ストリドールとは何か原因症状治療法まで医療従事者向け完全解説

ストリドールは上気道狭窄で生じる高音の呼吸音で、医療現場での適切な対応が重要です。原因から治療まで詳しく解説しますが、あなたは適切に対処できていますか?

ストリドールとは何か原因症状治療まで

ストリドールの基本理解
🫁
高音性呼吸音の特徴

上気道狭窄により発生する連続性の高音性呼吸音で、医療現場での早期発見が重要

緊急度の判断

急性発症では気道閉塞による呼吸不全のリスクがあり、迅速な対応が必要

🔍
原因の多様性

異物吸入から声門下狭窄まで幅広い原因があり、適切な鑑別診断が求められる

ストリドールとは何か基本定義と音響学的特徴

ストリドールは、狭窄した上気道を通る乱流によって生じる高音性の連続性呼吸音です。医療従事者にとって重要な身体所見の一つで、正確な理解と迅速な対応が求められます。
参考)https://www.stroke-lab.com/speciality/25589

 

音響学的には、周波数が高く、通常300Hz以上の範囲で聴取されます。この特徴的な音質は、気道の物理的な狭窄により気流が乱流となることで発生します。聴診器を使用しなくても聞こえることが多く、胸郭外で明瞭に聴取されるのが特徴です。

 

ストリドールは呼吸音の分類において、連続性ラ音に分類されます。喘鳴(wheeze)との違いは、主に発生部位にあります。

  • ストリドール:上気道(鼻腔、咽頭、喉頭、気管上部)の狭窄
  • 喘鳴:下気道(気管支、細気管支)の狭窄

この鑑別は治療方針の決定において極めて重要で、医療従事者は聴診技術の向上と併せて、音質の違いを正確に判断する能力が求められます。

 

ストリドール発生原因と病態生理メカニズム

ストリドールの発生メカニズムは、ベルヌーイの定理に基づいています。気道の断面積が狭くなると、同じ流量を維持するために流速が増加し、その結果として乱流が生じます。

 

急性原因には以下があります。

  • 異物吸入:小児に多く、緊急対応が必要

    参考)https://bibgraph.hpcr.jp/abst/pubmed/32307004

     

  • 急性喉頭蓋炎:細菌感染による急激な腫脹
  • アナフィラキシー:血管性浮腫による上気道狭窄
  • 気管内挿管後の声門浮腫:抜管後合併症として発生

慢性原因として。

  • 声門下狭窄症:先天性または後天性の構造的狭窄
  • 声帯麻痺:反回神経麻痺による声門狭窄
  • 気管軟化症:気管軟骨の発育不全
  • 腫瘍性病変:良性・悪性を問わず気道を圧迫

病態生理学的には、気道抵抗の増加により呼吸仕事量が増大し、患者は呼吸困難を呈します。特に吸気時のストリドールは声門上部の狭窄を、呼気時のストリドールは胸郭内気道の狭窄を示唆します。

 

医療従事者は、ストリドールのタイミング(吸気性、呼気性、両相性)を正確に評価することで、狭窄部位の推定が可能となります。

 

ストリドール臨床症状と身体所見評価ポイント

ストリドールに伴う臨床症状は、狭窄の程度と原因により多様です。医療従事者が注意深く観察すべき症状を系統的に解説します。

 

呼吸器症状

  • 呼吸困難:安静時から始まり、進行性に悪化
  • 呼吸努力の増大:鼻翼呼吸、肋間筋の陥没
  • チアノーゼ:中心性チアノーゼは重篤な低酸素血症を示唆
  • 起座呼吸:患者が前傾姿勢を取る三脚位(tripod position)

全身症状

  • 不安・興奮:低酸素血症による中枢神経症状
  • 発汗:呼吸仕事量増加による代謝亢進
  • 頻脈:代償性の心拍数増加
  • 意識レベル低下:重篤な低酸素血症の徴候

身体所見の系統的評価
視診では、呼吸補助筋の使用を確認します。胸鎖乳突筋、斜角筋の収縮や、肋間筋の陥没は呼吸困難の客観的指標となります。
触診では、気管の位置確認が重要です。気管偏位は一側性の病変を示唆します。
聴診では、ストリドールの特徴を詳細に評価。

  • 音質:粗糙音か笛様音か
  • タイミング:吸気性、呼気性、両相性
  • 強度:軽度から重度までの分類
  • 部位:頸部、胸部での聴取強度の違い

バイタルサインの変化も重要な評価項目で、酸素飽和度の低下、頻呼吸、頻脈は病状の重篤度を反映します。

ストリドール診断方法と鑑別診断アプローチ

ストリドールの診断には、系統的なアプローチが不可欠です。医療従事者は病歴聴取から画像診断まで、段階的に評価を進める必要があります。

 

病歴聴取のポイント

  • 発症様式:急性か慢性か
  • 誘因:食事、薬剤、感染症状の有無
  • 既往歴:気道手術、挿管歴、アレルギー歴
  • 年齢:小児と成人では原因疾患が異なる

身体診察では、系統的な評価を実施。

  • 一般状態:意識レベル、呼吸パターン
  • 頭頸部:口腔内、咽頭の観察
  • 胸部:呼吸音の詳細な聴診
  • 四肢:チアノーゼ、ばち指の有無

検査所見
血液ガス分析は呼吸不全の評価に必須で、PaO2低下、PaCO2上昇は重篤な気道狭窄を示唆します。
画像診断では。

  • 胸部X線:気管の狭窄、偏位の評価
  • CT検査:詳細な気道形態の評価
  • 内視鏡検査:直接的な気道内の観察

鑑別診断において重要な疾患。
急性疾患

  • 急性喉頭蓋炎 vs 急性喉頭炎
  • 異物誤嚥 vs アナフィラキシー
  • 感染性クループ vs 痙攣性クループ

慢性疾患

  • 声門下狭窄 vs 気管狭窄
  • 声帯麻痺 vs 気管軟化症
  • 腫瘍性病変 vs 炎症性狭窄

診断の優先順位は、気道緊急度に基づいて決定します。完全気道閉塞のリスクがある場合は、診断よりも気道確保を優先する判断が求められます。

 

ストリドール治療法と医療従事者対応指針

ストリドールの治療は、原因に応じた特異的治療支持療法を組み合わせて実施します。医療従事者は緊急度を正確に判断し、適切な治療選択を行う必要があります。

 

急性期治療
気道管理が最優先で、以下の段階的アプローチを実施。

  • 酸素投与:鼻カニューラまたはマスクによる酸素供給
  • 薬物療法:ステロイド(デキサメタゾン)による抗炎症効果
  • 気道確保:重篤例では気管内挿管や緊急気管切開

原因別治療
感染性疾患

  • 細菌感染:抗菌薬投与と抗炎症療法
  • ウイルス性クループ:ステロイド投与とエピネフリン吸入

アレルギー性疾患

  • アナフィラキシー:エピネフリン筋注と抗ヒスタミン薬
  • 血管性浮腫:ステロイドと抗ヒスタミン薬の併用

異物誤嚥

  • 内視鏡的除去:気管支鏡による直接除去
  • 外科的除去:内視鏡困難例では開胸手術

慢性期管理
声門下狭窄症の治療選択。

  • 内視鏡的治療:バルーン拡張術、レーザー切開
  • 外科的治療:気管切開、再建手術
  • 経過観察:軽症例では定期的なフォローアップ

支持療法として。

モニタリング指標

  • 酸素飽和度:持続的なパルスオキシメトリー
  • 血液ガス:定期的なPaO2、PaCO2測定
  • 呼吸パターン:呼吸回数、努力呼吸の程度

医療従事者は、患者のQOL向上を目標とし、長期的な管理計画を立案することが重要です。また、患者・家族への教育も治療成功の重要な要素となります。
治療効果の評価には、客観的指標(肺機能検査、6分間歩行試験)と主観的指標(呼吸困難スケール、QOL評価)を組み合わせて使用します。