ポリミキシンB軟膏を5日以上なんとなく塗り続けると、次の外来で耐性菌対応に追われて残業になることがあります。
ポリミキシンb硫酸塩 軟膏として典型的なのが、オキシテトラサイクリン塩酸塩・ポリミキシンB硫酸塩軟膏、いわゆるテラマイシン軟膏(ポリミキシンB含有)です。 1g中にオキシテトラサイクリン塩酸塩30mgとポリミキシンB硫酸塩10,000単位を配合した複合抗生物質製剤で、薬価は1gあたり10.5円と比較的低コストです。 つまりコストを理由に使い渋る薬ではありません。
関連)https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00011777
成分の役割を分けて考えると、オキシテトラサイクリンはグラム陽性菌・陰性菌の広い範囲の蛋白合成を阻害し、ポリミキシンBは緑膿菌を含むグラム陰性桿菌に強い膜障害作用を示します。 2成分の配合により、蜂窩織炎手前のびらん面や慢性膿皮症のような、菌種が読みづらい局面でも、局所レベルではかなり広い抗菌スペクトルが期待できます。 広めのカバーということですね。
関連)https://www.e-welcia.com/product/92245
実際の効能・効果として、表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、慢性膿皮症、皮膚潰瘍に伴う感染、熱傷・術後創部の二次感染などが列挙されており、びらん面や潰瘍辺縁に塗布する場面が多くなります。 例えば「10cm×10cm=はがき2枚分」程度の熱傷びらんに1日2回塗布すると、1週間でざっくり14g前後の使用量となり、薬剤費は150円台と試算できます。 外来皮膚科の年間症例数が100件だとすると、年間薬剤費は1.5万円程度にすぎず、他の注射用抗菌薬と比べると極めて小さい負担です。 金銭面ではメリットが大きい薬ということですね。
関連)https://www.yoshindo.jp/db/search/detail/?prod_id=297
このように、ポリミキシンb硫酸塩 軟膏は「緑膿菌も意識しつつ、広く塗れる外用抗菌薬」として位置づけられますが、同時にテトラサイクリン系由来の光線過敏や歯牙着色など、全身使用で知られる副作用リスクも背景知識として押さえておきたいところです(外用では通常問題になりにくいとはいえ、目や粘膜への誤用があると話は変わります)。 こうした特性を理解しておくと、患者にメリットとデメリットをバランスよく説明しやすくなります。
関連)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00011777.pdf
「テラマイシン軟膏(ポリミキシンB含有)」の添付文書全文には、成分量・効能効果・薬理作用が網羅されています。
関連)https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00011777
テラマイシン軟膏(ポリミキシンB含有)添付文書PDF(成分・効能・薬理の詳細)
添付文書上の用法・用量は「通常、1日1~数回、直接患部に塗布または塗擦するか、無菌ガーゼ等にのばして貼付」とシンプルですが、「疾病の治療上必要な最小限の期間にとどめること」という一文が重要なポイントです。 外来では「とりあえず1週間分」などと処方しがちですが、実際には2~3日で臨床症状が大きく改善しているケースも多く、漫然とした連用が耐性菌誘導の温床になります。 これが基本です。
例えば、とびひ様病変や小規模な術後創部感染に対し、5cm四方(名刺2枚分程度)の病変に1日2回塗布する場合、通常は3~5日程度で痂皮形成や浸出液の減少が得られることが多いです。 にもかかわらず、2週間以上同じ外用を続けると、オキシテトラサイクリン・ポリミキシンBいずれにも感受性のない菌の台頭、いわゆる菌交代症が問題になりやすくなります。 結論は「治癒傾向がはっきりしたら、速やかに減量・終了またはワセリンなどへの切り替え」です。
関連)https://www.data-index.co.jp/kusulist/detail.php?trk_toroku_code=2639804M1025
医療従事者が陥りやすいのは、「創部がまだ少し赤いから」「患者が不安がっているから」という理由で、感受性確認や再評価をしないまま外用抗菌薬を延長し続けるパターンです。 こうしたケースでは、結果的に耐性菌が増え、数週間後に再燃したときには入院静注抗菌薬+ドレナージが必要、という「時間も医療費も10倍以上かかる」状況を招きかねません。 つまり短期集中で終わらせることが重要です。
関連)https://www.data-index.co.jp/kusulist/detail.php?trk_toroku_code=2639804M1025
リスクを減らすための具体策としては、初回処方時に「最大でも7日でいったん中止し、再診時に創部が乾いていれば保湿剤に切り替える」とカルテに書き込む、処方日数をあえて短く切る、看護師と共有して外来・病棟での塗布状況を確認する、といった運用が有効です。 これにより、不要な長期連用をシステム的に防ぎ、あなたの残業や患者の長期通院リスクを減らせます。
「テラマイシン軟膏a」の一般用添付文書も、長期連用を避けることを明示しています。
関連)https://msearch.a-tem.jp/pdf/2604024.pdf
テラマイシン軟膏a 添付文書PDF(長期連用の注意点)
ポリミキシンb硫酸塩 軟膏で見落とされがちなのが、感作や菌交代症のリスクです。 添付文書では、瘙痒、発赤、腫脹、丘疹、小水疱などが感作の兆候として明記されており、出現した場合は投与中止とされています。 つまり「少し赤くなったけど、せっかく塗っているし様子見」は危険ということですね。
関連)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00011777.pdf
全身用ポリミキシンBでは腎障害や神経障害が有名ですが、外用では全身性の副作用はまれです。 しかし、皮膚局所のかぶれや接触性皮膚炎は頻度不明ながら添付文書上も記載があり、湿疹化した創部に漫然と塗り続けると、かゆみ>感染制御となり患者満足度が大きく低下します。 痛いですね。
関連)https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00071080
また、耐性菌の発現を防ぐために「原則として感受性を確認し、必要最小限の期間の投与にとどめること」と明示されている点も、外用とはいえ軽視できません。 慢性潰瘍や褥瘡などで1か月以上同じ外用抗生物質を使用し続けると、感受性低下だけでなく、MRSAや緑膿菌など他の病原菌による二次感染により、入院期間が1~2週間延びるケースも現場では珍しくありません。 つまり「効いているから続ける」ほど、将来の治療選択肢を削ってしまう可能性があります。
関連)https://sugamo-sengoku-hifu.jp/medicines/terramycin.html
対策としては、①長期使用が見込まれる創部では、早期から細菌培養と薬剤感受性検査を併用する、②週単位で創部写真を記録し、炎症所見が残っているのか、単なる色素沈着なのかをチームで評価する、③湿潤療法材や陰圧閉鎖療法など、非抗菌薬ベースの創傷管理も選択肢として検討する、などが挙げられます。 これらを組み合わせることで、耐性菌のリスクと患者の通院コストを同時に下げることができます。
関連)https://sugamo-sengoku-hifu.jp/medicines/terramycin.html
ポリミキシンB製剤全般の禁忌・注意事項は、医療用製剤の添付文書で一覧できます。
関連)https://www.carenet.com/drugs/category/epidermides/2634712X1102
ポリミキシンB硫酸塩散「ファイザー」添付文書(禁忌・注意事項の一覧)
一般用のテラマイシン軟膏aの説明では、「目や目の周囲には使用しないこと」とはっきり記載されています。 それにもかかわらず、実臨床では「瞼縁の小さなびらんだから」「結膜には入れなければ大丈夫だろう」といった感覚で、眼周囲に外用するケースが散見されます。 つまり誤用が起こりやすい部位ということですね。
関連)https://msearch.a-tem.jp/pdf/2604024.pdf
眼科領域には、同じ「テラマイシン」という名称の眼軟膏(オキシテトラサイクリン単剤あるいは眼科用組成)が存在し、外用皮膚用のポリミキシンb硫酸塩 軟膏とは剤形・pH設計・保存剤などが異なります。 眼科用を想定した試験が行われていない外用皮膚用製剤を瞼結膜側にまで塗布すると、角膜障害や強い刺激感、視機能低下のリスクが理論上高まります。 角膜はクレームの発生源になりやすい部位です。
関連)https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00011777
さらに、在宅や施設では、家族や介護スタッフが「ドラッグストアで買ったテラマイシン軟膏a」を、医師の指示なく眼周囲や耳の中、口唇の亀裂に自己判断で塗布してしまうケースもあります。 こうした誤用が続いた結果、皮膚科受診時には接触皮膚炎+二次感染という、治療難度も診療時間も増える状態になっていることが少なくありません。 それで大丈夫でしょうか?
関連)https://www.rad-ar.or.jp/siori/search/result?n=12570
現場でできる対策としては、①処方時に「目の周り・口の中・粘膜には塗らないこと」を処方箋コメントや薬情に明記する、②特に高齢者や小児では、家族に対して「顔に塗るならこの範囲まで」と、はがきや名刺を使って実際の大きさを示しながら説明する、③眼症状が主訴の場合は、安易に皮膚用軟膏で間に合わせず、眼科紹介や眼軟膏の検討を行う、などが挙げられます。 こうしたひと手間で、薬剤性トラブルとその後の説明・謝罪にかかる精神的コストを大きく減らせます。
関連)https://sugamo-sengoku-hifu.jp/medicines/terramycin.html
テラマイシン軟膏aの一般向け解説には、目の周囲禁止や長期連用回避など、患者説明に使いやすい文言が整理されています。
関連)https://alinamin-kenko.jp/products/gairai/teramaisin.html
テラマイシン軟膏a(一般用)の特徴と注意点(患者説明用の参考)
ポリミキシンb硫酸塩 軟膏は便利な一方で、「本当にこの症例で必要か?」と迷うグレーゾーンも多い薬です。 例えば、軽度の擦過傷や虫刺され後の掻破痕に「感染予防目的」でルーチンに処方されているケースでは、実際にはワセリン+ガーゼ保護や、石鹸・シャワーによる洗浄だけで十分なことも少なくありません。 つまり「予防目的のポリミキシンb硫酸塩 軟膏」は見直し候補です。
関連)https://www.rad-ar.or.jp/siori/search/result?n=12570
判断の目安として、①びらん・潰瘍の大きさ(名刺1枚=約5cm×9cmを基準にする)、②浸出液の量(ガーゼ1枚で吸いきれるかどうか)、③全身症状(発熱・疼痛・蜂窩織炎の広がり)が揃ったときに「抗菌外用+場合によって抗菌内服・静注」を検討し、それ以外はまず非抗菌的な創傷管理で経過を見る、というシンプルなアルゴリズムが有用です。 つまり「面積と深さと全身状態」で判断するということですね。
関連)https://www.data-index.co.jp/kusulist/detail.php?trk_toroku_code=2639804M1025
また、施設や在宅で「とりあえず抗菌軟膏」が続くと、1か月単位で見るとチューブ1本(6g~10g)程度の使い切りが複数本発生します。 仮に月3本×薬価10.5円/g×10gとしても、年間約1万円強と、一見すると小さなコストですが、耐性菌誘導による入院1件(7日入院で医療費数十万円規模)と比較すると「予防的な外用抗生物質」の費用対効果は疑問が残ります。 つまり抗菌外用は「保険」ではなく「治療」に限定することが合理的です。
関連)https://www.e-welcia.com/product/92245
こうした判断軸をチームで共有するためには、院内クリニカルパスや褥瘡チームのプロトコルに、「感染のリスクが低い創部にはポリミキシンb硫酸塩 軟膏を原則使用しない」「7日を超える使用には細菌培養または専門医コンサルトを必須とする」といったルールを明文化するのが効果的です。 あなた自身も、カルテコメントや処方セットの見直しだけで、将来の耐性菌対応・クレーム対応に費やす時間を大幅に削減できるはずです。
関連)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00011777.pdf
創傷感染症に対する抗菌外用薬の位置づけや、耐性菌問題に関する背景は、くすりの適正使用協議会などの資料がわかりやすく整理しています。
関連)https://www.rad-ar.or.jp/siori/search/result?n=12570
テラマイシン軟膏(ポリミキシンB含有)解説(適正使用と注意点)
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