スルモンチール(一般名:トリミプラミンマレイン酸塩)は、精神科領域におけるうつ病・うつ状態の治療に用いられる三環系抗うつ薬です。添付文書には、医療従事者が安全で効果的な処方を行うための重要な情報が詳細に記載されています。
参考)https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00001586
本剤の製剤形態は、錠剤(10mg、25mg)と散剤(10%)の3種類が用意されており、患者の症状や服薬状況に応じて選択できます。製造販売元は共和薬品工業株式会社で、処方箋医薬品として厳格に管理されています。
参考)https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med_product?id=00001586
スルモンチール錠10mgは、1錠中にトリミプラミンマレイン酸塩13.9mg(トリミプラミンとして10mg)を含有しています。ごくうすい紅色の円形糖衣錠で、直径約6.2mm、厚さ約3.7mm、質量約0.12gという特徴があります。
スルモンチール錠25mgは、1錠中にトリミプラミンマレイン酸塩34.9mg(トリミプラミンとして25mg)を含有し、紅色の円形糖衣錠として製剤化されています。識別コードは「KW ST 25」で、薬剤管理において重要な情報です。
スルモンチール散10%は、1g中にトリミプラミンマレイン酸塩139.4mg(トリミプラミンとして100mg)を含有する白色の粉末で、添加剤として乳糖水和物、バレイショデンプン、コムギデンプンが使用されています。
添加剤として、錠剤では乳糖水和物、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、ステアリン酸マグネシウム、デンプングリコール酸ナトリウム、沈降炭酸カルシウムなど多くの成分が含まれており、アレルギー歴のある患者では注意が必要です。
添付文書における標準的な用法用量は、通常成人にはトリミプラミンとして1日50~100mgを初期用量とし、1日200mgまで漸増し、分割経口投与することとされています。稀に300mgまで増量する場合もありますが、これは症状の重篤度や患者の反応性を慎重に評価した上での判断となります。
投与開始時は低用量から開始し、患者の症状改善と副作用の発現状況を観察しながら段階的に増量していくのが基本原則です。年齢、症状により適宜減量する必要があり、特に高齢者や肝腎機能低下患者では慎重な用量調整が求められます。
参考)https://www.rad-ar.or.jp/siori/search/result?n=43391
分割経口投与の理由は、血中濃度の変動を最小限に抑え、副作用のリスクを低減しながら治療効果を安定させるためです。一般的に1日2~4回に分けて服用し、最終服用は就寝前に行うことで、鎮静作用を睡眠障害の改善にも活用できます。
添付文書には、患者への服薬指導で重要なポイントとして、PTPシートから取り出して服用するよう指導することが記載されており、誤飲による食道穿孔等の重篤な事故を防ぐ安全対策が明記されています。
参考)https://www.carenet.com/drugs/materials/pdf/340018_1174005B1020_1_19.pdf
添付文書の禁忌項目は医療安全上極めて重要な情報です。まず、閉塞隅角緑内障患者への投与は絶対禁忌とされています。これは本剤の抗コリン作用により眼圧が上昇し、症状を重篤に悪化させる可能性があるためです。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00001586.pdf
心筋梗塞の回復初期にある患者も禁忌対象です。三環系抗うつ薬は心伝導系に影響を与える可能性があり、心筋梗塞後の不安定な心血管状態では重大なリスクとなります。
参考)https://medpeer.jp/drug/d2160
三環系抗うつ薬に対する過敏症の既往がある患者も当然禁忌となります。過去にアレルギー反応や重篤な副作用を経験した患者では、同系統の薬剤使用は避けなければなりません。
また、添付文書には慎重投与として、心疾患、甲状腺機能亢進症、てんかん等の痙攣性疾患、躁うつ病、自殺念慮の既往などが列挙されており、これらの患者では特に注意深い観察が必要です。
添付文書に記載されている重大な副作用として、Syndrome malin(悪性症候群)が最も注意すべき事項です。無動緘黙、強度の筋強剛、嚥下困難、頻脈、血圧変動、発汗等が発現し、それに引き続き発熱がみられる場合は直ちに投与を中止し、体冷却、水分補給等の全身管理が必要です。
参考)https://www.carenet.com/drugs/category/psychotropics/1174005F1022
その他の主な副作用として、眠気(20.0%)が最も頻度が高く、これは本剤の薬理作用による予想される副作用です。振戦、口渇、便秘、排尿困難などの抗コリン作用に基づく副作用も比較的多く認められます。
消化器系では悪心・嘔吐、食欲不振、下痢、味覚異常が報告されており、肝機能では黄疸、AST上昇、ALT上昇などの肝障害の可能性があります。定期的な肝機能検査によるモニタリングが推奨されます。
長期投与では口周部不随意運動等の不随意運動が報告されており、投与中止後も持続することがあるため、症状の早期発見と適切な対応が重要です。
添付文書には、多くの薬剤との相互作用が詳細に記載されています。特に中枢神経抑制薬との併用では相互に作用が増強される可能性があり、用量調整や慎重な観察が必要です。
参考)https://www.qlife.jp/meds/rx43391/interact/
抗コリン作用を有する薬剤との併用では、抗コリン作用が増強され、口渇、便秘、排尿困難、眼圧上昇などの副作用が強くなる可能性があります。これらの症状は患者のQOLに大きく影響するため、適切な対症療法の検討が必要です。
参考)https://www.amel-di.com/medical/di/download?type=8amp;pid=1376amp;id=0
高齢者への投与では、肝腎機能の低下により薬物代謝・排泄が遅延し、副作用が発現しやすくなるため、少量からの投与開始と慎重な用量調整が添付文書で強調されています。
妊婦・授乳婦への投与については、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与することとされ、動物実験での催奇形作用の報告も考慮する必要があります。小児に対する安全性は確立されていないため、使用経験がない旨が明記されています。