クレアチンキナーゼとクレアチニンの違いと検査意義

クレアチンキナーゼとクレアチニンは名前が似ていますが、その働きや測定目的は全く異なります。筋肉や心臓、腎臓の状態を正確に理解するには、それぞれの役割や基準値、異常値が意味する病態を知ることが重要です。医療従事者として、両者の違いを明確に把握していますか?

クレアチンキナーゼとクレアチニンの違い

💡 クレアチンキナーゼとクレアチニンの主要な違い
🔬
クレアチンキナーゼ(CK)

筋肉や心筋のエネルギー代謝に関わる酵素で、組織損傷の指標として測定される

🩺
クレアチニン(Cr)

筋肉代謝の最終産物で、腎臓の濾過機能を評価する指標として使用される

📊
測定目的の違い

CKは筋肉・心筋障害の診断に、クレアチニンは腎機能評価に用いられる

クレアチンキナーゼ(CK)は、骨格筋や心筋、脳などに多く存在する酵素で、クレアチンリン酸とADPからクレアチンとATPを生成する反応を触媒します。筋肉細胞のエネルギー代謝において中心的な役割を果たし、筋肉組織が損傷を受けると血液中に逸脱するため、心筋梗塞や筋ジストロフィーなどの診断に用いられます。
参考)クレアチンキナーゼ

一方、クレアチニン(Cr)はクレアチンの代謝産物であり、筋肉内で非酵素的にクレアチンが脱水されて生成される老廃物です。クレアチニンは腎臓の糸球体でろ過された後、ほとんど再吸収されずに尿中へ排泄されるため、血清クレアチニン濃度は腎機能の代表的な指標として広く利用されています。
参考)クレアチニン(Cre)とは何ですか?基準値はどのくらいですか…

両者の最も重要な違いは測定目的にあります。CKは筋肉や心筋の障害を検出するために測定されるのに対し、クレアチニンは腎臓の濾過機能を評価するために測定されます。また、CKは酵素活性を測定するのに対し、クレアチニンは代謝産物の濃度を測定する点でも異なります。
参考)検査方法について

クレアチンキナーゼの働きと基準値

 

クレアチンキナーゼは、クレアチンリン酸とATPの相互変換を触媒する酵素で、筋肉収縮時のエネルギー供給に不可欠です。クレアチンリン酸は高エネルギー化合物として筋肉にエネルギーを蓄え、必要時にADPにリン酸基を渡してATPを再生する反応を媒介します。
参考)クレアチンキナーゼとは何? わかりやすく解説 Weblio辞…

CKの基準値は性別によって異なり、男性で40~200 IU/L、女性で30~150 IU/Lとされています。これは筋肉量が男性の方が多いためであり、CK値は筋肉量と比例する特性があります。また、年齢とともに筋肉量が減少するため、高齢者ではやや低値を示す傾向があります。
参考)生化学検査

CKには3種類のアイソザイムが存在し、CK-MMは骨格筋、CK-MBは心筋、CK-BBは脳細胞に多く含まれます。急性心筋梗塞の診断にはCK-MBが重要で、発作から3~6時間後に上昇し始めるため、早期診断や病態モニタリングに活用されています。通常、血中ではCK-MMが大半を占め、CK-BBはほとんど検出されません。
参考)CKアイソザイム(CPKアイソザイム)|アイソザイム|生化学…

クレアチニンの産生と腎機能評価

クレアチニンは、筋肉内でクレアチンから非酵素的に生成される代謝最終産物です。健康成人の体内クレアチン量は100~120gで、そのうち約1%(約1,000mg)が毎日クレアチニンとして尿中に排泄されます。クレアチニンの産生量は主に筋肉量に依存するため、性別、年齢、体格による個人差が大きい特徴があります。
参考)クレアチン/クレアチニン (medicina 36巻11号)…

血清クレアチニンの基準値は、男性で0.65~1.07 mg/dL、女性で0.46~0.79 mg/dLです。腎機能が低下すると、クレアチニンが尿中に排泄されず血液中に蓄積するため、血清クレアチニン値が上昇します。この特性を利用して、腎機能の指標として広く用いられています。
参考)クレアチニン(血液)

より正確な腎機能評価には、血清クレアチニン値、年齢、性別を用いて算出する推算糸球体濾過量(eGFR)が用いられます。eGFRは体表面積1.73 m²に補正された値として算出されるため、標準的な体型からかけ離れた症例では体表面積による補正が必要です。また、筋肉量が極端に減少している長期臥床患者や栄養状態の悪い患者では、血清クレアチニンが低値となり腎機能が過大評価される可能性があります。
参考)https://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/145.html

クレアチンキナーゼ高値時に疑われる疾患

CKが高値を示す原因は、病的なものと生理的なものに大別されます。病的な原因としては、急性心筋梗塞や心筋炎などの心疾患、筋ジストロフィーや多発性筋炎などの筋疾患、横紋筋融解症などが挙げられます。特に横紋筋融解症では、激しい筋損傷によりCKやミオグロビンが血液中に大量に流出し、腎不全を引き起こす危険があるため早急な対応が必要です。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5507674/

生理的な原因としては、激しい運動や筋力トレーニング直後、外傷や手術後、筋肉注射後などが知られています。マラソンなどの激しい運動では筋繊維が一時的に損傷し、CKが上昇することがあります。また、薬剤性の要因として、スタチン系薬剤による横紋筋融解症が報告されており、CK高値の持続には注意が必要です。
参考)クレアチンキナーゼ(くれあちんきなーぜ)とは? 意味や使い方…

CKが1,000 IU/Lを超える高値を示した患者の原因に関する研究(英文)
無症状でCKが高値を示す場合の対応として、まず7日間の運動制限後に再検査を行い、持続的な上昇を確認することが推奨されます。さらに、神経筋疾患だけでなく、甲状腺機能低下症などの代謝異常も考慮する必要があります。
参考)クレアチニンキナーゼ(CK)が高いと言われたら?原因と考えら…

クレアチニン高値が示す腎機能障害

血清クレアチニンが基準値を超えて上昇する場合、腎機能の低下が疑われます。日本人間ドック・予防医療学会の基準では、男性で1.30 mg/dL以上、女性で1.00 mg/dL以上の場合、腎機能の低下が強く疑われ、専門医による詳しい検査や治療が必要とされています。血清クレアチニンが8.0 mg/dL以上となると、透析導入が検討される段階です。
参考)クレアチニンとは?数値が高い原因と下げる方法について

腎機能評価には、クレアチニンクリアランス(CCr)も用いられます。これは24時間蓄尿を行い、実際にどの程度クレアチニンが腎臓で排泄されているかを測定する方法で、腎機能を最も正確に把握でき、特に初期の腎機能悪化を鋭敏に捉えることができます。正常値はおよそ100~120 mL/分ですが、年齢とともに低下します。
参考)https://www.ompu.ac.jp/u-deps/kns/jinzou.pdf

痩せて筋肉量が少ない患者でクレアチニンが高値を示す場合は、実際の腎機能障害を示している可能性が高く、注意が必要です。逆に、筋肉量が極端に減少している患者では、血清クレアチニンが低値でも腎機能が低下している可能性があり、eGFRやシスタチンCを併用した評価が推奨されます。
参考)痩せて筋肉が少ないのにクレアチニンが高い?原因と注意点 食事…

クレアチンキナーゼとクレアチニンの臨床的関連性

CKとクレアチニンは名称が類似しているものの、測定意義は全く異なりますが、臨床現場では両者を組み合わせて評価する場面があります。特に横紋筋融解症では、CKが著明に上昇するとともに、筋肉の破壊により放出されるミオグロビンが腎臓を障害し、血清クレアチニンが上昇します。この場合、CK値とクレアチニン値を同時にモニタリングすることで、筋肉障害の程度と腎機能への影響を評価できます。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10332045/

ハンチントン病患者における極度のCK上昇と横紋筋融解症による急性腎障害の症例報告(英文)
クレアチンの代謝経路において、クレアチンキナーゼはクレアチンリン酸の合成・分解を触媒し、その後クレアチンが非酵素的にクレアチニンへと変換されます。クレアチンは主に肝臓、腎臓、膵臓で合成され、筋肉に運ばれてエネルギー貯蔵に利用されます。体内のクレアチン量は筋肉量に比例し、その約1%が毎日クレアチニンとして排泄されるため、両マーカーは間接的に筋肉量の指標としても機能します。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11764249/

腎機能が低下した患者では、クレアチンの生合成能力も影響を受ける可能性があります。腎移植患者を対象とした研究では、健常者と比較してクレアチンホメオスタシスが乱れていることが示されており、腎機能とクレアチン合成速度、総クレアチンプール量との間に直接的な関係があることが明らかになっています。このように、CKとクレアチニンは代謝経路上で関連しており、総合的な評価が患者の全身状態把握に有用です。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8070484/

項目 クレアチンキナーゼ(CK) クレアチニン(Cr)
分類 酵素 代謝産物
主な存在部位 骨格筋、心筋、脳 血液、尿
基準値(男性) 40~200 IU/L 0.65~1.07 mg/dL
基準値(女性) 30~150 IU/L 0.46~0.79 mg/dL
主な測定目的 筋肉・心筋障害の検出 腎機能の評価
高値を示す主な疾患 心筋梗塞、筋ジストロフィー、横紋筋融解症 腎不全、慢性腎臓病
アイソザイム CK-MM、CK-MB、CK-BB なし

 

 


インフィニティー 納豆キナーゼ6000FU大容量(60日分)