2025年3月に刊行された最新の「多発性筋炎・皮膚筋炎診療ガイドライン2025」は、日本リウマチ学会、日本神経学会、日本皮膚科学会の3学会が承認した統一的なガイドラインです 。このガイドラインは2020年暫定版の27個のクリニカルクエスチョン(CQ)を46個へと大幅に増加させ、小児から成人までを対象とした包括的な内容となっています 。
参考)多発性筋炎・皮膚筋炎診療ガイドライン2025
診断、検査、治療を包括的にカバーする内容として、特に筋炎特異的自己抗体による病型分類と、それぞれの病型に応じた治療戦略が詳細に記載されています 。研究代表者の渥美達也班長をはじめとする作成委員会により、エビデンスの収集と討論を重ねて作成された権威性の高いガイドラインです 。
参考)m3電子書籍
皮膚筋炎の診断基準では、特徴的な皮膚症状として①ヘリオトロープ疹(両側または片側の眼瞼部の紫紅色浮腫性紅斑)、②ゴットロン丘疹(手指関節背面の丘疹)、③ゴットロン徴候(手指関節背面および四肢関節背面の紅斑)のうち1項目以上を満たすことが必要です 。
参考)https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000089962.pdf
診断には皮膚症状に加えて、以下の9項目中4項目以上を満たす必要があります:上肢または下肢の近位筋の筋力低下、筋肉の自発痛または把握痛、血清中筋原性酵素(クレアチンキナーゼまたはアルドラーゼ)の上昇、筋炎を示す筋電図変化、骨破壊を伴わない関節炎または関節痛、全身性炎症所見(発熱、CRP上昇、または赤沈亢進)、筋炎特異的自己抗体陽性、筋生検で筋炎の病理所見です 。
参考)皮膚筋炎/多発性筋炎(指定難病50) href="https://www.nanbyou.or.jp/entry/4080" target="_blank">https://www.nanbyou.or.jp/entry/4080amp;#8211; 難病情…
皮膚筋炎では筋症状として緩徐に発症して進行する体幹、四肢近位筋群、頸筋、咽頭筋の筋力低下が多くみられ、筋肉痛や全身倦怠感、発熱、体重減少などの全身症状を伴います 。特に咳や軽い動作での息切れがある場合は間質性肺炎の合併を疑い、急速に病状が悪化する可能性があるため早期治療が必要です 。
参考)皮膚筋炎の治療法について
検査では筋症状がある場合、筋原性酵素であるクレアチンキナーゼ(CK)、アルドラーゼ、AST、LDHが上昇します 。筋炎特異的自己抗体として抗Jo-1抗体を含む抗アミノアシルtRNA合成酵素抗体群、抗MDA5抗体、抗TIF1γ抗体、抗NXP-2抗体などが検出され、病型分類と治療方針決定に重要な役割を果たします 。
参考)多発性筋炎・皮膚筋炎(polymyositis / derm…
皮膚筋炎では約30%の症例で悪性腫瘍の合併がみられ、特にTIF1γ抗体陽性例では悪性腫瘍合併リスクが高く、より慎重な検査が必要です 。50歳以上の症例では合併率が60%に達するとの報告もあり、年齢が重要な危険因子となります 。
参考)多発性筋炎・皮膚筋炎の悪性腫瘍の合併率はどのくらいですか? …
悪性腫瘍合併例では体重減少や食欲不振がみられることが多く、肺癌や大腸癌との合併が報告されています 。悪性腫瘍が合併している場合、腫瘍治療が筋炎の改善に寄与する可能性があるため、筋炎治療と同時に、または先行して悪性腫瘍治療を行うことがあります 。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/skinresearch1959/27/1/27_1_58/_pdf
定期的な悪性腫瘍スクリーニング検査として、胸部CT、腹部CT、上下部消化管内視鏡検査、婦人科検診(女性)、泌尿器科検診(男性)などが推奨されています。早期発見により治療成績の向上が期待できるため、診断時および経過観察中の積極的な検索が重要です。
皮膚筋炎の治療はステロイド療法が中心で、約8割の患者に効果が認められます 。初期治療として1日に体重1kg当たりプレドニゾロン換算で0.75-1mgを投与し、治療効果を確認しながら最小必要量まで減量します 。重症例や急速進行例では、大量ステロイドを3日間点滴するパルス療法を実施することがあります 。
参考)皮膚筋炎・多発性筋炎の治療方法
ステロイド単独治療が不十分な場合は、アザチオプリン、シクロホスファミドなどの免疫抑制剤を併用し、特に間質性肺炎合併例では早期から強力な免疫抑制療法を行います 。免疫グロブリン大量療法(IVIG)も嚥下障害などの特定症状に対して有効性が報告されています 。
参考)302 Found
リハビリテーションは治療の重要な構成要素で、治療初期は安静が必要ですが、炎症が改善した慢性期には筋力トレーニングが推奨されます 。発症後6ヶ月以上の患者に対する適切な運動療法により、筋力やADLの改善が期待できます 。ただし、急性期の無理な運動は症状悪化を招くため、専門家の指導下で段階的に実施することが重要です 。
参考)皮膚筋炎・多発性筋炎は完治する?リハビリを自己判断で行う危険…