトは神経伝達物質の取り込みや血液脳関門の形成にも重要な役割を果たしており、脳の情報処理にも積極的に関与することが明らかになっています。さらに、睡眠時には有害物質を除去し、脳組織が損傷した際には自ら増殖して炎症部位を塞ぐなど、脳の健康維持に多大な貢献をしています。近年の研究では、アストロサイトがシナプス伝達を制御し、抑制性シナプスの機能調節にも関わることが発見されました。
参考)https://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v18/n4/%E3%82%A2%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AD%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%88%E3%81%AB%E8%A6%8B%E3%81%A4%E3%81%8B%E3%81%A3%E3%81%9F%E6%8A%91%E5%88%B6%E6%80%A7%E3%82%B7%E3%83%8A%E3%83%97%E3%82%B9%E5%88%B6%E5%BE%A1%E6%A9%9F%E8%83%BD/107008

理化学研究所によるアストロサイトのシナプス制御メカニズムに関する最新研究

神経膠細胞におけるオリゴデンドロサイトの特徴

オリゴデンドロサイトは希突起膠細胞とも呼ばれ、いくつかの短い突起を持つ小型のグリア細胞です。この細胞の最も重要な機能は、中枢神経系のニューロン軸索に突起を伸ばして巻きつき、髄鞘(ミエリン鞘)を形成することです。髄鞘は神経繊維を何重にも取り囲む構造で、バウムクーヘンのような層状の形態を示します。
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髄鞘形成により活動電位の跳躍伝導が可能になり、神経信号の伝達速度が大幅に向上します。1つのオリゴデンドロサイトは1~50本もの異なる神経細胞の軸索に突起を伸ばすことができ、効率的に髄鞘を形成します。最近の研究では、オリゴデンドロサイトが特定の役割を持つ神経細胞に対して選択的に髄鞘を形成することが明らかになり、神経回路の機能的特異性に寄与していることが示されました。さらに、オリゴデンドロサイトはNGF(神経成長因子)やBDNF(脳由来神経栄養因子)など、ニューロンの成長に関わる因子を分泌する機能も持っています。
参考)第15回

生理学研究所による髄鞘形成の選択性に関する研究成果

神経膠細胞におけるミクログリアの免疫機能

ミクログリアは小膠細胞とも呼ばれ、中枢神経系における免疫担当細胞として機能します。他のグリア細胞が外胚葉由来であるのに対し、ミクログリアは造血幹細胞由来の中胚葉起源であり、中枢神経系の常在性マクロファージとして位置づけられます。この細胞は貪食能や遊走性を持ち、炎症性サイトカインなどの生理活性物質を産生・放出する能力を備えています。
参考)「神経膠細胞」の意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio…

正常状態では、ミクログリアは細長い突起をダイナミックに動かしながらシナプスや軸索に接触し、その機能を監視・調節しています。神経細胞の修復や貪食による脳内の不要物質の除去、死細胞の除去を担い、組織の恒常性維持に重要な役割を果たします。発生期には神経新生の促進や脳血管網の形成にも関与し、病態時には細胞体の肥大化や増殖を伴って活性化状態となります。近年の研究では、ミクログリアに様々なサブタイプが存在し、時空間的多様性を示すことが明らかになっており、中枢性疾患の発症や進展において促進的または抑制的に機能することが判明しています。
参考) 32. 脳内免疫細胞ミクログリアの時空間的多様性 - 一…

日本神経化学会によるミクログリアの多様性に関する解説

神経膠細胞における上衣細胞の機能

上衣細胞は脳室系の壁を構成する神経膠細胞で、側脳室、第三脳室、第四脳室、脊髄中心管などの表面を覆っています。この細胞の表面には多数の繊毛が生えており、その協調した運動により脳脊髄液の循環を促進します。繊毛運動は上衣細胞が正常に発達し機能するために不可欠であり、成熟に伴って1本1本の繊毛が伸長して運動能力を獲得します。
参考)上衣細胞 - 脳科学辞典

上衣細胞は脳室から脳実質への物質輸送にも関与しており、増殖因子やケモカイン、ホルモン、神経ペプチドといった生理活性物質の代謝および分解を行います。グルコース輸送体GLUT1-4を発現し、脳脊髄液中のグルコースを取り込んでエネルギー貯蔵を調節する能力を持ち、神経活動の変化に応じて周囲の細胞にエネルギーを供給する可能性があります。さらに、脳室下帯におけるニューロン新生を制御する栄養因子や増殖因子の調節も担っており、成体脳の神経可塑性に寄与しています。上衣細胞の詳細な機能については、現在も研究が進められている段階です。
参考)https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E8%84%B3%E5%AE%A4%E4%B8%8B%E5%B8%AFamp;mobileaction=toggle_view_desktop

神経膠細胞と臨床的意義

神経膠細胞の異常は様々な神経疾患の発症に関与しており、臨床医学において重要な研究対象となっています。神経膠腫(グリオーマ)は神経膠細胞から発生する腫瘍で、脳腫瘍全体の約25~30%を占める最も頻度の高い腫瘍群です。神経膠腫には星細胞腫、乏突起神経膠腫、上衣腫などの種類があり、その多くは予後不良な悪性腫瘍として分類されます。
参考)https://www.jsnp.jp/shikkan/cerebral_6_main.htm

脳梗塞後に生じる神経膠症(グリオーシス)は、グリア細胞が活性化して増殖する病態で、梗塞周辺部位で増大します。近年では、高磁場MRIとマンガン造影剤を用いて神経膠症を生きたままの脳で高分解能に画像化する技術が開発され、治療薬の開発や神経再生技術の評価に活用されています。多発性硬化症などの髄鞘形成異常疾患や、アルツハイマー病におけるミクログリアの役割など、神経膠細胞の機能不全が関与する疾患の理解が進んでおり、これらの細胞を標的とした治療法の開発が期待されています。
参考)脳の神経細胞に髄鞘が形成されるメカニズムの一端を解明 -特定…

神経膠腫の詳細な分類と治療に関する情報
神経膠細胞の理解は、神経疾患の病態解明や新規治療法の開発において不可欠であり、今後さらなる研究の進展が期待されます。
参考)ミクログリア - 脳科学辞典

 

 


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